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ウクライナでの戦争が欧州経済に与えた影響について

ウクライナでの戦争が
欧州経済に与えた影響について

2022/4/26

2月24日にロシアがウクライナに攻め込み、コモディティ価格が急騰するとともに500万人の難民がウクライナ周辺国へなだれ込みました。

今日はこの戦争が欧州経済に与える影響について考えてみたいと思います。

国際通貨基金(IMF)は「世界経済見通し(WEO)」と呼ばれるレポートを出しているのですがその予想データは1年に4回アップデートされます。直近では2022年4月、つまり開戦後の予想が先週発表されました。そのひとつ前の予想数字は2022年1月、つまり開戦前の予想です。

それによるとユーロ圏先進国のGDP予想は下のチャートのようになっています。

なお「ユーロ圏先進国」とはオーストリア、ベルギー、キプロス、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、スペインを指します。北欧諸国はここでは含まれていません。

次に欧州新興国のGDP予想は下のようになっています。

欧州新興国とはハンガリー、ポーランド、ベラルーシ、モルドバ、ロシア、ウクライナ、ブルガリア、クロアチア、ルーマニア、アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、コソボ、モンテネグロ、北マケドニア、セルビア、トルコを指します。

こちらの方が落ち込みが激しいです。

その理由は、まずウクライナ(戦争前の予想2022年+3.5%は開戦後−35%に)、ロシア(戦争前の予想2022年+2.8%は開戦後−8.5%に)という戦争当事国が含まれているからです。

加えてポーランド(戦争前の予想2022年+4.6%は開戦後+3.7%に)、ルーマニア(戦争前の予想2022年+4.8%は開戦後+2.2%に)など難民が沢山流入している国々はその負担にあえいでいるからです。

もうひとつの理由は戦争が物価の上昇に一層拍車をかけていることによります。

ユーロ圏先進国のインフレ予想のチャートは下の通りです。

インフレは市民生活を圧迫し食品やエネルギーなど生活に必要な項目への支出増がぜいたく品や娯楽支出などその他の消費を圧迫することが予想されます。

欧州新興国のインフレ予想チャートは下の通りです。

欧州新興国のインフレは戦争でとても酷くなると予想されていることがわかります。中でもトルコは戦争前の2022年予想+27.5%が開戦後は+60.5%のハイパー・インフレとなる見込みです。これはウクライナの小麦が戦争で出荷できなくなり、もっぱら小麦の輸入をウクライナに頼っているトルコが大打撃を受けたことが関係しています。

以上をまとめるとウクライナでの戦争で欧州の経済の見通しは暗転し、インフレは悪化することが予想されています。とりわけ欧州新興国は戦争の影響を大きく受けました。

ユーロはドルに対し弱含んでいます。

最後にこのような状況が米国株投資に与える影響ですが、目先は上に示したように欧州はネガティブな影響を受けているので消去法で米国へと投資資金が向かいやすい状況だと言えます。

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著者

広瀬 隆雄(ひろせたかお)

コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター

グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。

広瀬 隆雄

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