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米国株はスピード調整局面に
米国株はスピード調整局面に
2023/2/14
調整局面の米国株
年初来堅調に推移してきた米国株は、ここへきてスピード調整局面に入っています。
その理由として2022年第4四半期決算発表シーズンが冴えないことが指摘できます。
■決算は冴えない
これまでにS&P500採用銘柄の69%が決算発表を終えています。EPSで事前のコンセンサス予想を上回った企業は69%にとどまり過去10年の平均73%を下回りました。
アップサイド幅は1.1%で過去10年の平均6.4%を大幅に下回っています。
次に売上高を見ると事前のコンセンサス予想を上回った企業は63%で、これは過去10年の平均と一致しています。
売上高のアップサイド幅は1.4%です。これは過去10年の平均1.3%を上回っています。ただし上回った理由はインフレによるところが大きいです。
■長期金利もやや上昇
金利に目を転じると10年債利回りは2月10日の時点で3.738%と上昇中です。最近の高値は去年10月24日の4.248%です。
12月28日の高値3.884%を超えてくるとチャート的にはダブルボトムになります。その場合、金利上昇が鮮明になり、株式にとって苦しい展開と言えます。
業績と金利は株式バリュエーションを左右する二大要因であり、その両方とも精彩に欠けるので株式は足踏みせざるを得ないのです。
■バリュエーション
そこで米国株のバリュエーションですが、現在の向こう12か月のEPS予想に基づくPERは18倍で過去10年の平均17.2倍より割高となっています。
株式の投資家が割高なバリュエーションを我慢している理由は、インフレが鎮静化すればいずれ金利が下がり、それが高い株式バリュエーションを正当化すると当て込んでいるからです。
実際にそのようなシナリオが起こる可能性も十分にあると思います。
経済の再加速
その反面、先に発表された1月の非農業部門雇用者数は51.7万人と強い数字でした。
レストランなどのサービス業の雇用が好調だったことがアップサイドの原因です。このため米国経済は再加速していると感じ始めている市場参加者も多いです。
賃金インフレは連邦準備制度理事会(FRB)が最も警戒する項目であり、いますぐに引締めの手を緩めることは期待薄です。
最終的には去年の12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で示されたFRBメンバーによる2023年末の米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レートで5.1%という水準まで利上げが続くという線が濃厚になってきました。
これまでFRBは市場参加者より後手に回っている印象がありました。しかし今回に限っては金融引締めの手を緩める事に対して慎重な態度を堅持してきたFRBの方が正しかったという印象を与えます。
まとめ
早期の利上げ打ち止め、そして今年のある段階でFRBが利下げに転じるという投資家の期待は、どうやらそうならない可能性が高まっています。
このところの株式市場のスピード調整は、そのような小さな修正がもたらしたもので、今年一年という展望に立てば未だ株式に対して強気のスタンスを崩すべきではないと思います。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。