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自分が知らないことを学び続ける向学心が投資には必要
自分が知らないことを学び続ける向学心が投資には必要
2022/8/26
投資には自分が知らないことを学び続ける向学心が必要です。
なぜなら投資テーマは投資家の想像をかきたてる、目新しい事象を巡って開花するケースが多いからです。
一例としてEV(電気自動車)がテーマとして浮上したとき、大半の投資家は未だ自分ではEVを所有していませんでした。
機械学習、メタバース、自動運転車、燃料電池、宇宙開発、グリーン・テクノロジー、クアンタム・コンピューティングなどのワクワクするストーリーは夢の実現へ向けた投資であるからこそ高いバリュエーションが付与されるのです。
投資テーマは2003年から始まったBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)ブームに代表されるように目新しい国を巡って醸成されるケースもあります。それがブームになる前はインドやロシアなどの国に投資していた人は極めて少なかったです。
このように投資テーマとは未知の技術や未知の国を対象としている場合が多く、「不案内である」ということが人気化するうえで欠かせない魅力の源泉なのです。言い換えれば皆が良く知っている日常は「夢」には成り得ないということです。
そのような夢を買う相場では投資家がどういう文脈で投資ストーリーを構築しているかをよく踏まえる必要があります。
そしてその夢の実現に向けて必要な技術の進歩の状況などを逐一調べ上げることで他の投資家を出し抜く知見を得ることができます。
言い直せば投資テーマへの投資は知識の空白を自分の勉強で埋めてゆく作業に他ならないのです。そしてその投資対象に関して詳しくなり、もう新しく学ぶべきことが無くなった頃、つまり知識の完成こそが「売り」材料となります。
なぜなら「相場は知ったら、しまい」だからです。
これらの夢を買う相場の張り方は常に一定の投資成果をもたらすとは限りません。低金利のときほど成功しやすく、高金利のときほど損しやすいです。
その理由は夢を買う相場では莫大な先行投資、さらにとうぶん赤字経営を経た後で、何年、何十年も後でようやくその技術や市場が大きく開花し夢が現実となるという性格上、long duration、すなわち長い助走期間を必要とするからです。
新技術や新市場が離陸できないでいる期間、その投資対象はずっと滑走路を助走しているわけで、その間事業利益は得られません。そのとき市中金利が高ければ、銀行にお金を預けておくだけで利子収入が入るわけで、比較すると不利な印象をぬぐえないわけです。
高金利が夢を買う相場にとって大敵なのは、このような理由によります。
いま米国経済は好景気ですしインフレは8.5%と荒れ狂っています。米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利であるフェデラルファンズ・レートを今年の年末までに3.4%くらいに持ってゆきたいとシグナルしています。
それは投資家目線で考えれば無リスクで3.4%のインカムゲインを得られることを意味し、その分わざわざ利益や配当の無いテーマ株に投資するインセンティブは殺がれてしまうのです。
別の説明の仕方をすれば今のように市中金利が高い場面では投資家は眼前にある利子収入機会に目を奪われ投資テーマは忘れがちだということです。
今後1〜2年経てば米国の経済は不景気になっているかもしれません。そのときは運用難から投資家はいままでとはぜんぜん違う目新しいストーリーを探し始めるわけです。
次に投資テーマが囃されるのは、そのような不景気、低金利の局面のはずです。
年季を積んだ投資家は今のように投資テーマが流行らない時期を敢えて選んで(次にくる投資テーマはなにか?)を自問し、準備を始めます。皆さんも次の投資テーマが何になるかに思いを馳せてください。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。