マーケット > レポート > 広瀬の外国株式・海外ETFデビュー講座 > 第1四半期決算発表シーズンの総括
第1四半期決算発表シーズンの総括
第1四半期決算発表シーズンの総括
2023/5/9
総じて決算はOK
いま2023年第1四半期決算発表シーズンが進行中です。これまでにS&P500指数採用企業の8割が決算発表を終え79%がEPSで、75%が売上高で市場予想を上回りました。ほぼ1年ぶりに四半期決算が過去10年の平均より明らかに良い内容だったということです。決算が予想より良かった一因はハイテクを中心に業績の低迷が長く続いたことを受け、事前のアナリスト予想が十分に下がったという点が指摘できますし、為替も前年比較が容易だったことが挙げられます。印象に残った個別企業の決算を下に解説します。
マイクロソフト
マイクロソフト(ティッカーシンボル:MSFT)は全ての部門がそれなりに良い業績を発表し、安定感のある決算でした。EPSは予想$2.23に対し$2.45でした。売上高は予想510.1億ドルに対し528.6億ドルでした。売上高成長率は前年同期比+7.1%でした。
プロダクティビティ&ビジネス・プロセス部門売上高は前年同期比+11%の175億ドル、12月期の+7%より加速しました。
インテリジェント・クラウド部門売上高は前年同期比+16%の221億ドルでした。アジュールは前年同期比+27%でした。為替要因を除くと+31%でした。12月期は+31%でした。
モア・パーソナル・コンピューティング部門売上高は前年同期比−9%の133億ドルでした。
アップル
アップル(ティッカーシンボル:AAPL)の第2四半期(3月期)決算はiPhoneが予想以上に良かったことで助けられました。EPSは予想$1.43に対し$1.52でした。売上高は予想928.4億ドルに対し948.4億ドルでした。売上高成長率は前年同期比−2.5%でした。
iPhone売上高は予想492億ドルに対し513.3億ドルでした。前年同期は505.7億ドルでした。Mac売上高は予想77億ドルに対し71.7億ドルでした。前年同期は104.4億ドルでした。iPad売上高は予想68億ドルに対し66.7億ドルでした。前年同期は76.5億ドルでした。ウェアラブルズ売上高は予想86億ドルに対し87.6億ドルでした。前年同期は88億ドルでした。サービス売上高は予想211億ドルに対し209.1億ドルでした。前年同期は198.2億ドルでした。
新型コロナ後の経済再開で消費者がIT製品などモノの消費から旅行など体験型消費へシフトする中、アップルもハードウェアの売上の不振にあえいでいます。今年は通年ベースでも去年に比べて売上高がダウンになるリスクがあります。同社はサービスへのシフトを進めていますがそのサービス売上高は今期落胆させられる数字でした。
マリオット
大手ホテルチェーン、マリオット(ティッカーシンボル:MAR)の第1四半期決算はEPSが予想$1.84に対し$2.09、売上高が予想54.4億ドルに対し56.2億ドルでした。売上高成長率は前年同期比+33.7%でした。
RevPAR(客室単価)は前年同期比+34.3%でした。うち米国カナダは前年同期比+25.6%、海外は+63.1%でした。
現在第2四半期の1/3が終わったところですがグローバルな予約トレンドは強いです。ただし世界経済が今後どうなるかわからないので見通しはやや不透明になっています。
第2四半期のEPSは予想$2.02に対し新ガイダンス$2.09〜2.15が提示されました。RevPAR成長は+10〜12%を見込んでいます。
2023年のEPSは予想$7.72に対し新ガイダンス$7.97〜8.42が提示されました。RevPAR成長は+10〜13%を見込んでいます。
デルタエアラインズ
時価総額で全米最大の航空会社であるデルタエアラインズ(ティッカーシンボル:DAL)の第1四半期決算はEPSが予想30¢に対し25¢、売上高が予想122.5億ドルに対し127.6億ドル、売上高成長率は前年同期比+36.5%でした。
国内線売上高は75.9億ドル、前年同期比+37%でした。大西洋路線売上高は12.44億ドル、前年同期比+131%でした。南米路線売上高は11.32億ドル、前年同期比+66%でした。太平洋路線売上高は4.41億ドル、前年同期比+253%でした。カーゴ売上高は2.09億ドル、前年同期比−28%でした。
コーチ・クラス売上高は52.23億ドル、前年同期比+51.0%でした。プレミアム・クラス売上高は40.16億ドル、前年同期比+58%でした。
第2四半期のEPSは予想$1.64に対し新ガイダンス$2.00〜2.25、売上高予想143億ドルに対し新ガイダンス159〜162億ドルが提示されました。
2023年のEPSは予想$5.37に対し新ガイダンス$5.00〜6.00、売上高予想559.2億ドルに対し新ガイダンス582〜607億ドルが提示されました。
ロイヤルカリビアン
クルーズ会社で時価総額最大のロイヤルカリビアン(ティッカーシンボル:RCL)の第1四半期決算はEPSが予想−69¢に対し−23¢、売上高が予想28.2億ドルに対し28.9億ドルでした。クルーズの予約が集中する1月のウェーブ・シーズンは過去最高の予約を記録しました。また船内での消費も好調です。
第2四半期のEPSは予想91¢に対し新ガイダンス$1.50〜1.60が提示されました。
2023年のEPSは予想$3.40に対し新ガイダンス$4.40〜4.80が提示されました。旧ガイダンスは$3.00〜3.60でした。
ドラフトキングス
スポーツ・ベッティングならびにオンライン・ベッティングのドラフトキングス(ティッカーシンボル:DKNG)の第1四半期決算はEPSが予想−86¢に対し−51¢、売上高が予想6.97億ドルに対し7.7億ドルでした。売上高成長率は前年同期比+84.5%でした。
月次ユニークプレーヤー(MUP)は280万人でした。これは前年同期比+39%でした。MUP当り売上高(ARPMUP)は$92でした。前年同期比+35%でした。
2023年の売上高は予想30.1億ドルに対し新ガイダンス31.35〜32.35億ドルが提示されました。旧ガイダンスは28.5〜30.5億ドルでした。
2023年の修正EBITDAガイダンスは−3.4億ドルから−2.9億ドルを予想します。旧ガイダンスは−4.5億ドルから−3.5億ドルでした。
JPモルガン
JPモルガン(ティッカーシンボル:JPM)の第1四半期決算はEPSが予想$3.37に対し$4.10、売上高が予想357.7億ドルに対し383.5億ドル、売上高成長率は前年同期比+24.8%でした。
貸倒引当金は23億ドルでした。損金計上は11億ドル、リザーブ・ビルドは11億ドルでした。
純金利収入は前年同期比+49%の207.1億ドルでした。非金利収入は前年同期比+5%の176.4億ドルでした。
純利益は前年同期比+52%の126.2億ドルでした。純金利イールドは2.63%でした。前年同期は1.67%でした。
総融資残高は前年同期比+5%の1.13兆ドルでした。総預金残高は前年同期比−7%の2.38兆ドルでした。
消費者&コミュニティー・バンキング部門売上高は前年同期比+35%の164.5億ドルでした。利益は前年同期比+80%の52.4億ドルでした。
クレジットカード・ローン残高は前年同期比+18%の1801億ドルでした。前年同期は1523億ドルでした。
カード・ネット・チャージオフ比率は2.07%でした。前年同期は1.37%でした。
カード30日支払遅延比率は1.68%でした。前年同期は1.09%でした。90日支払遅延比率は0.83%でした。前年同期は0.54%でした。
コーポレート投資銀行部門売上高は136億ドルでした。これは前年同期比±0%でした。利益は前年同期比+1%の44.2億ドルでした。
うち投資銀行売上高は前年同期比−18%の16.5億ドルでした。M&Aフィーは前年同期比−6%の7.56億ドル、株式引受けフィーは前年同期比−6%の2.35億ドル、債券引受けフィーは前年同期比−34%の6.63億ドルでした。
市場証券サービス部門売上高は前年同期比+1%の136億ドルでした。債券部売上高は前年同期比±0%の57億ドル、株式部売上高は前年同期比−12%の26.8億ドルでした。
総資産利益率(ROA)は1.38%でした。前年同期は0.86%でした。有形自己資本利益率(ROTCE)は23%でした。前年同期は16%でした。普通株式等ティアワン比率(CET1 capital ratio)は13.8%でした。前年同期は11.9%でした。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。