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欧州の景気後退リスクに注意を払うべき
欧州の景気後退リスクに注意を払うべき
2022/9/13
投資家は欧州の景気後退リスクに注意を払うべきだと思います。 欧州連合(EU)の統合消費者物価指数のうち電気代、ガス代、固形燃料、暖房用のエネルギー代を抽出し前年同月比でチャートを作成すると下のようになります。
欧州でエネルギー代のインフレが激しい理由は欧州の多くの国々がロシアから天然ガスや石油を購入していたからです。欧州で消費されている天然ガスの4割はロシアから輸入されていました。
しかしロシアがウクライナに攻め込んだことで欧州はロシアからのエネルギーの購入を控えています。ロシア産の石油はボイコットされていますし、ロシアからドイツに天然ガスを送るパイプラインはメンテナンスで圧力を大幅に低下させた後、現在も復旧していません。
このため一部の市場参加者はこの冬の欧州の家計の電灯光熱費がひと月当り7万円にもなると予想しています。これでは市民の生活は成り立ちません。
欧州連合は大急ぎで公共料金の上限を設けることで消費者を保護すると同時にそのツケをエネルギー企業などに持ってゆく法案を策定しています。政府の負担は莫大なものになると予想されます。
さらに欧州は節電のための様々なルールを打ち出しています。それは景気の足を引っ張ると予想されています。
アルミニュームのような電気をたくさん消費する素材の生産は既にストップしています。
エネルギー価格の高騰が引き起こすインフレに備えるため欧州中央銀行(ECB)は先週0.75%の利上げを行いました。このような大きな引き上げ幅は異例です。過去にECBがこれだけ大きな利上げをしたのは共通通貨ユーロを導入するにあたっての技術的な理由からの利上げのケース1回きりです。
このような突飛な利上げが欧州経済を一気に景気後退に陥れるという懸念があります。
別の言い方をすれば景気後退の到来は何も米国発とは限らないということです。
いま世界を見渡すと上で説明したような経済に対するストレスが溜まっている国は多く、いつどこでそれが爆発しても不思議ではありません。世界的に経済が不安定な局面を迎えているということです。
こういう時は株式投資も徐行運転に越したことはありません。ポートフォリオのキャッシュポジションを普段よりも高めにしてください。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。