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AIバブルは調整局面へ
AIバブルは調整局面へ
2024/7/30
グーグルは怖気づいた
AIバブルは調整局面に入りました。直接の引き金は「AIファクトリー」の建設に多額の先行投資を投じている大手ハイテク企業の一角、アルファベット(ティッカーシンボル:GOOG)が「来期の先行投資額は今期と横ばいの132億ドル前後にとどめる」とコメントしたことです。
もっとわかりやすい表現を使えば、グーグルは怖気づいたということ。
大部分の投資家はAI投資は未だ端緒についたばかりで、毎期、投資額は順調に伸びてゆくと考えています。しかしアルファベットがブレーキを踏むと発表したことで他社も自社のAI戦略をしっかり見つめ直す必要がでています。
■最大手のオープンAIですら大赤字
AIサービスを売上高に結びつけるという点ではオープンAIのチャットGPTが一番成功しています。とりわけチャットGPT APIを通じて、一般企業がいろいろなAIサービスを展開するというビジネスモデルにおいてオープンAIは他社を圧倒しています。そのオープンAIですら、いまは大赤字であり、黒字化の目処は全く立っていません。
アルファベットは「法人向けAIサービスに関しては取り組まないといけない問題が山積みだ」と正直に立ち遅れを認めています。
巨額投資を進めているメタの動向に注目
AIに積極投資している企業のひとつにメタ・プラットフォームズ(ティッカーシンボル:META)があります。同社の場合、ラマというオープンソースの大規模言語モデルを展開しています。
ラマを無料で使用し広告表示などの精度を上げることでメタは先行投資を利益に変えることが出来ると信じられています。逆にいえば、ラマを現在のままの姿で第三者の企業に使ってもらい、そこから利益を得るビジネスモデルはいまのところメタは考えてないのです。
するとメタが今後もラマにどんどん追加投資するかどうかは、ラマの存在がメタの本業の業績にどれだけ好結果をもたらしているか? という足元のそろばんにかかっているわけです。
■極端なGPU不足から一転して投げ売りも
テクノロジー大手各社が(AIへの莫大な先行投資はリターンに乏しく自社の株価にマイナスの影響を及ぼしている)と判断すれば次々にAIプロジェクトが縮小されるリスクもあります。その場合、高価なGPUは極端な品薄から一転して投げ売りになるリスクもあるでしょう。これはビットコイン・マイニング・ブーム当時でも見られた現象です。
株式市場の行き過ぎは別に珍しいことではない
もともと破壊的イノベーションが離陸する局面では「狂乱(frenzy)」と呼ばれる、株式市場での熱狂が実際の技術の成熟に大いに先行してしまう「行き過ぎ」が不可欠です。なぜなら、そのような高値が廉価な資本の調達を可能にし、企業に挑戦することを仕向ける原因となるからです。
その意味では今回のAIバブルの行き過ぎは古典的な経済サイクルが繰り返されているにすぎないのです。
またドットコムバブル崩壊でインターネットが無くならなかったように、AIバブルが崩壊してもAIそのものはちゃんと社会に定着します。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。