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米国株式市場は先走り過ぎている? 金融相場はもう始まっている

米国株式市場は先走り過ぎている? 金融相場はもう始まっている

2020/6/9

1ナスダック総合指数が過去最高値を更新

先週、ナスダック総合指数が9,814.08で引け、過去最高値を更新しました。年初来上昇率は+9.4%でした。

このほかS&P500指数は過去最高値から−5.9%の水準まで戻してきています。年初来パフォーマンスは−1.1%です。

一番パフォーマンスが劣後しているダウ工業株価平均指数でも過去最高値から−8.3%の水準まで戻してきており、年初来パフォーマンスは−5.0%となっています。

つまり2月19日から3月23日にかけての急落のダメージは、かなり修復されたのです。

2実体経済との乖離

一方、実態経済を見ると失業率は13.3%ですし企業業績も大幅に悪化しています。下はS&P500指数の一株当たり利益(EPS)のコンセンサス予想です。

今年の予想数字(127.86)は去年に比べて−22%が予想されています。つまり株式のバリュエーションを決定する大事な要因のひとつである企業業績は悪いということです。

現在のS&P500指数は向こう12か月の予想EPSの22.1倍で取引されています。過去5年の平均は16.8倍なのでニューヨーク市場はずいぶん割高になっているのです。

ただ投資家は足下の不況はそろそろボトムに近く、将来の景気回復を一足先に織り込むトレードをしています。もっと言えば、いずれ新型コロナウイルスに対する良い治療薬やワクチンが完成するだろうということに賭けているわけです。

このように不況のどん底で株式市場が一足先に回復し始めることは、実は珍しくありません。実際、過去のリセッションでは必ず株式市場のボトムアウトは景気に先行してきました。

3金融相場はもう始まっている

株式バリュエーションを決定するもうひとつの重要な要因は金利ですが米国10年債利回りは0.82%と低い水準にあります。

もっとざっくばらんな言い方をすれば、「すでに米国株式市場は金融相場の様相を呈している」わけです。

普通、株式市場の上昇局面は@金融相場と、A業績相場に分解することが出来ます。最初に来るのが金融相場です。そして金融相場の期間は業績相場の期間より長いです。また「相場への取り組みやすさ」という点でも金融相場の方が楽に儲けられると言えるでしょう。

もちろんごく目先ではニューヨーク市場にはそろそろ過熱感が出てきていますし、今後、新型コロナウイルスの第2波が襲ってくるリスクもありますし、ワクチン開発プロジェクトが失敗に終わる懸念もあります。ですから強気になりすぎるのは良くないです。

その反面、いまマーケットで起きていることは「教科書通り」の金融相場なわけですから弱気一辺倒のスタンスは間違っているように思います。

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著者

広瀬 隆雄(ひろせたかお)

コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター

グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。

広瀬 隆雄

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