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市場は好景気持続のシナリオを織り込みつつある
市場は好景気持続のシナリオを織り込みつつある
2023/6/12
遠のいた利下げ期待
春先と現在のマーケットで最も変化した点は、市場参加者の今年年末の時点での米国の政策金利、フェデラルファンズレートの水準に対する考え方です。
具体的には春先は年内3回の利下げがあるということを先物市場は織り込んでいました。いまは1回程度という感じで利下げ期待が遠のいています。
その理由は3月半ばに起きた銀行破綻不安が、その後、全米に波及することなく収束したことによります。
一方、米国の雇用市場は強く賃金の上昇圧力は依然として感じられています。これから物価統計の前年比較が苦しい時期に入ってゆくので、インフレの高止まりが懸念されます。
二極分化した相場
米国株式市場はアップル、エヌビディア、マイクロソフトなどごく一部のハイテク大型株だけがどんどん上昇する相場でした。その一方でそれ以外の株は低迷が続き二極分化していました。
しかし政策金利高止まりに対する諦めが広がり、世界的に金利が上昇し始める中、この二極分化には訂正が入る気配が出てきました。
目先の相場は先駆けした大型ハイテク株が売られ、それ以外の銘柄が値を切り上げると思います。指数自体は大型ハイテク株の軟調に引きずられる格好でやや軟調になると思います。
■人気セクターから市場参加者が考えている事がわかる もうすこしセクター・レベルで丁寧に観察すれば、旅行レジャー関連の銘柄が良い動きを示す一方で薬品、食品、公益株などの典型的なディフェンシブ・セクターが売られています。このセクター・ローテーションからも景気後退というよりは、好景気の持続のシナリオを投資家が支持していることがわかります。
なぜ好景気は続かない?
その反面、小売りの一角では3月から4月にかけて売り上げが突然落ち込むなどの悪い兆候が見られました。その一因は育児税控除還付金が税制の変更で削減され、低所得者の家計を圧迫したことにあります。
加えて過去2年間に食品の値段は2割も上昇したため、消費者はクレカのリボ債務を増やすことによりやりくりしています。これは中長期的には不健全なことであり将来の景気後退を招く原因になるかも知れません。
■秋相場が荒れる理由 このような消費者のその場しのぎが限界に達するのは秋口かも知れません。つまり投資家が「もう景気後退は遠のいた」とガードを下ろしたタイミングで、実際には景気後退が襲ってくるリスクがあるということです。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。