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FRB利上げ打ち止めを好感する年末相場を予想
FRB利上げ打ち止めを好感する年末相場を予想
2023/10/13
8月以降のぐずぐずした米国株の商状は突き詰めて言えば長期金利の容赦ない上昇によってもたらされました。
その長期金利が今週にはいってようやく沈静化する動きを見せています。
イスラエルに対しハマスが攻撃をかけたことで中東情勢が緊迫化したことが一因として考えられます。
世界には2300万人の広義でのユダヤ人が居ますが、そのうちの半分は米国に住んでいます。イスラエルよりも米国在住のユダヤ人の方が多いことが目を惹きます。
これは何を意味するか? と言えばイスラエルが危機を経験すれば米国でもそれを心配する人が多いことを意味しています。
ユダヤ人は金融、法曹関係者、マスコミ・エンターテインメント、会社経営などで活躍していることは広く知られていますが、今回のような事件が起こると(世相は混迷してきている……採用は控えた方がいい)というような慎重な意見が増えることが予想されます。
そのことは求人数と求職者数のアンバランスが解消し、賃金上昇プレッシャーが和らぐことを意味します。
FRBは賃金インフレをとりわけ警戒しているので、賃金上昇プレッシャーの緩和は追加利上げの必要性を取り除きます。
加えて金融コンディションがタイト化したことが挙げられます。金融コンディションとは、わかりやすい表現にすれば世の中の金回りの良さを指します。具体的には市中金利の上昇でローンが組みにくくなるのはその一例ですし、株価下落で企業が増資しにくくなることもその例です。
経済再開で高まっていた法人融資需要も、ここへきて米国、EUを中心に冷えてきています。
FRBが利上げする理由はインフレを抑制するため景気を冷やす必要があるからです。でも上の例に見られるように金融コンディションが勝手にタイト化した関係で、マーケットがFRBに代わって引締めの仕事をやってのけてしまったということです。
FRBが最後に利上げしたのは7月の連邦公開市場委員会(FOMC)です。米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レートは5.25〜5.50%です。9月20日のFOMCでは利上げは見送られましたし、次の11月1日のFOMCでも利上げは見送られると思います。
つまり振り返ってみれば(ああ、7月の利上げが最後だったんだな)という事実が事後的に認識されたということです。
相場では「後になってはじめてあの時がそうだったのだとわかる」ことが多いです。景気後退への入り方、不景気からの脱却、利上げの打ち止め……これらは全てリアルタイムで「今だ!」と分かることは稀で、タイムラグを伴い悟られます。
「実質的に利上げ打ち止めは7月だったんだ」という悟り……これがいまこのタイミングで出ているのです。
相場は、利上げ完了を好感し、それを一度は祝うと思います。そのことはこれから年末にかけてラリーがあるということを意味します。年末相場に積極的に取り組む環境が整いました。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。