マーケット > レポート > 広瀬の外国株式・海外ETFデビュー講座 > 決算発表シーズンが佳境を迎える
決算発表シーズンが佳境を迎える
決算発表シーズンが佳境を迎える
2022/7/26
今週は第2四半期決算発表で最も重要な週
7月25日の週は2022年第2四半期決算発表シーズンで最も重要な週です。主な企業のコンセンサスEPS、売上高予想は下のようになっています:
日付 | 時間 | 銘柄 | コード | EPS | 売上高 |
---|---|---|---|---|---|
7月26日(火) | 寄付き前 | ゼネラルエレクトリック | GE | 42¢ | 179億ドル |
7月26日(火) | 引け後 | アルファベット | GOOG | $26.76 | 708.1 億ドル |
7月26日(火) | 引け後 | マイクロソフト | MSFT | $2.29 | 523.8億ドル |
7月26日(火) | 引け後 | テキサスインスツルメンツ | TXN | $2.15 | 46.5億ドル |
7月27日(水) | 寄付き前 | ボーイング | BA | −11¢ | 175.2億ドル |
7月27日(水) | 引け後 | メタプラットフォームズ | META | $2.57 | 289.8億ドル |
7月28日(木) | 引け後 | アマゾン | AMZN | 14¢ | 1192億ドル |
7月28日(木) | 引け後 | アップル | AAPL | $1.15 | 828.9億ドル |
7月29日(金) | 寄付き前 | シェブロン | CVX | $5.04 | 576.9億ドル |
7月29日(金) | 寄付き前 | エクソンモービル | XOM | $3.89 | 1116.7億ドル |
(出典:S&Pグローバルインテリジェンス、7月22日現在)
7月22日金曜日までにS&P500採用銘柄のうち21%が決算発表を終えておりEPSでは68%の企業が、売上高では65%の企業が事前のコンセンサス予想を上回りました。これはいずれも過去5年の平均値を下回っています。その意味で今回の決算発表シーズンは低調なスタートを切っていると言えます。
加えて来期以降のガイダンスに関しても上方修正する企業対下方修正する企業は1:10の比率であり、圧倒的に下方修正が勝っています。
このようなことを総合すると今週の決算発表は相場の地合いが暗転しないかピリピリしながら見守る必要があると思います。
個々の決算の見どころ
ゼネラルエレクトリック(GE)はここ数年株価が低迷しています。その発端になったのは主力の火力タービンの売れ行きが芳しくなかったことによります。GEは将来の電力需要の増加を見越し、顧客である電力各社は効率の良い、より大型なタービンを買い求めるだろうと判断し、大きな製品を開発しました。ところが電力会社はより小回りの利くタービンを好み、莫大な開発費をかけた高価な新製品が空振りに終わりました。これがケチの付け始めでその後、いろいろな経営上の問題が噴出し今は昔の栄光は見る影もないです。しかし同社は医療機器部門、風力発電ならびにタービン部門をスピンオフし、ジェットエンジンのビジネスだけに特化する三分社化を発表しています。これにより同社の含み価値が顕在化することが予想されます。またジェットエンジンのビジネスならびに発電タービンのビジネスはこれから需要サイクルに入ってくると予想されます。同社の業績は引き続きプレッシャーを受け続けると思いますがゆっくりと回復に向かうでしょう。
アルファベット(GOOG)はグーグルやYouTubeを傘下に持ち広告モデルで稼いでいます。世界の企業の広告予算に占めるデジタル広告の比率は63%に高まってきておりそろそろ広告予算のパイそのものの制約がデジタル広告の売上成長の抑制要因になりはじめています。そうした環境の中でスナップ(SNAP)やツイッター(TWTR)などの競争力の劣る企業は相次いで利益警告しています。デジタル広告は景気が暗転すると真っ先に予算を削減しやすい項目であり、その影響が既に出始めているわけです。そのような中にあってアルファベットは一番強い企業であり、同社が市場の変化の感じるのはライバル企業のずっと後だと思います。
マイクロソフト(MSFT)は新型コロナの在宅勤務で好影響を受けた企業のひとつです。いま在宅勤務にまつわる一時的な需要の増加が衰えた場面なので足元の業績は苦しいと思います。同社は既に6月2日に利益警告を出しています。それによれば第4四半期(6月期)のEPSは$2.24〜2.32、売上高は519.4〜527.4億ドルが見込まれています。
テキサスインスツルメンツ(TXN)は車載半導体などの半導体を作っています。車載半導体は新型コロナの経済再開後品不足が続いてきましたが現在ではかなり解消してきています。それに伴い業績予想の下方修正が入るリスクがあると思います。
ボーイング(BA)は737 Maxの墜落事故以降、いいとこなしの状態が続いています。その後に新型コロナが襲い航空各社の業績が悪化したため需要は長期に渡って低迷してきました。いまようやく航空各社の業績は上向き始めておりそれらが回復するにつれてボーイングの受注も回復することが期待されます。
メタプラットフォームズ(META)は利益警告したスナップ(SNAP)と似たサービス(=インスタグラム)を展開している関係で今回の決算発表では見通しの暗転が表明されやすい状況にあります。
アマゾン(AMNZ)は主力のネット通販のビジネスが減速しておりAWSの成長に依存する体質になっています。そのAWSはライバルのマイクロソフトのアジュールなどと比べると成長の鈍化が著しいです。
アップル(AAPL)は最新鋭のM2チップを搭載したMacBook Airが好評です。サブスクリプション売上高も順調に伸びています。強いて言えば中国における新型コロナのロックダウンの影響が懸念されます。
シェブロン(CVX)、エクソンモービル(XOM)の両社は金曜日に決算発表が予定されていますが原油価格の上昇で業績の急改善が見込まれています。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。