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第3四半期決算で印象に残った銘柄
第3四半期決算で印象に残った銘柄
2023/11/14
■第3四半期決算はほぼ出揃った
2023年第3四半期決算発表シーズンは、ほぼ終わりを迎えています。一部のソフトウェア・アズ・ア・サービス(SaaS)企業は決算の〆が9月末ではなく10月末なので未だ決算発表してないものの、大部分のテクノロジー企業は決算発表を終えています。
今日はそれらの既に決算発表を済ませた企業の中から特に印象に残ったものをハイライトしたいと思います。
■データドッグ
データドッグ(ティッカーシンボル:DDOG)はアプリが正常に作動しているかをモニターしセキュリティを監視するプラットフォームです。顧客企業のアプリがどのように稼働しているかリアルタイムで把握しサイトのパフォーマンスに悪影響を与えている要因を突き止め、是正します。
同社のプラットフォームは最初からクラウド向けにデザインされておりスケーラブルです。そのダッシュボードはビジュアル的に見やすく、ドラッグ&ドロップでカスタマイズできるなど使いやすいです。さらにデータ・レイヤーとの統合、いろいろなクラウド・サービスに横断的にデプロイメントできるなどの特徴を備えています。
同社はこのところずっと「良い決算」を出し続けており、11月7日に発表された第3四半期も全く危なげない安定した内容でした。EPSは予想34¢に対し結果45¢、売上高は予想5.25億ドルに対し結果5.48億ドル、売上高成長率は前年同期比+25.4%でした。年間売上高にして10万ドルを超える大口顧客数は3,130社でした。ちなみに前年同期は2,600社でした。
第4四半期のEPSは予想35¢に対し新ガイダンス44¢が提示されました。売上高は予想5.45億ドルに対し新ガイダンス5.64〜5.68億ドルが提示されています。
■ビアサット
ビアサット(ティッカーシンボル:VSAT)はKa-bandと呼ばれる大容量衛星通信システムを通じ米軍、民間企業、消費者にブロードバンド・サービスを提供しています。
最近はスペースXのスターリンクのように地球の大気圏のすぐ外の低軌道を地球にへばりつくように飛ぶ小型人工衛星が一大ブームになっていますが、同社のシステムはもっとずっと遠くの距離から地球をカバーします。これら二つのサービスを比べると、一長一短であることがわかります。低軌道衛星は地球のユーザーが小型人工衛星にシグナルをアップロードする際、送信時間の遅延(レイテンシー)が少ないというメリットがあります。これに対しビアサットのKa-bandは地球から遠く離れた人工衛星までシグナルが届くのに時間がかかります。
そういうデメリットがある反面、Ka-bandの良い点としては少ない人工衛星で地球全体を効率的にカバーでき、盲点ができにくいです。さらに旅客機のような早いスピードで移動している飛行物体の場合、低軌道だとカバレッジに穴ができやすいのですがKa-bandなら安定したサービスを提供できます。
こういう利点に目を付けたユナイテッド・エアラインズなどの米国の航空会社は同社のKa-bandを採用し、ゆくゆくは米国上空を飛ぶ全ての旅客機で無料インターネットが使えるようにする計画です。
同社は米国のエアラインから続々注文を受けていた矢先に打ち上げたばかりのViaSat-3 F1衛星のアンテナが不具合で完全に開かないというハプニングに見舞われ、契約をちゃんと履行できるか危ぶまれました。しかし現在の半開きの状態でも十分な周波数帯域、送信速度、カバレッジを提供できることが確認されました。
11月8日に発表された第2四半期(9月期)決算ではEPSが予想72¢に対し結果$1.19、売上高が予想10.6億ドルに対し結果12.3億ドル、売上高成長率は前年同期比+64.5%でした。2024年度の売上高は予想41.4億ドルに対し新ガイダンス41〜42.5億ドルが提示されています。
■デュオリンゴ
デュオリンゴ(ティッカーシンボル:DUOL)は外国語をゲーム感覚で楽しく学べる学習アプリを提供する会社です。
11月8日に発表された第3四半期決算ではEPSが予想−7¢に対し結果6¢、売上高予想1.32億ドルに対し結果1.38億ドル、売上高成長率前年同期比+43.2%と良い内容でした。売上高に将来計上する分を含めた「ブッキングス」は前年同期比+49%の1.54億ドルでした。第4四半期の売上高は予想1.41億ドルに対し新ガイダンス1.45〜1.48億ドルが提示されました。
さらに同社は音楽教室、算数教室などの新しいコースも提供してゆく考えだと発表しました。
■トレードデスク
トレードデスク(ティッカーシンボル:TTD)はブランドがデジタル広告を出稿する際、自動的にキャンペーンの内容を最適化できるプログラマティック広告のプラットフォームを提供しています。
同社の第3四半期はEPSが予想29¢に対し結果33¢、売上高予想4.87億ドルに対し結果4.93億ドルでした。売上高成長率は前年同期比+24.9%でした。
ガザ地区を支配しているハマスがイスラエルに対して不意打ちの攻撃を仕掛けた翌週からトレードデスクの顧客(全米のトップ200広告主が多いです)はこの事件が世界経済に与える影響を憂慮し、広告出稿を躊躇しました。その関係で次の第4四半期の売上高は予想6.1億ドルに対し新ガイダンスが5.8億ドルと低くなっています。
しかし会社側はこのスローダウンは11月第1週までに平常に戻ったと明言しているため、この落ち込みは一過性のものと見るべきです。
■ドクシミティ
ドクシミティ(ティッカーシンボル:DOCS)は遠隔医療関連ソリューションを提供しています。具体的にはHIPAA(医療保険相互運用性説明責任法)という電子医療情報管理基準に合格するインフラで、お医者さんと患者さんをつなげています。
同社のコミュニケーションシステムは全米の8割のお医者さんが利用しており、デファクト・スタンダード化しています。一例として精神科医が遠くに住む患者さんにビデオ面談する場合、HIPAA基準を満たしている通信手段を使わず会話すると患者さんの個人情報が漏洩するリスクを冒したということで罰せられます。
11月9日に発表された同社の第2四半期(9月期)決算はEPSが予想17¢に対し結果22¢、売上高予想1.1億ドルに対し結果1.14億ドル、売上高成長率前年同期比+11.2%でした。第3四半期は売上高予想1.22億ドルに対し新ガイダンス1.27〜1.28億ドルが、2024年度売上高予想4.58億ドルに対し新ガイダンス4.6〜4.72億ドルが提示されています。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。