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ナスダックの過熱感が払拭された いまこそこれまで買いたくても買わせてくれなかった優良銘柄を仕込む好機!?
ナスダックの過熱感が払拭されたいまこそ
これまで買いたくても買わせてくれなかった
優良銘柄を仕込む好機!?
2021/3/12
ナスダックだけが酷い売られ方をしている
前回(2月26日)のレポートで新型コロナ・ワクチンの接種が捗りはじめた事、それに伴い米国の経済再開への期待が高まっている事、その結果として長期金利が上昇し始めている事を説明しました。
米国10年債利回りは一時1.60%に達し、急ピッチな長期金利の上昇を嫌気する格好でナスダック総合指数が大きく崩れました。
その一方でダウ工業株価平均指数は過去最高値圏にあります。このようにナスダックがダウ30に比べて極端にアンダー・パフォームしたのは1993年以来だそうです。
■1993年はハイテクの買い場だった
そこで1993年当時、何が起こったかを詳しく振り返ってみたいと思います。
まず1990年夏にイラクのサダム・フセインが突然クウェートに侵攻、占領しました。ちょうどその頃米国ではジャンクボンド・ブームで企業のバランスシートは劣化していましたし、家計部門もヤッピーと呼ばれる若いプロフェッショナル世代の派手なライフスタイルの流行で負債が大きくなっていました。
したがって景気が暗転するとクレジットカードの焦付きが急増し、銀行の経営はあっと言う間に悪化しました。こうしてアメリカ経済は不況になって行ったのです。
その後、アメリカは湾岸戦争でイラクをクウェートから駆逐し、戦争はあっと言う間に集結しました。株式市場も鋭角的に戻しました。
1993年のナスダックがダウ工業株価平均指数に対して大きくアンダー・パフォームした理由はそういう戦勝の強気相場が一巡した後、連邦準備制度理事会(FRB)がいよいよ利上げに踏み切るのではないか? という観測が流れたためです。
その頃のハイテク業界は「ウインテル時代」と言われていました。つまりマイクロソフトの「ウインドウズ」とインテルの「X86」プロセッサがパソコンの世界で圧倒的に強かったのです。
1993年の春、インテルは「ペンティウム」を新発売しました。これは大ヒットし、この年のインテルの売上高は前年同期比+50%で伸びました。
つまりナスダック総合指数がダウ工業株価平均指数より大きく劣後した理由は決してイノベーションが不足していたとかハイテク業界がスランプに陥っていたからではなく、市場参加者が利上げの可能性に慄いていたからなのです。
これは現在の状況に酷似しています。
1993年の場合、ナスダックのスランプはほんの束の間のことで急速にダウ工業株価平均指数のパフォーマンスに追いついたばかりでなく、そこから2000年まで長期に渡る大相場が演じられました。
従って今回も2月末から3月前半の相場を見て「ナスダックはもう二度と復活できない」と決め付けることはできないと思います。
景気に強気な材料は今がピーク
今週に入って米議会は1.9兆ドルの追加景気支援策を可決しました。あとはバイデン大統領の署名を待つだけとなっています。法案が成立すれば米国民の大部分に一人当たり1400ドルの見舞金が配られます。さらに毎週300ドルの失業保険上乗せ金も配られます。それらにより急場をしのぐことが出来る国民も多いと思います。
またお金に困っていない国民はこの臨時収入を株式投資に回す可能性もあります。事実、前回600ドルの見舞金が配られたとき、その少なからぬ部分は株式市場に向かいました。
折から新型コロナ・ワクチンの供給は3月に入ってぐんぐん増えています。これは製薬各社の増産体制がいよいよ整ってきたことによります。
それらの要因が相まって、いまは景気に楽観的な材料が目白押しです。債券が売られ、長期金利が上昇するのも無理はないわけです。
長期金利はいずれ安定する
しかしこれらの景気に対する強気材料が一通り実現してしまえば、ふたたびぐずぐずした景況感に戻るリスクも大きいと思います。
去年、リモートワークが一般化した際、アメリカの企業はSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)やZOOMなどの便利な生産性向上ツールの存在に気付きました。
それらの便利なツールが存在する以上、昔通りの仕事の進め方に完全に逆戻りする必要はありません。企業は、より少ない人員で昔と同じ量、もしくはそれ以上の仕事を効率的にこなすことが可能です。しかもオフィス・スペースなどの固定費に関しても昔通りの規模を維持する必要性は無くなっています。
このことは雇用、賃金、オフィス賃料に対し経済再開後も大きなデフレ圧力が働くことを意味します。もっといえばホワイトカラーの職がAIなどに取って代わられるということです。その場合、インフレが1970年代のように高進するシナリオは描きにくいです。
■投資戦略
するとこの際、そのデフレ圧力を逆手に取って投資に生かすのであれば、そういう飛躍的な生産性の向上を実現している張本人の会社たちを買えば良いのではないか? ということになります。
具体的にはズームビデオ(ティッカーシンボル:ZM)、オクタ(ティッカーシンボル:OKTA)、クラウドストライク(ティッカーシンボル:CRWD)、モンゴDB(ティッカーシンボル:MDB)、ヴィーヴァ・システムズ(ティッカーシンボル:VEEV)などになります。
これらの企業はサブスクリプション(定期購読)モデルを採用しているので将来の業績がたいへん読みやすいです。このため株式市場では常に割高に取引されており、なかなか安いところでは買わせてくれませんでした。
いま、それらの銘柄は稀に見る買い場を提供していると思います。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。