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米国大統領選挙のしくみと今回のみどころ
米国大統領選挙のしくみと今回のみどころ
2024/10/16
米国の大統領選挙は11月5日に本投票日を迎えます。
米国の大統領選挙では選挙人団という仕組みが使われます。
選挙人団は各州に割り当てられた「選挙人」と呼ばれる代表者たちによって構成されています。
選挙人の数はその州の連邦議会の議員数に基づいて決まります。つまり、カリフォルニアのように大きな人口を持つ州は選挙人の数が多く、ワイオミング州のように人口の少ない州は少なくなります。合計で538名の選挙人が存在し、大統領に当選するためには過半数の270票が必要です。
選挙人団制度では、各州で一般投票が行われ、その結果に基づいて州ごとの選挙人が大統領候補に票を投じます。ほとんどの州では「勝者総取り方式」が採用されており、その州で最も票を獲得した候補者がその州の全選挙人票を獲得します。ただし、メイン州とネブラスカ州は例外で、比例代表制に近い方式を一部採用しています。
一般投票の結果に基づいて選出された選挙人は、後日行われる選挙人団の投票で正式に大統領と副大統領を選びます。ただし、選挙人が一般投票の結果に従わないことは非常にまれで、州の法律で罰則を科す場合もあります。
選挙人団制度では全国の一般投票の結果と選挙結果が一致しない場合があります。実際に、過去には一般投票で負けた候補者が選挙人団の投票で勝利し、大統領に選ばれたケースもあります。
投票日は各州ごとに投票箱が閉まる時間が異なります。多くの州では、投票は午後7時から8時の間に終了しますが、具体的な時間は州ごとのタイムゾーンに依存します。たとえば、インディアナ州とケンタッキー州では東部標準時の午後6時に投票が閉まる一方で、カリフォルニアなど西海岸の州では太平洋標準時の午後8時に投票が終了します。
結果の速報は、各州の投票が閉まるとすぐに集計が始まり、選挙人団の票が確定する前に、ある程度の傾向が見えてくる場合があります。
重要なスイング・ステートの結果によっては、選挙結果が早ければ選挙夜に判明することもありますが、郵便投票や早期投票の集計に時間がかかるため、最終的な結果が出るまでに数日かかる可能性もあります。
メディアが選挙結果を先を競って報道することには批判があります。正確なデータが揃う前に結果を予測してしまう可能性があります。特に、郵便投票や一部の州での集計の遅れが発生すると、誤った結果を伝えてしまうリスクがあります。
加えてメディアが早期に特定の候補者の勝利を予測すると、まだ投票が続いている地域の有権者に影響を与える可能性があります。「どうせ結果は決まった」と思って投票に行かない人が出てくるかもしれません。これは特にタイムゾーンが異なる州が多いアメリカでは重要な問題です。
西海岸(太平洋標準時)では東海岸(東部標準時)よりも3時間遅れて投票が行われているため、東海岸の開票結果が早々に報道されると、西海岸の有権者に「結果がすでに決まった」と誤解される可能性があります。
スイング・ステートとは、米国大統領選挙において、どちらの政党(民主党または共和党)の候補者が勝つかが予測しづらい州のことを指します。
以下は、最近の選挙でスイング・ステートと見なされている主要州と選挙人団の票数です。
フロリダ州30票
ペンシルベニア州19票
ミシガン州15票
ウィスコンシン州10票
アリゾナ州11票
ジョージア州16票
ノースカロライナ州16票
ネバダ州6票
オハイオ州17票
米国の大統領選挙と同時に、上院および下院議員の選挙も行われます。
上院は100議席あり、各州から2名ずつ選出されています。上院議員の任期は6年で、2年ごとに約3分の1が改選されます。
下院は435議席あり、議員の任期は2年です。そのため、下院議員は毎回の選挙で全議席が改選されます。
大統領がどの政党であっても、議会での多数派が異なる場合、大統領の政策を進めることが困難になることがあります。したがって、大統領選挙と並んで、上院・下院の選挙結果が今後の米国政治に与える影響も大きいです。
大統領選挙や議会選挙に加えて、州や地方ごとのレファレンダム(住民投票)も同時に行われることがよくあります。
2024年の米国選挙では10の州で妊娠中絶に関する憲法修正案が投票にかけられます。
アリゾナ州
フロリダ州
ネバダ州
コロラド州
メリーランド州
ミズーリ州
モンタナ州
ネブラスカ州
ニューヨーク州
サウスダコタ州
妊娠中絶の問題は大統領選挙でも争点となっているため、上記の10州では女性の有権者が投票所に赴くことを促し、それが民主党のカマラ・ハリス候補に有利に働くという見方もあります。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。