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大統領選挙は有権者投票意向調査が示唆するよりはるかに接戦になることが予想される
大統領選挙は
有権者投票意向調査が示唆するより
はるかに接戦になることが予想される
2020/10/20
大統領選挙まであとわずか
11月3日(火)の投票日まであと2週間を残すだけになりました。そこで今回はズバリどちらが勝つの? ということについて考えてみたいと思います。
有権者投票意向調査ではバイデン有利だが…
まずリアルクリアポリティクスがまとめている、いろいろな有権者投票意向調査の平均値の動向を示します。
これを見ると民主党のジョー・バイデンが共和党のドナルド・トランプに対し安定的に優位に立っていることが判ります。
投票意向調査はハズレばかり
しかし、前回、2016年の大統領選挙でもトランプは劣勢であり、それをはねのけてヒラリー・クリントンに勝ちました。だから上に見るいろいろなアンケート調査をまとめたデータは、あまり信用にならないと思います。
リアルクリアポリティクスはIBD/TIPP、エコノミスト/ユーガブ、ザヒル/ハリスX、ロイター/イプソス、NBC/ウォールストリート・ジャーナル、NPR/PBS/マリスト、ラスムーセン、JTN/RMG、USC、ABC/ワシントンポストなど沢山の調査機関が公表した数字を平均しています。しかし各調査機関のデータや調査力にはおおきなバラツキがあります。各社のサンプル数(700~5500)も十分ではない気がします。
2016年の番狂わせを正しく予言したIBD/TIPPによれば10月16日の時点でジョー・バイデンの支持率は48.7%、ドナルド・トランプの支持率は43.5%だそうです。(2名の泡沫候補が居る関係で合計が100%になりません)
バイデンの支持率は4日前にIBD/TIPPが調査した時の51.9%から3パーセンテージ・ポイント近く下落しました。つまりだんだん接戦になっているのです。
IBD/TIPP調査の細かいニュアンス
2016年にトランプに投票した有権者のうち6%が「今回はバイデンに入れる」と言っています。逆に2016年にヒラリー・クリントンに投票した有権者のうち1%のみが「今回はトランプに入れる」と言っています。
ジョー・バイデンは前回の大統領選挙で実際には投票所に赴かなかった有権者とか政党に所属していない有権者からは支持されているのですがコアなサポーターからの支持はそれほど強くないとIBDは指摘しています。
都会の有権者は12パーセンテージ・ポイントのリードでバイデンを支持しています。都会の有権者はあまり投票所に赴きません。
過疎地の有権者は21パーセンテージ・ポイントのリードでトランプを支持しています。ただし2016年の投票の際は過疎地の有権者は28パーセンテージ・ポイントのリードを保っていたことを考えると過疎地におけるトランプの優位は、やや低下したとも言えます。
郊外ではバイデンへの支持が54%、トランプへの支持が38%となっています。2016年の選挙ではトランプが50%の支持を獲得、クリントンの45%に競り勝ったことを思い出せばトランプは郊外での支持をテコ入れする必要があるように思います。
有権者の年齢で言えば高齢者はバイデンを支持し、中年はトランプを支持する傾向があります。
今回、新型コロナで高齢者ほどリスクに晒されており、高齢者は投票所に赴くことを避ける可能性があります。
そこで郵便投票が重要になります。郵便投票は事前にその意思を登録しなければいけない関係で、普段から選挙に関心の高い賢い有権者ほど郵便投票へ向かうと言われています。政党で言えば民主党支持者のほうが郵便投票を好む傾向があります。
結果がいつまでも判明しないシナリオこそがサイアク
2000年の選挙ではフロリダ州の結果を巡り論争になり、株式市場は不透明感を嫌気して下落しました。
今回の大統領選挙が接戦なのであれば、2000年に起きたようなことが再び起こるリスクもあります。幸い、郵便投票を大々的に行っているフロリダ州では投票日を待たず開票作業を開始し、投票日の夜までに結果をまとめ、公表する予定です。
バイデンの公約
ジョー・バイデンは年収百万ドル以上の裕福層の長期キャピタルゲイン税率を現行の23.8%から39.6%へ引き上げることを提案しています。1987年と2012年に同様のキャピタルゲイン増税があったとき、株式市場が売られる場面がありました。
ジョー・バイデンの課税プランはタックス・ポリシー・センターの試算で、4年間で4兆ドルの増税になると言われています。それは法人税を現在の21%から28%へ増税することを含んでいます。また海外子会社の税率を現行の2倍の21%にすることを提案しています。これらは株式にとってはマイナスです。
バイデンが大統領になるとACAの補助金が拡大される可能性があり、これは病院や医療保険会社株にとってプラスです。
バイデンはクリーン・エネルギーやインフラストラクチャ投資にも積極的だと言われています。
その反面、シェール産業、銀行業は規制強化を懸念する声があります。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。