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連邦準備制度理事会はインフレ退治に躍起
連邦準備制度理事会はインフレ退治に躍起
2022/5/16
消費者物価指数
5月11日に発表された米国の4月の消費者物価指数(前月比)は予想+0.2%に対し+0.3%、前年同月比では予想+8.1%に対し+8.3%でした。一方、コア指数(前月比)は予想+0.4%に対し+0.6%、前年同月比では予想+6.0%に対し+6.2%でした。
今回の伸び率は2021年8月以来の低い伸びでした。ひさしぶりにインフレの勢いの鈍化を感じさせるレポートでした。
主な品目別のインフレ率は下のチャートのように推移してきました。
このチャートからガソリンの値段の下落が今回のCPIの数字の改善の主因であったことが読み取れます。それに加えて去年以来高騰が続いてきた中古車価格もここへきてハッキリと下落基調に入っていることがわかります。
このようにインフレとひとことで言ってもそれを押し上げている主要因はころころ入れ替わっています。だから「サプライチェーンの問題さえ解決すれば沈静化する」とか「戦争さえ終われば下落する」というような単純な問題ではないのです。
消連邦準備制度理事会のやっていること
米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)はインフレを退治するため3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%、5月のFOMCで0.50%の利上げを相次いで行い、政策金利を0.75%〜1.00%に持ってきました。
さらに6月と7月のFOMCでもそれぞれ0.50%の利上げを行う意図があることを既に表明しています。
普通、利上げは0.25%刻みであり、その意味で上に書いたように3回連続で0.50%の利上げをするというのは極めて異例です。インフレ退治に躍起になっているという風にも言えるでしょう。それは市場に対して、やや慌てている印象を与えてしまっていると指摘されても仕方無いと思います。
なおFRBの金利政策はじわじわと累積的に効いているものであり、1回や2回の利上げでインフレを完全に抑え込めるという風には考えない方がいいです。
金利政策が実体経済に与える影響
利上げは債券市場がそれを織り込むのと、実際にそれが実行に移された時、実体経済がどう反応するかは大違いです。予期せぬ副作用が経済を混乱させることもあるのはリーマンショックのエピソードを思い出せば十分理解できると思います。
そんなわけで今は(いつ不意のニュースで虚を突かれるか?)びくびくしながら徐行運転せざるを得ない局面です。
こういう場面では株式もぐずぐずした展開にならざるを得ません。しかし株価が下がると消費者は意気消沈し、急に貧乏になった気がするので、消費も減退します。それはインフレ抑制という観点からは歓迎すべきことなのです。
たんなる株安を通り越して景気が後退しはじめたら……そのときはもうFRBは金融を引き締める必要は無く、むしろ緩和に転じるでしょう。
もちろんそれはずっと先の話であり、いまからそれを見越して出動するというのはちょっと気が早いです。
しかし株安という事自体に景気の過熱を冷やし、究極的には物価も押し下げるというポジティブな側面が内包されていることを我々は忘れるべきではないのです。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。