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雇用統計が弱かったのは株式にプラス 腰を据えて夏相場に取り組むことができる
雇用統計が弱かったのは株式にプラス 腰を据えて夏相場に取り組むことができる
2021/5/11
雇用統計は弱かった
4月の非農業部門雇用者数は予想97.8万人に対し26.6万人にとどまりました。
失業率も予想5.8%より悪い6.1%でした。
■長期金利
これを受けて米国10年債利回りは1.58%で取引されています。
上のチャートからも明らかなように去年の8月を境とした長期金利の上昇は、ここへきて明らかに頭打ち感が出ているのです。
雇用統計は時として先週の金曜日のようなサプライズがあるので、今回の悪い数字はダマシかも知れません。その意味では性急に意見変更する必要は無いと思います。
それを断った上で新型コロナワクチン接種の進捗による経済再開は一直線に実現するのではなく、今回のような紆余曲折を経ながらゆっくり達成されるというシナリオにもある程度注意を払う必要が痛感されました。
それを考えた時、一部の市場参加者が予想していたような「8月のジャクソンホール・シンポジウムでテーパーリングを含む金利政策方針変更が打ち出される」という考えはかなり無理のあるシナリオだと言えます。
連邦準備制度理事会(FRB)はマイノリティーの雇用の拡大に大きな注意を払っており、直近の雇用統計ではマイノリティーや低学歴者の失業率は逆に増加していました。言い換えれば未だやり残した仕事は沢山あるわけで、この夏からテーパーリングが始まるというのはジェローム・パウエル議長やラエル・ブレイナード理事などのFRBの有力メンバーの考え方と真っ向から対立します。
FRBはとうぶんの間、頑として現在の緩和的なスタンスを貫くと思います。
企業業績
一方、企業業績の方は好調です。
これまでにS&P500採用銘柄の88%が第1四半期決算を発表し終わったのですがそのうち86%の企業が一株当たり利益(EPS)でポジティブ・サプライズを出しました。今期は前年同期比+44%のEPS成長率ということになります。
まとめ
長期金利の騰勢が弱まる一方で企業業績はすこぶる好調ということは株式バリュエーションを決定付ける金利と業績という二大要因がいずれも良い方向を向いていることを意味します。
このところハイグロース株を中心に投機熱が冷めたこともあり、株式はまた地に足の着いた正攻法のやり方で買って行ける環境が整ったと言えると思います。
腰を据えて夏相場に取り組んでゆきたいと思います。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。