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退屈で普通なマーケットも悪くない
退屈で普通なマーケットも悪くない
2023/12/12
現在の米国経済と株式市場は退屈で普通の状態です。私は(そんなマーケットも悪くないな)と思っています。
思えば2020年2月に新型コロナでマーケットが急落して以来、市場参加者はかつて経験しなかったような極端な材料に翻弄され続けて来ました。
疫病で外出できなくなり、経済が混乱に陥る懸念から株式市場は2020年2月19日S&P500の高値3,393.52から3月23日の2,191.86まで−35%近く下落しました。
米国財務省証券のような流動性の高い安全な投資対象ですら、サクサクと売り買いするのが困難になりました。
連邦準備制度理事会(FRB)は急遽政策金利を0%にし、量的緩和政策や流動性提供の政策を次々に打ち出しました。
政府は特別予算を組み、国民ひとりひとりに1,000ドルを配るなど、過去に例を見ない支援を打ち出しました。
経済が再開した後はサプライチェーンのボトルネックでインフレが起き、それが賃金にも飛び火しました。
消費者物価指数は2022年の夏には+9.0%まで上昇しましたが、その後のFRBの度重なる利上げで現在はだいぶ鎮静化しています。
現在、米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レートは5.25〜5.50%となっています。
2023年3月にはカリフォルニア州などで一部の地銀に預金の取り付け騒ぎが起きました。急激な利上げの副産物であるという捉え方も出来ますが、そもそも杜撰な経営がされてきたごく一握りの地銀が預金者からの信頼を失った、きわめて固有の問題だったと言えます。
さて、失業率は未だ3.7%と極めて低い水準にあります。
そのことは米国経済が引き続き堅調であることを示唆しています。
FRBは7月に最後の利上げをして以来、ずっと政策金利を横ばいに保っています。今のところ新しい動きを見せる必要性は極めて低いです。
言い直せば米国経済は特にこれといった新しい材料が無いまま、ヒタヒタと拡大を続けているというわけです。
これは相場の材料という観点からは物足りないです。
しかし「経済がSTOP!」→「大胆な支援の発動」→「経済再開に伴うハイパー・インフレ」→「一部地銀の不安」→「インフレの終息」という風に色々な材料が続いた後、すべてが落ち着きを見せている現在の状況はむしろ歓迎すべきだと思います。
現在の株式市場のバリュエーションはS&P500の向こう12か月の一株当り利益(EPS)に基づいて19倍であり、これは過去10年の平均からすれば少し割高ではありますが、我慢できる水準です。
長期金利も少し下落し始めており、これは株式バリュエーション支援材料と言えます。
相場の格言に「閑散に売りなし」というのがありますが、今のような小動きの続くマーケットではBUY & HOLDを継続するのが一番だと思います。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。