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5月の利上げは? 行き過ぎた景気悲観論に注意
5月の利上げは? 行き過ぎた景気悲観論に注意
2023/3/28
政策金利の見通し
3月22日の連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25%の利上げが発表され米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レートは4.75〜5.00%になりました。
連邦準備制度理事会(FRB)は5月3日のFOMCでも0.25%の利上げを行うことをシグナルしています。
■市場参加者はFRBに賛同していない
しかし先物価格から逆算される利上げ確率を見ると市場参加者は88%の確率で現行の4.75〜5.00%が維持されると予想しています。つまりFRBの考えに市場は従っていないのです。
市場参加者がFRBとは異なる意見な理由は、最近の銀行セクターの動揺が景気後退を引き起こすと予想しているからです。
最近の急激な短期金利の低下やドル安は、いずれもこの景気後退観測の台頭が原因です。
高所得者層だけが打撃を受けている
私は今回の銀行不安が幅広い景気後退を誘発するとは考えていません。今回の不況は局地的だと思います。
なぜならこれまでに破綻した銀行はいずれも仮想通貨やベンチャーに極端に肩入れしていて、それらの銀行から資産家が慌てて預金を引き出したのが危機の原因だからです。
いまアメリカで起こっているのは所得水準の高いプロフェッショナル、具体的にはソフトウェアエンジニア、戦略コンサルタント、投資銀行におけるリストラであり、影響を受けるひとたちはほんの一握りです。
大部分の一般のアメリカ人にとってそれは無縁な世界です。
投資戦略
もし銀行の不安が他へも飛び火しないのであればこのところの銀行株の下落は行き過ぎということになります。とりわけ「大きくて潰せない」メガバンクはどこも今回の騒ぎで預金が逆に増えました。それはどうしてかというと小さい銀行から引き出された預金はメガバンクに預け直されたからです。
折からFRBはフェデラルファンズ・レートを引き下げる気は無いと言っているわけですから極めて低い預金金利と短期金利の間の金利差はしばらく開いたままになることが予想されます。それはメガバンクの決算は引き続き好調になる可能性が高いことを示唆しています。
市場が景気後退を急速に織り込んだ関係で、エネルギー、景気敏感、消費循環などのセクターは値を消しています。しかし景気が底堅いということになるともう一度それらが見直し買いされるでしょう。
反面、テクノロジーはいち早く金利低下を見越し買われました。ここから余り金利が下がらないのであれば利食われるリスクがあります。
そもそも今回の銀行不安の原因となったのはデジタル広告がゼロ成長になった、ネット通販が振るわない、スマホが売れてない……というようなテクノロジーの不振が根底にあります。このセクターの業績は悪いわけですから強気に転換するのは早すぎます。
ドルも景気暗転を織り込むカタチで売られ過ぎており、目先は自然反発が入るでしょう。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。