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遠のく6月利下げ
遠のく6月利下げ
2024/4/9
遠のく6月利下げ
先週3月の雇用統計が発表され全体的に強い内容でした。それから判断して6月の利下げは望み薄かな? と考え始めています。今日はそれについて書きます。
雇用統計
まず3月の非農業部門雇用者数は予想20万人に対し結果30.3万人でした。
つまり2023年5月以来の強い数字で、雇用市場は絶好調なのです。
3月の失業率は予想3.9%に対し結果3.8%でした。
つまり失業率も歴史的に低い水準を推移しているわけです。
労働力率は62.7%と2月の62.5%から改善しました。
次に平均時給は+12¢でした。
つまり賃金も騰勢が衰えていないのです。
連邦準備制度理事会の次の一手
今回のデータが経済の足腰は未だ強く、ちょっと気を抜けば賃金インフレが再燃しかねないことを示唆する内容であった以上、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は慎重な手綱さばきを要求されます。ここで安易な気持ちで利下げすれば「危ない局面にもかかわらずなぜ利下げした?」と非難を浴びることは必至です。従って来る5月1日の連邦公開市場委員会(FOMC)では利下げのタイミングに関しては何も言及せず、量的引締め(QT)政策に関しては「減速すべきかどうかの討議に入る」という事だけをシグナルし、FRBのキモチとしては未だ緩和バイアスだけはかろうじて残していることをほのめかすにとどまると思います。
その次のFOMCは6月12日です。この日に利下げが無いなら次のFOMCは7月31日になりますが、これは7月15〜18日にミルウォーキーで予定されている共和党大会の後になります。普通、大統領選挙の直前に利下げすると(政治的な裏があるのでは?)と邪推されるリスクがあり、FRBは選挙直前に利下げ開始などの金利政策の大転換を敬遠することで知られています。なおFRBが最後に利上げしたのは2023年7月であり、6月の利下げをパスするシナリオではFRBはまるまる1年政策金利を5.25%のまま「横這い」にした実績を得られます。これはインフレファイターとしてのFRBのクレディビリティーを補強する証拠に他ならないのでFRBはひそかにこのシナリオの実現を願っていると考えることも出来ます。
■市場への影響
FRBが次のFOMCで6月利下げをシグナルしない場合、市場参加者は落胆すると思います。しかし米国経済がソフトランディングするシナリオではFRBからの利下げという援護射撃がなくても株式は上昇することが出来るというのは1990年代のドットコムブームの例を見れば一目瞭然です。したがって落胆はごく束の間で市場はまた上昇して行けると考えるのが自然です。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。