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相場の一階部分から乗り込むチャンス 少々のタイミングのズレは問題ではない
相場の一階部分から乗り込むチャンス
少々のタイミングのズレは問題ではない
2022/10/13
不景気が来れば最大の売り材料は消える
年初からずっと軟調な地合いが続いた関係で投資家のセンチメントはとても悲観的になっています。
相場が悪い最大の理由は米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が相次いで大幅な利上げを繰り返していることによります。
一般に株式バリュエーションと市中金利はシーソーの関係にあり、一方が上がると他方は下がります。いまは金利が上昇しているので株式バリュエーションが剥落しているのです。
相次ぐ利上げは住宅ローン金利や自動車ローン金利の上昇を招いておりそれはローンが組みにくくなることを招いています。既に住宅市場は暗転しており価格はリーマンショック以来のペースで下落しはじめています。
今年に入ってからの債券市場や株式市場の下落で、世界で30兆ドルもの時価価値が失われました。含み損を抱えた投資家は消費に対して消極的になりはじめています。
小売業者は高水準の在庫を抱えてクリスマス商戦期間に向けて対応に苦慮しています。
輸出企業は折からのドル高で業績の悪化が懸念されます。
このようにどちらを向いても悪いニュースばかりが目立つようになっており、米国が景気後退へ突入するのは時間の問題と思われます。
しかしひとたび景気後退が来れば需要が減退するのでインフレ圧力は弱まります。
いまの株式市場を蝕んでいる最大の売り材料がインフレなわけですから不景気の到来はようやくこの悪材料が消えることを意味します。
のイメージに翻訳するならば、千鳥足で一進一退を繰り返しながら方向性としては年末にかけて年初来±0%の水準までゆっくり戻してゆくような相場と言えるかもしれません。
順序としてまず株安、その次に景気後退が来る
普通、米国の株安は景気後退の後で襲うのではなく景気後退の前にやってきます。つまり年初来の株安こそがこれから到来する景気後退の前兆に他ならないのです。
米国で景気後退入りを判定するのは全米経済研究所(NBER)です。ノーベル賞受賞者を含む沢山のエコノミストの合議によって景気後退局面入りの判定が下されるのです。その関係でリセッション入りはリアルタイムで宣言されるのではなく、ずっと後になって皆が忘れた頃に判明します。
言い直せばNBERのリセッション入り宣言を待っていたのでは相場に乗り遅れるということです。
NBERは不況入りだけでなく不況から脱却した月が何時だったか? に関しても宣言します。再び景気が拡大し始めたタイミングを起点として、その次のリセッション入りまでの期間の株式のパフォーマンスをチャートにすると下のようになります。
これは言ってみれば「相場の一階部分から乗ったとして、どれだけ儲かったか?」を表しています。
ただし相場に飛び乗るタイミングが早すぎると未だ残っている売り圧力に押されるリスクもあります。下はNBERがリセッション入りを宣言したタイミング(=リセッション離脱ではない点に注意)で買った場合、どうなったか? を示しています。
これを見ると早目に出動しても儲かっている場合もありますが、2007年〜2009年にかけてのケースのように大きく負けている場合もあることがわかります。
結局投資家本人の「決め打ち」にならざるを得ない
難しい点として1)景気後退期間開始、2)景気拡大開始、のどちらも実際にはそれが起こったずっと後で事後的に発表される関係で、これらの転換点は投資家本人が「決め打ち」で判断せざるを得ないという点です。
しかし上の二つのチャートを見比べれば、その後の上昇幅に比べれば早目に出動し過ぎてしまうことにより被るヤラレは小さいことがわかります。
結論的には相場の一階部分から皆さんが投資したいのであれば、今は少々のタイミングのズレには目をつぶり、長期で株式を保有するつもりで買い出動したほうが良い局面だということです。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。