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イールドカーブ・コントロールは必要?
イールドカーブ・コントロールは
必要?
2020/6/23
連邦公開市場委員会でも話題になったイールドカーブ・コントロール
6月10日に終了した連邦公開市場委員会(FOMC)では現行の政策金利0〜0.25%が維持されました。量的緩和政策に関しても変更はありませんでした。
今回のFOMC記者会見では長期での金利政策のイメージをどう市場参加者に伝達するか? というフォーワード・ガイダンスの在り方、ひいてはイールドカーブ・コントロールに関してFOMCメンバーが協議したことが説明されました。
そこでイールドカーブ・コントロールについて今日は少し説明したいと思います。
イールドカーブとは?
イールドカーブとは利回り曲線を指し、債券の利回りを償還期限の長さに応じて、短いものから長いものへとずらりと横一線にならべ、その利回りの点を線でつなげたものです。
下は米国財務省証券(トレジャリー)の利回り曲線です。チャートの左端は3ヵ月物、つまり短期債で、そこから画面の右側へ行くほどデュレーションの長い債券を配置しています。
過去のイールドカーブをずっと並べてゆくと立体的な曲面が出来ます。それが下のグラフです。
イールドカーブ・コントロールとは?
イールドカーブ・コントロールとはこの山の高さを米国連邦準備制度理事会(FRB)が直接市場で米国債を購入することで調整しようとするオペを指します。
いま仮にFRBが「向こう2年間に渡って現行の政策金利0〜0.25%は動かしません!」と言ったケースを考えてください。その場合、もし2年債の利回りが1%だったとしたら市場参加者はFRBの言っていることをちゃんと聞いていないことを意味します。なぜなら2年後の政策金利も今と同じ0〜0.25%なのだから市場参加者が織り込んでいる利回りが1%なら、それは利回りが高すぎるからです。
この場合、FRBは言葉で市場参加者を説得しようとするのではなく、自ら市場で2年債を買いまくり、力づくに2年債の利回りを0.25%の水準まで持って行くことも出来るわけです。このような「有言実行」がイールドカーブ・コントロールなのです。
そのように聞くとイールドカーブ・コントロールは強引かつコストのかかるプログラムのように思われます。しかし実際にはイールドカーブ・コントロールは効果絶大であるばかりか、結局「安上がり」につくことが知られています。
その理由はFRBが本気で市場介入に乗り出すのであれば民間の金融機関や投資家がそれに逆らって相場を張ったところで中央銀行に勝てるわけがないので、皆、戦うまでもなくFRBにひれ伏してしまうからです。
現在のところイールドカーブ・コントロールは必要ない
さて、もう一度上の現在のイールドカーブのチャートを見て頂きたいのですが、現在、3年物の金利も0.25%以下に収まっています。
FRBが「とうぶん現行の金利を動かす考えは無い」と主張したとき、せいぜいそれは2から3年先のことを言っています。すると市場は既にFRBの意を汲んで3年先の金利も十分低くなっているわけです。
すでにFRBが演出したい金利構造が市場で実現されている以上、いまFRBが動く必要はありません。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。