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米地銀三行が相次いで破綻 利上げ打ち止めが近い
米地銀三行が相次いで破綻 利上げ打ち止めが近い
2023/3/16
米地銀三行が相次いで破綻
先週米地銀三行が相次いで破綻しました。いずれも小さい規模の銀行です。これらの銀行は暗号通貨に手を出す、シリコンバレーのスタートアップ企業に無謀な融資を行うなど、日頃から派手な立ち回りが目立っていました。経営危機が伝えられると杜撰な経営内容を知っている得意先企業ほど我先に預金を引き出し、それが引き金となって破綻したのです。
米国の地銀がどこも同じように経営されているわけではありません。従って取り付け騒ぎがどんどん広がる危険は無いと思います。
世界は変わった
それを断った上で先週と今週では世界はガラッと変わったと言って良いと思います。なぜなら一週間に地銀が三行も逝ったわけですから米国連邦準備制度理事会(FRB)は何もなかったというような素振りは見せられないからです。
庶民は(必要ならば生活防衛のために預金をすぐ降ろさねば)とソワソワしています。こういう風に預金がぐらつきはじめると銀行は安心して融資や投資業務が出来なくなります。リスクに備えて今後の融資を抑制するなどの動きも出てくるはずです。それは貸し渋りに他ならずFRBが普段から気にしている金融コンディションはタイト化すると思われます。言い換えれば金詰り感が出るということです。
FRBはこれまでインフレを退治するために利上げを繰り返してきましたが、銀行破綻で金融コンディションが自然にタイト化してしまえば、もうFRBが先陣を切って引締めをする理由はなくなります。
むしろ過去の経験則では今回のような事件はFRBが引締めの手を休めるキッカケとなる場合が多かったです。次に我々が予期すべきニュースは「利上げ完了!」ということでしょう。
既に去年1年相場は調整してきた
いよいよリセッション(景気後退)突入が濃厚になっているわけですが相場は先見性があり将来のニュースをどんどん先取りして織り込む習性があります。だからリセッションの可能性に関しても既に去年から何度も投資家の間で話題に上り株価に織り込まれています。
一例としてリセッションをいちはやく予見する指標として知られる10年債利回り−2年債利回りは去年の7月6日にマイナス圏に下がりました。
つまり8ヶ月が経過しているのです。
その前に長短金利差がゼロになったのは2019年8月下旬であり2020年2月にリセッションが到来しました。「長短金利差ゼロ→リセッション到来」の法則は、このときにもちゃんと当てはまったということです。
リセッションが来た時には、すでに株価はそれを織り込んでいるのでマーケットは逆にほどなく底入れします。実際2020年のケースでも3月を大底にそこから力強い強気相場が始まりました。
つまり我々は「不況到来!」の声に萎縮するのではなく「相場は知ったら、しまい」という悪材料出尽くしのシナリオにも気を付ける必要があるということです。
いまはFRBから聞こえてくるメッセージに良く耳を傾け、利上げ打ち止めがいつ宣言されるかに注目してください。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。