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「金余り」を前提とした投資戦略はオワコン

「金余り」を前提とした投資戦略は
オワコン

2021/2/26

1金融相場の起源

去年3月に新型コロナの蔓延で世界経済がパタッと止まってしまった時、連邦準備制度理事会(FRB)は急いで米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レートを0~0.25%まで引き下げるとともに債券買い入れプログラムを強化しました。これが今回の金融相場が生まれた瞬間だと言えると思います。

■経済は急速に復活している
米国の失業率は一時14.8%に迫ったのですが、いまは急低下し、6.3%まで改善してきています。

いま各製薬会社の開発した新型コロナ・ワクチンが続々と米国食品医薬品局(FDA)から承認され、多くの人に行き渡りはじめています。

これまでに世界の2.13億人、米国の6500万人が新型コロナ・ワクチンの1回目の注射を終えています。ワクチン製造が上手く行っているので、3月以降、ワクチンの注射のペースは加速すると思われます。

これらのことは今回の大不況がごく短期で終了する可能性が高いことを示唆していると思います。

1FRBの軌道修正は避けられない

FRBは「とうぶん現在の緩和的なスタンスを変更しない」と明言しています。しかし債券市場の参加者はそのメッセージを額面通り受け止めていません。

下は米国10年債利回りのチャートですが、最近、どんどん上昇しています。

つまり市場はFRBに対して「長期に渡って緩和政策を維持する」というメッセージを修正することを突き付けているのです。

FRBはつい半年前に金利政策決定枠組みを見直し、インフレが2%に近づいた場合でも、そのターゲットは「ゆるーく」考え、慌てて利上げせず、じっくり様子を見るという新方針を打ち出したばかりです。したがって今それを引込めると朝令暮改だという批判を浴びるでしょう。

しかしFRBの「次の一手」を我々が想定する場合、それは「更なる緩和」ではなく、現在の緩い金利政策の「出口政策の模索」だと考えるのが自然です。

3テーパー・タントラムの教訓

いままで株式市場の投資家は(どうせFRBはとうぶんの間、利上げはできないはず)という前提で、よりリスキー、より泡沫的な投資対象を次々に手掛けてきました。ある意味で「横着な投資態度」が身についてしまったとすら言えます。

しかし現在のような金融相場から次の業績相場へと移行する過渡期は、相場的には難しい局面であることが知られています。その一例が2013年のテーパー・タントラムです。あの時はリーマンショック後の緩和的な政策を、ときのベン・バーナンキ議長が修正しようとして、すこしそれをほのめかしただけで市場関係者が大慌てしたのです。

向こう3ヵ月から半年くらいの相場を展望する場合、テーパー・タントラムの時と同じようなかじ取りの難しい局面に我々は遭遇するリスクがあると言えます。

別の言い方をすれば、いままでのような「金余り」を大前提とした投資戦略はオワコンだということです。具体的にはハイパー・グロース株、SPAC(特別買収目的会社)、掲示板から次の投資アイデアを拾ってくるようなやり方などは、今後通用しなくなる恐れがあるのです。

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著者

広瀬 隆雄(ひろせたかお)

コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター

グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。

広瀬 隆雄

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