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フロンティア・マーケットに注目

フロンティア・マーケットに注目

2022/11/14

1新しいブルマーケットがはじまる

今年は年初から一本調子で米国株がダラダラ安を続けてきました。その理由はインフレ退治のために連邦準備制度理事会(FRB)が相次いで利上げを繰り返してきたからです。しかし11月10日(木)に発表された10月の消費者物価指数は前年同月比+7.7%と本当に久しぶりに大きく事前予想(+8.0%)を下回る、良い数字でした。これでFRBはガムシャラに利上げする必要が無くなり、これまで株式市場に吹いていた逆風は収まることが予想されます。

政策金利のベクトルは、これまでの「上向き」から今後だんだん「横這い」へと移ってゆきます。そのことは新しいブルマーケット(強気相場)が始まろうとしていることを示唆しています。

普通、このように相場がリセットされると上昇相場をけん引するリーダーも変わります。

前回の上昇相場ではGAFAM(アルファベット、アマゾン、メタ・プラットフォームズ、アップル、マイクロソフト)が相場のけん引役でした。しかしこれらの企業はいずれも成長の鈍化に悩まされています。成長率が大幅に鈍化した以上、昔と同じ評価を投資家がこれらの企業に与えるという風には考えにくいです。

手垢がついてないストーリーということになれば過去10年近く先進国株式市場に対してアンダーパフォームしてきた新興国株式が面白いと思います。普通、米国が利上げ局面にありドルが強い時(=最近、ずっとドル高でした)新興国株式は見向きもされません。しかし米国経済が不景気になり成長している投資対象を探すのが難しくなると投資家は米国外の投資機会に目を向け始めます。

さて、新興国というと中国、インド、台湾、韓国が先ず頭に浮かびます。実際、この四か国でMSCI新興国インデックスの69.4%を占めています。

しかし皆さんもご存じのように中国はいま異変が起きています。政府が株式市場や起業家に対してフレンドリーではない政策を取り始めた点が先ず指摘できます。加えて不動産市況が悪化し、ちょうど1990年頃の日本のように「失われた10年」のような長期低迷局面に入ってゆこうとしています。このため中国は買いにくいです。

次にインドは株価収益率が24倍を超えており、お世辞にも割安とは言えません。インド経済はこれから新興国の中心的存在として注目されることは間違いないのですが、株式市場的には食指が動きません。

台湾は半導体ファンドリー、韓国はメモリーチップで有名であり、どちらの国も新興国としての性格よりテクノロジーの投資対象と見るべきです。テクノロジーは上に述べたようにひと相場あった後なので新鮮味がありません。

そう考えてくると新興国の70%近くは実は買いにくいということがわかってきます。

1フロンティア・マーケットとは?

そこで注目されるのがフロンティア・マーケットです。フロンティア・マーケットとは新興国(エマージング・マーケット)より更に小さい市場を指し、具体的にはベトナム、ナイジェリア、バーレーン、バングラデシュ、ペルー、ルーマニア、カザフスタン、エジプト、モロッコ、フィリピン、コロンビア、ケニア、パキスタン、ヨルダンなどがこれに相当します。

新興国が株価収益率(PER)11倍で取引されているのに対し、フロンティア・マーケットは8倍で取引されています。つまりフロンティア・マーケットは全然投資コミュニティから顧みられていないわけです。

普通、新興国を専門としている機関投資家は同じ資金プールの中でポートフォリオの微調整を行います。MSCI新興国インデックスに占める中国の割合は28.8%とダントツに大きく、いまその市場がフィデューシャリー・デューティー(最終受益者のお金を適切な投資対象に投資する義務)の観点から「?」マークが点灯し始めているので中国を減らし、他のマーケットへ持ってゆく必要性が高まっています。

その移動先のかなりの部分はインドになると思いますがフロンティア・マーケットにも一部の資金が回ってくると考えるのが自然です。

フロンティア・マーケットには数は少ないですが何本かETF(上場投資信託)が出ています。

3まとめ

10月の消費者物価指数の数字が予想より低かったことでFRBは利上げの手を緩める公算が大です。これは株式にとって良いニュースで、新しいブルマーケットが始まる可能性があります。普通、新しい相場が始まるときは前回のブルマーケットのリーダーが再び活躍するのではなく、全く新しいセクターが旗手になります。新興国は過去10年アンダーパフォームしたので休養十分です。ドルが安くなる局面では米国の機関投資家は米国外への投資に積極的になります。新興国というと普通中国が真っ先に想起されますが、いま中国の成長ストーリーはおかしなことになっており新しい投資先が模索されています。そこで新興国のサブカテゴリーであるフロンティア・マーケットに注目が集まる可能性があります。

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著者

広瀬 隆雄(ひろせたかお)

コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター

グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。

広瀬 隆雄

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