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ロシアの混乱は世界の株式バリュエーションに悪材料

ロシアの混乱は世界の株式バリュエーションに悪材料

2023/6/28

1ロシアでの出来事

6月24日(土)未明、ロシア南部黒海に面した街ロストフナドヌーのロシア軍司令部を民間軍事会社ワグネルの傭兵部隊が占拠する事件が起きました。ワグネルはエフゲニー・プリゴジンを総帥とする精鋭部隊です。

プリゴジンはプーチン大統領の昔馴染みで、若い時、10年ほど刑務所で過ごした後、出所し、ホットドッグ・スタンドから仕出し屋、レストラン経営という風に商売を広げていったやり手です。民間軍事会社もその延長で手を染めたわけです。

ワグネルは手のつけようのない愚連隊のような性格を帯びており、「弾薬をよこせ! 食料はどうした?」と要求の多い集団として知られています。

ロシアの軍部は長引くウクライナ戦争で兵站の補給に苦しんでおり、プリゴジンからあからさまに批判されて面目を失っていました。

その関係でロシア軍の中で正規軍の指揮系統とワグネルへの忠誠という二重の構造が出来てしまいプーチン大統領はプリゴジンを抑える素振りを見せていました。

それに切れたプリゴジンがロシアの軍需産業が集中し、ロジスティックスの拠点でもあるロストフナドヌーを占拠したのです。

プリゴジンはロシア正規軍のトップの更迭を要求しました。これを書いている6月26日の時点でプーチン大統領はその要求を呑んでいません。

ロストフナドヌーを占拠した勢いでワグネルの一団はモスクワを目指しましたがモスクワは大都会なので2万人ほどの手勢で制圧することはとても無理です。

そこでプリゴジンの親友であるベラルーシのルカシェンコ大統領が仲裁に入り、ワグネル軍は踵を返し、ウクライナの前線に戻ってロシア正規軍に志願することに合意、プリゴジン自身はベラルーシに亡命するという約束が取り付けられました。

この間、プーチン大統領は一度テレビ演説をした後、公衆の面前から姿を消し、逃げ腰な印象を国民に与えています。

2ロシアは不安定な局面へ

ロシアの国民は(強くて賢いリーダーに導いてほしい)という願望が強いです。これはピョートル大帝の頃からのロシアの伝統であり、何が何でも民主主義のプロセスを重視するアメリカ人などの考え方とはぜんぜん違います。

今回、プーチンが弱さを露呈したということはロシアの政治がぐらぐらし始めたことを意味し、これで一件落着、すべては元の状態に戻るという風には考えない方が良いです。

前回、ロシアでクーデターが起きたのは1991年であり、その時は経済が混乱し、ロシアの原油生産は大きく落ち込みました。

もしロシアの経済が乱れるようであれば今回もロシアの原油・天然ガスの生産に乱れが出るというのは自然なシナリオです。

ウクライナ戦争勃発後、西側諸国がロシア産原油・天然ガスをボイコットした関係で、ロシアは仕向け先を中国とインドに切り替えています。

すると中国やインドはこのままロシアから主にエネルギーを購入し続けると、もしロシアで何か起きたとき、エネルギーの安全保障が確保できなくなるリスクがあるわけです。

従って今後中国やインドは中東やアメリカに原油・天然ガスの購入を分散しはじめることが予想されます。

私が原油・天然ガスの価格が今後上昇すると考える理由はここにあります。

それは折角鎮静化する様子を見せ始めたインフレが再燃するリスクが増えたことを意味します。

3不透明感は株式バリュエーションにマイナス

地政学的な不透明感はリスクテーキングに対し消極的な態度を増やすと思われます。

今後価格のボラティリティーは上昇し、株式バリュエーションは逆に緊縮すると考えるのが自然です。

投資戦略としてはポジションを少し軽くし、ハイテクを利食い、エネルギーをオーバーウエイトするのが良いでしょう。

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著者

広瀬 隆雄(ひろせたかお)

コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター

グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。

広瀬 隆雄

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