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FRBのインフレ退治は長い戦いになりそうな雰囲気
FRBのインフレ退治は長い戦いになりそうな雰囲気
2022/6/14
消費者物価指数
6月10日(金)に発表された米国の5月の消費者物価指数は前年同月比+8.6%と過去40年で最悪の物価上昇となりました。
これを受けて6月14・15日の二日間に渡って開催される連邦公開市場委員会(FOMC)では断固としてインフレと戦ってゆく姿勢が明快に示されると思われます。
具体的には5月の0.50%の利上げに続いて6月、7月、9月のFOMCでもそれぞれ0.50%の利上げが行われる可能性が高いです。これは過去にない急ピッチな利上げです。
連邦準備制度理事会(FRB)がずっと金融引締めのスタンスを堅持するということになると、それは株式市場や実体経済にボディーブローのようにじわじわ効いてくると予想されます。言い換えれば、長い、しんどい相場が続くと考えるのが自然なのです。
■賃金は物価上昇に追い付いていない
全米平均レギュラーガソリン価格がついに5ドルの大台に乗せたことに象徴されるように足元の物価上昇の急激さに比べると賃金の上昇は立ち遅れています。その結果、消費者はだんだん苦しいやりくりを余儀なくされています。
低所得者ほどクレジットカードのリボ債務を増やすことで帳尻を合わせるということがここ数ヶ月続いています。
新型コロナの際、米国民は自宅待機を余儀なくされ、その時、消費が落ち込んだ関係で、貯蓄率は一時上昇しました。
いまでもその時の貯金は少し残っています。その関係で消費者の懐はそれほど不健全ではありません。
しかし今後はクレカ債務の支払延滞が増えてもおかしくありません。
いつ景気後退が襲う? ということを考えるとき、このへんの消費者周りの動向がカギを握っているように思います。
雇用市場は堅調
次に雇用市場に目を転ずるとこちらの方は未だ至って堅調です。失業率は3.6%と低水準ですし求人数も多いため労働者は積極的に転職することで少しでも有利な条件にありつこうとしています。
いまのところ雇用市場が暗転する兆しは見えません。
唯一、シリコンバレーやウォール街など給与水準の高い業種ではこのところの株安で資金調達がやりにくくなっており、人員計画や設備投資を見直す企業が続出しています。言い換えればかつてブームの中心となっていた高付加価値産業ほど今は躓いているのです。
バリュー株優勢は続く
今年に入ってエネルギーを中心とするバリュー株がグロース株よりアウトパフォームするという現象が起きています。
その第一番目の理由は一般に低PER(株価収益率)株ほど金利上昇の局面で下げが小さい傾向があることによります。今後も金利はずんずん上昇するわけですから高バリュエーションの株は避けるべきです。
第二番目の理由はエネルギー株の利益成長率がIT株のそれを大幅に上回っている事にあります。実際、IT株の利益成長は市場平均とほぼ変わらない程度で、お世辞にも「高成長」とは言えません。一方、エネルギー株は前年比較が容易なことも手伝って目覚ましい成長をしています。
■まとめ
FRBは断固としてインフレと戦ってゆくため当分の間利上げを繰り返すと予想されます。それは株式や実体経済にじわじわ効いてくるため、投資家は苦しい戦いを余儀なくされます。消費者はクレカのリボ債務を増やすなどの方法でやりくりしています。これはいつまでも続けられることではないので、どこかで消費が減退するかもしれません。雇用市場は健全ですがハイテクや金融などの高賃金の業種ではすでに不況の色が濃いです。金利上昇に弱いハイテク株を避け、バリュー株を中心に攻めるのがいいでしょう。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。