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米国経済の本格的な回復は新型コロナウイルスの治療薬・ワクチンの登場を待つ必要があるだろう
米国経済の本格的な回復は新型コロナウイルスの治療薬・ワクチンの登場を待つ必要があるだろう
2020/4/24
ニューヨークの新型コロナウイルスの近況
アメリカにおける新型コロナウイルスの状況を考える際、ニューヨークの動向がひとつの「指標」となっています。その理由は1. ニューヨークの感染が特に酷かったこと、2. 他州に先駆け外出禁止令を出したこと、によります。
そのニューヨークですが陽性数は下のチャートのように推移しています。
前日に比べて新しく陽性が増えた数は次のように推移しています。
それを増加率で示すと、こういうことになります。
現在の増加率は前日比+1.7%です。ロックダウンが開始された3月23日は+46.5%だったので、明らかに鈍化しています。
アンドリュー・クオモ知事は外出禁止令を解除する目安として5月15日をターゲットにしています。
一頃、医療崩壊が起きるのではないか?と懸念されたニューヨークの病院も退院者の方が増えてきて、どうやら危機的な状況は回避できそうな雲行きとなっています。
外出禁止令解除後の景気は?
そこで気になるのは外出禁止令が解除された後の景気はどうなる?ということです。
いま米企業は外出禁止令解除に向けて企業単位で新型コロナウイルスの検査を自分の社員に実施できるような体制を整え始めています。つまり「健康な人は職場に戻ってOK、だけど陽性のひと、疑わしい人は引き続き家に居て!」というわけです。
このように外出禁止令解除で最初に必要となるのは大量のテストを実施できるキャパシティということになります。テスト装置に関しては多くのメーカーの装置が乱立しています。
次に引き続き自宅待機を言い渡される人に関してなのですが、スマホの位置情報システムなどを活用することでちゃんと自宅待機が守られているかどうか監視するアプリが今大急ぎで開発されているところです。
このアプリは陽性となった人だけでなく、一般の人にも「いまあなたのそばに陽性の人が歩いています」という風に警告が出るような工夫も施されると言われています。
しかしそれらの措置を講じたところで再び伝染が加速しない保証はありません。だから市民の多くは外出禁止令解除後もコンサートなどの人の大勢集まる場所を引き続き避けることが予想されます。言い換えれば経済は本格的に立ち直ることは出来ないのです。
米国経済の本格的な立ち直りのためには治療薬・ワクチンの登場が待たれる
「景気は気から」ということがよく言われますけど、本当に経済活動が元に戻るためには市民が安心するということがどうしても必要になると思います。究極的には「良いお薬」、すなわち治療薬とかワクチンが登場しなければ安心することは出来ません。
そこで治療薬としては次のような候補が挙がっています。
薬 | 種類 | 企業名 |
---|---|---|
レムデシビル | 抗ウイルス薬 | ギリアド(GILD) |
ケブザラ | ヒト型抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体 | リジェネロン(REGN) |
トシリズマブ | ヒト型抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体 | ロッシュ(スイス) |
モノクローナル抗体 | アダプティブ(ADPT)/アムジェン(AMGN) | |
VIR-7831, VIR-7832 | モノクローナル抗体 | ヴィア(VIR)/グラクソ(GSK) |
ユルトミリス | C5インヒビター(抗補体酵素阻害剤) | アレクシオン(ALXN) |
このうちギリアドのレムデシビルに関しては既に権威ある『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』などがその有効性に関する論文を掲載しています。またシカゴ大学病院での第三相臨床試験の結果が良好であることが退院した患者などから漏れ伝えられており、投資家の期待を集めています。早ければ5月にも米国食品医薬品局(FDA)から承認される可能性があると思います。
次にワクチンに関してはモデルナ(MRNA)とイノビオ(INO)をはじめとする多くの会社が開発に着手しています。
たぶん先行しているのはモデルナで、早ければ今年の秋から医師、看護婦など医療の現場の最前線で働く人に対して処方される可能性があります。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。