マーケット > レポート > 広瀬の外国株式・海外ETFデビュー講座 > 米国株は強気転換!?
米国株は強気転換!?
米国株は強気転換!?
2024/8/14
米国株は強気転換!?
米国を代表する株価指数S&P500は7月16日に5669.67の高値を付けた後、8月5日のザラバの安値5119.26まで-9.7%の下げを演じましたが、その後出直り、これを書いている8月12日の引値は5344.39、つまり高値からの下げ幅は-5.7%に過ぎません。
今回の下げは米国のリセッションをシグナルしていない
「株価には先見性がある」と言われます。つまりどんな経済指標より早く株式市場は不況の到来をシグナルする傾向があるのです。
その法則が知られているので、今回、株価指数がスルスル下げ始めたときも(すわ不況の到来か?)と市場参加者は固唾を呑みました。
しかしS&P500指数の下げ幅-9.7%はリセッションの到来を告げるような極端な下げとは言えません。
ちなみに直近の2回のリセッションのエピソードを検証すると、新型コロナが世界的不況を招いたケースでは2020年2月19日のS&P500指数3393の高値から3月23日の安値2192まで-35%下落しています。
その前のリーマンショックの時は、2007年10月の高値1576から2009年3月の安値667まで-57%の大きな下げになりました。
つまり今回の調整幅は極めて小さいため「これは不況の前兆だ!」と確信を持って宣言できないのです。
■過熱感は払拭された
今回、マーケットが下げる過程で、市場参加者のセンチメントは大きく悲観に傾きました。トレーダーは過度のレバレッジを用いたポジションを手仕舞いしました。浮ついたムードは消え失せたと言えます。
■安全資産への避難は株式の理論価値をUP
投資家が債券に避難した関係で長期債が買われ、7月の始めには4.45%だった米国10年債の利回りは現在3.9%まで下がっています。
これは株式の理論価値という観点からは歓迎すべきことです。なぜなら長期金利と株式バリュエーションはシーソーの関係にあり、長期金利が低下すれば株式の理論価値は上がるからです。
大統領選挙のアノマリー
8月6日、民主党大統領候補カマラ・ハリスは副大統領候補にティム・ワルツを選びました。これで共和党、民主党の大統領候補、副大統領候補は全て揃い、本格的に選挙戦がキックオフされたことになります。
アンケート調査ではハリスの人気がうなぎのぼりになっており、共和党のトランプ候補の人気を上回っています。
現在の両候補の人気の差は僅かであり、選挙戦は未だ五分五分と考えたほうが良いです。
しかしそろそろ民主党が勝つケースも想定したほうが良いと思います。
それと言うのも大統領選挙の年の株式市場は選挙の結果でパフォーマンスが大きく変わってくるからです。
現職の大統領が所属する政党(=今回は民主党)が政権を維持するシナリオでは株式市場は大きく上げます。
その理由は市場参加者が政策の継続性、連続性を好むからです。
第二次世界大戦後の過去80年で大統領選挙が戦われた回数は20回、そのうち10回は現職大統領の所属政党が勝ち、残りの10回は負けました。そして現職の大統領の所属政党が大統領府を支配する場合、株式市場は秋に押し目を作らず年末まで堅調に推移するのが通例でした。
するともし今回民主党が勝利するのであれば9・10月に軟調な株式市場を想定するのは経験則に反するわけです。
まとめ
今回の米国株の調整は小幅にとどまりました。株式市場が不況の到来を予告していると言うには、あまりにも下げ幅が小さすぎると思います。その反面、過熱感は無くなり、長期金利が低下したこともあって株式バリュエーションにはむしろプラスだと考えられます。大統領選挙で民主党が勝つシナリオでは秋相場に大きな押し目は無いと経験則的に考えることが出来ます。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。