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2020年第2四半期決算発表シーズンが到来
2020年第2四半期決算発表シーズンが到来
2020/7/13
2020年第2四半期決算発表シーズンが到来
7月13日(月)から2020年第2四半期決算発表シーズンが始まります。
アナリスト達の予想では第2四半期のS&P500採用企業の一株当たり利益(EPS)は近年では一番悪くなると予想されています。
※2020年2Q以降は予想値
企業収益が落ち込んだ理由は言うまでもなく新型コロナウイルスによる世界の経済活動の鈍化によります。コンセンサス予想によれば今期が四半期決算の大底であり、第3四半期以降、業績は尻上がりに改善することになっています。しかしほんの数か月前までは「業績のボトムは第1四半期だ」と考えられていたのがいつの間にか第2四半期にずれ込んでしまったわけで本当に第2四半期が大底になるかどうかは未だわからないと思います。
それを断った上で先週は初めてコンセンサス予想の下落に歯止めがかかりました。つまり下方修正はもう一通り出尽くした感があるのです。
株式市場のバリュエーション
先ほどは四半期ベースのS&P500指数採用銘柄のEPSのチャートを示したのですが、通年ベースでそれを表すと下のチャートのようになります。
※2020年以降は予想値
つまり今年は126.9、来年は163.39です。向こう12か月のEPSは145.1であり、それに基づく現在のS&P500指数の株価収益率(PER)は21.6倍です。これは過去5年の平均(16.9倍)よりかなり割高です。
ただ今は不況の真っ只中であり、過去に今のような状況になった場合、企業収益が急速に凹んだ関係で見かけ上のPERが逆に高くなってしまうということはしばしば見られました。つまりPERが高いからといって「相場は売りだ!」とは断言できないのです。
「良い決算」とは何か?
さて、いよいよ決算発表シーズンを迎えるにあたり、もう一度「良い決算」とは何か? を復習しておきたいと思います。
良い決算とは、1. EPS、2. 売上高、3. ガイダンスの全てで決算の結果が事前のコンセンサス予想を上回るような決算を指します。このうちのひとつでもコンセンサス予想を下回れば、それは「悪い決算」です。
普通、ひとつの銘柄は数十人のアナリストにフォローされています。それらのアナリストはその企業の業績を予想し、それを株式調査レポートに記載します。その予想数字はスタンダード&プアーズやトムソン・ロイターなどの情報サービス会社に送られ、集計されます。そうやって得られたアナリスト予想の平均値がコンセンサス予想なのです。
したがってコンセンサス予想は誰かが作為的に決めた数字ではなく、統計的に求められた数値なのです。アナリストが株式調査レポートを更新し、その中で新しい予想にアップデートするたびにコンセンサス予想の数字は刻々と変わってゆきます。
ガイダンス
上の説明で「ガイダンス」とは、その会社の財務部長が考える来期、さらには今年通年の売上高ならびにEPSの予想を指します。それらのガイダンスも、アナリストが出している来期、ないしは今年通年の売上高ならびにEPSのコンセンサス予想を超える必要があります。
効率的市場仮説と決算発表
さて、投資理論の世界では効率的市場仮説というものが存在します。これは「およそ我々が知りうる全ての材料やニュースは、その時々の株価にすぐ織り込まれる」とする仮説です。もしこの立場をとるなら次の決算がどうなる? ということも既に株価に織り込まれている筈です。だからコンセンサス予想にピッタリ一致する決算が発表されれば株価はまったく動かないと予想されるのです。
実際には決算の数字は「上振れ」もしくは「下振れ」することが多いです。その場合、株価は急いで「上」または「下」に訂正します。決算発表時、株価のブレが大きくなるのはそのような理由によります。
特にコンセンサス予想より決算結果が大きく食い違った場合、それは「サプライズ」と呼ばれます。予想より良かったサプライズは「ポジティブ・サプライズ」、予想より悪かったサプライズは「ネガティブ・サプライズ」です。
恥を忍んでカッコ悪いトレードをしろ!
決算発表である企業がポジティブ・サプライズを出すと株価は瞬時に急騰します。そんな風に株価が跳ねた後で、そこから買いに行くのは皆さんとても抵抗があると思います。逆にネガティブ・サプライズが出て株価が瞬時に急落した場合、株価が下がった後で、そこから持ち株を処分売りするのはカッコ悪いです。
しかし……
これは皆さんだけでなく機関投資家も全く同じ気持ちを持っていることを忘れないでください。つまり機関投資家は「ちぇっ! こんなに良い決算が出るとは予想してなかった」と悔しい思いをするわけですが、そこで直ぐに気持ちを取り直し(でも……こんなに良い決算が出たのだからここは素直になってここから買ってゆこう!)と意見変更します。
つまり機関投資家は恥を忍んでカッコ悪い買い方を敢えてやっているのです。そうでなければ決算発表後株価は急騰したりしません。
プロは気持ちの切り替えが速いです。それなら皆さんもプロに倣い、すぐに意見変更してください。
これは「悪い決算」が出たときも同じことが言えます。機関投資家は、どんなに好きな銘柄でも、悪い決算が出ればいさぎよく意見をひるがえし、サッサとダメ会社の株は処分します。その際、「株価はもう下がってしまった!」ということは関係ないのです。株価が下がって、カッコ悪いタイミングであるにもかかわらず機関投資家はそこからその株を投げます。
機関投資家がどんどん売り始めているにもかかわらずあなたが手をこまねいて(しばらく抱えていれば元に戻るだろう)とためらったら、傷口をどんどん広げます。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。