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今年は「セルインメイ」になるのか?
今年は「セルインメイ」になるのか?
2023/5/18
ウォール街の格言にSell in May and go awayというのがあります。「5月には株を処分して旅行にでも行け」という意味です。
米国株を代表する株価指数にS&P500指数がありますが1950年まで遡った月次パフォーマンスは下のチャートのようになっています。
なるほど10月から4月にかけての7カ月間は大体米国株は高い月が多いけれど5月から9月にかけてのパフォーマンスは冴えないです。
そこで足元の懸念材料をまとめてみます。
連邦債務上限引き上げ
先日、ジャネット・イエレン財務長官は「6月1日頃、連邦政府のやりくりが限界を迎える。だからその時までに連邦債務上限を引き上げることを切に願う」とコメントしました。
連邦債務上限の引き上げを決めるのは議会、それも主に下院が責任を持っている事項です。現在は共和党が過半数を占めておりケビン・マッカーシー議員が下院議長を務めています。ここで少し不安になるのはマッカーシー議員は下院議長としての経験が浅く、皆をうまくまとめることが出来るかは未知数な部分が多いという点です。
もし期限までに連邦債務上限の引き上げが出来ない場合は公務員の一時帰休のような措置が取られます。その場合でも連邦政府が償還の来る米国財務省証券の元本を投資家に返さないとか、利払いを止めるとかのデフォルトが起こる事は考えにくいです。
言い換えれば小さな乱気流は覚悟する必要があるけれど、大惨事にはならないということです。
インフレ
次にインフレについてですが4月の消費者物価指数のうち連邦準備制度理事会(FRB)が特に注目しているコア・インフレ(=物価指数の中から変動の激しい食品・エネルギーを除いたもの)は前年同月比+5.5%でした。これは4月の+5.6%から少し改善したものの未だ極めて高い水準です。加えて賃金インフレに目を転ずると4月の平均時給の伸びは+16¢と、今年に入って一番高い伸びを示しました。
これらのことはインフレの抑え込みが成功しているのかどうか未だわからないことを意味し、FRBは直ぐにハト派に転じることは出来ないことを示唆しています。
■銀行不安
3月半ばにカリフォルニアを中心とした地銀があいついで破綻した件については一度は危機が収束したように見えたのですが、一部の小さな地銀に限って空売り筋の売り仕掛けのようなことは5月に入っても散見され、未だ完全に危険水域を脱したとは言い切れません。
■企業業績
2023年第1四半期の決算がほぼ出揃い、今回の決算は総じて事前に予想されたよりやや良い結果となりました。しかし好決算が出た後の株価を観察するとアフターマーケットや翌日の株価の急伸は殆ど無かったというのが実情です。投資家が熱狂していない理由は今回は事前予想が悲観的過ぎたことで結果が予想を上回ったけれど、ひょっとすると不況が到来するかもしれない折、いまは余り強気になれないという投資家心理が読み取れます。
投資戦略
以上のことをまとめると、個々の要因はまちまちであり、どれも中途半端だと言えると思います。
従って足下の相場は一進一退が続くと思われます。もう少し踏み込んで言えば「セルインメイ」だと断言できるほどの材料は無いけれど、逆に強気になれる材料も無いということです。ここはジタバタせずにサマーラリーに期待しポジションは維持しておくのが良いと思います。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。