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第2四半期決算発表シーズンが佳境を迎えている ここまでの結果の振り返り
第2四半期決算発表シーズンが佳境を迎えている ここまでの結果の振り返り
2021/7/27
決算はおおむね良好
第2四半期決算発表シーズンが佳境を迎えています。これまでにS&P500採用銘柄の24%が決算発表を終え、一株当たり利益(EPS)では88%の企業が、売上高では86%の企業がコンセンサス予想を上回る決算を出しました。
■S&P500の株価収益率
好調な決算を受けて今年、来年のS&P500コンセンサス予想もじりじり上昇しています。2021年のS&P500 EPSは194.52が、2022年は214.38が予想されています。
いまは上半期の決算発表が行われている最中なので決算的には1年の折り返し地点にさしかかっているわけですが、向こう12ヵ月のおおまかなコンセンサスEPSを求めるには(194.52+214.38)÷2を計算してやれば良いと思います。それは204.45になります。
7月23日(金)のS&P500指数の引値が4411.79なので株価収益率(PER)は4411.79÷204.45=21.6倍ということになります。
過去10年間のS&P500の平均PERは16.2倍なので現在の21.6倍というのは割高な水準です。でも米国10年債利回りが1.28%と低い水準にあること、今期は前年同期比+70%前後の四半期EPS成長率が出ていることなどを考え合わせると割高なバリュエーションも鼻をつまんでなんとか堪えることができる水準であると言えるでしょう。
特筆すべき決算
今期の決算は右を見ても左を見ても良い決算が目白押しだったのですが、強いて指摘するならば台湾セミコンダクター(ティッカーシンボル:TSM)がEPSでも売上高でもコンセンサス予想を下回り、がっかりさせる決算を出しました。これは同社の足下の業績が暗転しているというより、アナリストの事前予想が会社側ガイダンスを大きく逸脱し、バラ色のシナリオを織り込んでいたことが原因のように思います。
同じく半導体のセクターでテキサス・インスツルメンツ(ティッカーシンボル:TXN)の決算も来期のガイダンスが冴えなかったことで嫌気されました。
半導体不足が言われて久しいですが、これらの企業の決算を見る限り、それほどまでに需給がひっ迫しているとは思えません。話半分に聞いておく必要があるように思います。
航空会社は低評価すぎ
一方、コンセンサス予想より結果が大きく上回ったけれど、株価にそれが余り反映されてないセクターとして航空会社のセクターを挙げることができると思います。6月に予約システムが人的ミスで一時混乱したサウスウエスト・エアライン(ティッカーシンボル:LUV)を除くすべての主要エアラインが第2四半期決算で予想を上回りました。
特に心強いと感じたのはビジネス・クラスの需要が戻って来つつあると各社経営陣が口々にコメントした点です。ズームビデオ(ティッカーシンボル:ZM)などの便利なビデオ会議ソフトウェアの普及で「出張はオワコン」という見方をする投資家も多いのですが、航空各社の予約状況を見ると、どっこいビジネス・クラスは善戦しているのだそうです。これは嬉しい誤算です。とりわけ次の第3四半期は過去の経験則に従えば季節的にレジャー客が減り、ビジネス客へと需要の中心がバトンタッチする時期なので、そのタイミングに合わせてビジネス・トリップが復活できれば関係者は大いに胸を撫で下ろすことが出来ます。
なおこれまでの回復は主に米国内に限られており、大西洋路線、太平洋路線は大幅に出遅れています。デルタ・エアラインズ(ティッカーシンボル:DAL)は大西洋路線に強くユナイテッド・エアラインズ(ティッカーシンボル:UAL)は太平洋路線に強いです。順番からいえば欧州各国のほうが一足先に海外からの観光客への門戸開放に動いている関係で大西洋路線の回復が先で太平洋路線は後になると予想されます。
航空会社株はデルタ種が猛威をふるっている関係で投資家から敬遠されていますが、そもそも旅行に行くことを考えている消費者は積極的に新型コロナワクチンの接種を受けているので実際の需要面での影響は限定的です。むしろ各国が海外からの観光客を受け入れるにあたってどのようなスピードで規制を緩和してゆくか? が鍵を握っています。
■ネット企業も好調
次にネット企業に目を転じるとスナップ(ティッカーシンボル:SNAP)、ツイッター(ティッカーシンボル:TWTR)という早いタイミングで決算発表を行った両社が仲良く良い決算を発表しました。新型コロナがぶり返すことでオフィスへの従業員の復帰が遅れるケースでも、これらのネット企業の業績には悪影響は限定的との考えから、これらの広告モデルを採用しているネット企業の株がいまとりわけ投資家から注目されています。
■まとめ
第2四半期決算発表シーズンが佳境を迎えています。全体的にここまでの決算発表は予想を上回る上々の出来だと言えます。S&P500のPERは21.6倍とかなり高くなってしまっているのですが、市中金利が安い事、企業業績の伸びが著しい事などから考えて、高いバリュエーションは我慢できるように思います。半導体企業では決算を取りこぼす企業が散見されました。デルタ種の伝染が懸念されている航空各社の決算は意外なほど良かったです。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。