マーケット > レポート > 広瀬の外国株式・海外ETFデビュー講座 > パウエル議長タカ派発言を受け市場は前倒しで相次ぎ0.50%の利上げが実施されるシナリオを織り込んだ
パウエル議長タカ派発言を受け市場は前倒しで相次ぎ0.50%の利上げが実施されるシナリオを織り込んだ
パウエル議長タカ派発言を受け市場は
前倒しで相次ぎ0.50%の利上げが実施されるシナリオを織り込んだ
2022/3/29
パウエル議長がタカ派発言
先週ジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は「0.50%の引き上げもありうる」という意味の発言をしました。このところ株式市場が堅調なので(少々タカ派な発言をしても大丈夫だろう)という心が働いたのだと思います。
利上げのシナリオ
米国の政策金利はフェデラルファンズ・レート(略してFFレート)で、デリバティブ取引所、CMEにその先物が上場されています。
先物の取引実勢価格から市場関係者が将来の連邦公開市場委員会(FOMC)でどのくらいの確率で利上げが行われると織り込んでいるかを逆算することが出来ます。
その計算結果は「CME FedWatch」というサイトに公開されています。
それによれば次回、すなわち5月4日のFOMCではFFレートが0.75〜1.00%になるという確率が68.3%(グレー)となっています。現行のFFレートは0.25〜0.50%なので、それは0.50%での利上げがあることを織り込んでいる事に他なりません。
さらにその次のFOMCは6月15日なのですが、FFレートで1.25〜1.50%という確率が66.2%もあり、ここでも0.50%刻みでの利上げが織り込まれています。
つまりFRBは2回連続で0.50%の利上げをするというシナリオが濃厚なのです。
私は1988年にアメリカに来たのですが、FRBが2回連続で0.50%の利上げをしたことは一回も経験がありません。そのくらい珍しいシナリオをフェドファンズ先物は織り込んでいるわけです。
株式市場が実際の利上げにどう反応するかは未知数
なおフェドファンズ先物の市場参加者がそういうシナリオを織り込んだから株式の市場関係者もそれを当然のこととして受け容れるか? と言えば、それは必ずしもそうとは限らない気がします。
およそ株式の投資家が一番嫌がるのは中央銀行のせかせかした挙動です。
中央銀行はポーカーフェースで泰然とした態度を見せ、常に市場参加者を大船に乗った気にさせる必要があります。アタフタしたオーラが出てしまうと投資家はパニックします。
実体経済には変調の兆し
30年固定住宅ローン金利は下のチャートのように最近上昇しています。
これを受けて新規ローンの組成は減速が伝えられています。
次にミシガン大学消費者信頼感指数も暗転しています。
これらのことは「足下の米国景気は大丈夫!」という考え方に疑問を投げかけるデータポイントと言えるでしょう。
FRBの矢継ぎ早の利上げが、実体経済をきりきり舞いさせないか、慎重に見極める必要があると思います。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。