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IPO銘柄の選別のしかた ローマは一日にして成らず
IPO銘柄の選別のしかた ローマは一日にして成らず
2021/8/16
良いIPOは、まわってこない!
冒頭から夢を砕くような事を言って恐縮ですが、米国株式の場合、皆さんがIPO(新規株式上場)に申し込みして、株がまわってきたなら、そのIPOは不人気だったと思ってほぼ間違いありません。なぜなら人気のディールは機関投資家がペロリとたいらげてしまうからです。
皆さんが追いかけ回すべき株とは人気沸騰して自分のところにはぜんぜん来ないようなIPOでなくてはいけません。
そういうわけで、私はIPOをディールで買うことは一切しません。時間の無駄ですから。
IPOは新規上場後、場で拾うようにしています。
(※SBI証券では外国株式のIPO銘柄は新規上場日以降お取引が可能となります(当社取扱銘柄に限る)。外国株式の新規募集又は売出しの取扱いは原則ございません。)
IPO後、いつ出動する?
私がよく受ける質問に「IPO後、どのタイミングで買えばいいのですか?」という質問があります。
上場初日は株価の動きが荒っぽくなりやすいので神経の図太い投資家でなければリスクを負えないはずです。その意味で大半の投資家にとって上場初日はトレードには向きません!
それを断った上で上場初日は相場が荒れるので値幅取りしやすいと感じるトレーダーも居ます。
そういう人は見込み違いだとわかると負けていても直ぐポジションを手仕舞うことのできる、クールな判断力を持っているものです。もしあなたが未練がましい投資家ならIPO初日のトレードなど試みない方が良いです。
普通、IPO直後は市場に流通している浮動株が少ない関係で、下がる時も上る時も値動きが極端になりがちです。この特徴を忘れないで下さい。
■保守的な機関投資家はIPO後初の決算発表を無事通過するまで待つ
ここで重要なことは保守的な機関投資家はIPO後初の決算発表をその会社が済ませ、ちゃんとした決算が出せることを確かめた上で初めて重い腰を上げて投資を開始するという事です。
なぜIPO後初の決算発表が重要か? と言えば、驚くほど多くの若い上場企業が、投資家の期待にそう決算を出すという当たり前のことが出来ないからです。
引受け証券会社はIPO企業がのっけからズッコケないように「IPOで投資家と対話する際は、なるべく業績予想は控え目な数字を約束してください」と経営者に釘を刺します。そのような忠告にもかかわらず、ついつい背伸びした約束をしてしまう未熟な経営者が後を絶ちません。
IPO後最初の決算をしくじると「あの会社は駄目だ!」という烙印を押されるので株価が出直るまで時間がかかるケースも多いです。
良い決算とはビート・アンド・レイズ(Beat and raise)、すなわち一株当たり利益(EPS)や売上高の数字が事前予想を上回る(=ビート)ことに加えて来期や今年通年のガイダンス(=会社側予想)も上方修正(=レイズ)するような決算を指します。
良い決算の積み重ねこそが重要
1回ビート・アンド・レイズの決算を出せたとしても、それは当たり前です。なぜなら八百長野球のようにわざとうんと控え目な数字を約束すればアナリスト予想を難なく超えることが出来るからです。
しかしガイダンスを引き上げることは会社が自分に課すハードルを引き上げることに他ならないわけですから次の決算は前回の決算よりは達成がほんの少し難しくなります。
良い会社とはこのビート・アンド・レイズを何度も繰り返し、無理ゲーと思われるような高い目標も危なげなくクリアする会社です。つまり毎回パーフェクトな決算を出すことが要求されるわけです。
口ではどんなことでも経営者は約束できます。でも有言実行でそれをキッチリ達成できる企業はほんの一握りです。
テンバガーになるような株は、決算発表の度にパーフェクトな決算を出し、投資家の期待に応えるものです。
すると大化け株を探し当てようとすると「この会社の過去の決算の実績は、どうだった?」ということがわかってなければトラックレコードを参照できないのです。
自分が注目している会社の過去の決算が「良い決算」だったかどうかを大学ノートなどにしるし、いつでも見返せるような習慣をつけてください。
これを励行しないとあなたはいつまでたっても「気分で相場を張っている投資家」を抜け出せないと思います。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。