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9月から利下げ開始か
9月から利下げ開始か
2024/8/27
8月23日(金)、ジャクソンホール経済シンポジウムでパウエル議長がスピーチし「利下げする時が来た」と述べました。これで9月18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レートが現行の5.25〜5.50%から引き下げられることはほぼ確実となりました。
引き下げ幅に関しては先週のスピーチの中では明言されませんでしたが、過半数の市場参加者は0.25%を予想しています。
これで1年2ヶ月にわたってずっと横ばいだった政策金利のベクトルが、いよいよ下向きになるわけです。
市場参加者は9月だけでなく、11月、12月のFOMCでも更に利下げされることを望んでいるし、フェデラルファンズ先物の価格にもそれが織り込まれています。
しかし株式市場的には矢継ぎ早の利下げは必ずしも株価にとってプラスとは限りません。
なぜなら連邦準備制度理事会(FRB)が何度も利下げを繰り返さなければいけないシナリオでは景気がどんどん冷え込んでいることが多く、それは不況到来のシナリオだからです。
足元の米国経済は消費や設備投資の好調を受けてしっかり成長しています。今年は大統領選挙の年なので政府が積極的な財政出動をしていることも景気の下支えに一役買っていると思います。
失業率はじわじわ上昇してきており、これ以上失業の増加ペースが増えると手のつけられない上昇をはじめるリスクがあります。
先週もうひとつ話題になったことは労働省労働統計局が過去の非農業部門雇用者数のデータを大幅に下方修正したことです。
この見直しは毎年行われています。速報性を重視した非農業部門雇用者数の統計を、より正確な企業から州政府へ提出された失業保険掛け金データで置き換えるわけです。その性格上、政治的な意図やニュース性に乏しく、よって市場へのインパクトもありません。
まとめるといよいよ9月から米国の政策金利は引き下げられることが濃厚となっています。矢継ぎ早に何度も利下げを繰り返すシナリオをイメージしている投資家は、勘違いしていると思います。それは好ましくないシナリオの可能性があります。失業率はひょっとするとスルスル上昇する直前かも知れません。それは悪いシナリオだと思いますので、そうならないで欲しいです。先週の非農業部門雇用者数の下方修正は例年行われていることで、より正確だけど集計に時間がかかるデータセットに置き換えただけですので気にする必要はありません。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。