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インフレで株式市場はどうなる?
インフレで株式市場はどうなる?
2021/11/15
消費者物価指数はまずい方向へ
先週発表された10月の消費者物価指数は前年同期比+6.2%とインフレの加速を示唆する数字でした。
米国の賃金も上昇しており、これは労働者にとって朗報には違いないのですが、賃金は消費者物価指数の上昇についてゆけておらず、実質賃金、すなわち賃金上昇率−消費者物価指数でみると10月は−0.5%でした。これは庶民の暮らしが苦しくなっていることを示唆しています。
連邦準備制度理事会はインフレの抑え込みに舵を切った
これを受けて米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は今月から債券買入れプログラムのサイズを段階的に縮小し、2022年の半ばまでに債券買入れを止めることを発表しています。
FRBは賃金が上昇しはじめると、急にそわそわします。
これはどうしてかというと賃金上昇はしつこく、くせになりやすいからです。いま生産性の向上を伴わない賃金上昇が起きれば、それはいわゆる賃金・物価スパイラルという現象を引き起こします。つまり賃上げで労働者が消費に回せるお金が増えたので余計にお金を払う……それが物価の上昇を招き、結果として折角お給料が増えても生活が楽にならないという悪循環です。
そこでこのところの労働生産性の推移を見てみると下のチャートのようになります。
あいにく労働生産性は急落しています。これはFRBが今後上手く立ち回らないといけないことを意味します。
転職市場も格差の時代
経済再開で雇用主は忙しくなっており、新規採用を増やそうとしています。
ところが良い人材がなかなか来てくれないので、新規採用者ほど賃金を弾むということを雇用主は始めています。この関係で会社にとどまっている人の賃金上昇率は+3.5%、よりお給料の良い会社に転職した人は賃金が+5.5%アップするという、人材の売り手市場が出現しています。
労働者はみずから会社を辞め、よりよい働き口へと転職しています。
つまり今企業が求めているようなスキルを持ちあわせた人は、どんどん転職することで年収UPを実現できているのです。
その一方で市場価値の無いワーカーは同じ職にしがみついているという構図が見えてきます。
GDPのリバウンドにすべてがかかっている
このような経済が上手く回るためには需要が強く、消費も好調で、企業が儲かるという好循環が維持されることが必要です。
その点、第3四半期のGDPは減速しており、やや不安にさせます。
ただこれは新型コロナのデルタ変異株でサービス・セクターが減速したことやサプライチェーンの乱れなどが影響しているため、第4四半期は力強くリバウンドすると考えるエコノミストが多いです。
もしこのシナリオが現実になるのなら(=そして私の現在のメインシナリオもこれです)株式市場は安泰だと思います。
しかし経済に陰りが見え始めたら株式市場には黄信号が灯るでしょう。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。