米連邦議会議員たちは「倫理的な道」を行き、自らの立場を堅持、自分たちがいかに「尽力」しているかを自らに対し示し、満足しているようでした。一方、米議会の無行動によって苦しんだアメリカ市民の多くは、「尽力」することこそ米議会の課題であると感じたわけです。最終的に米議会は過去に何度も行ったのと同様、問題を先送りにしました。今回の場合、解決策をみつけるための柔軟性のある期限が12月、予算が底を突く確固たる期限が1月15日(これが重要)、債務上限に達する、柔軟性のある期限が2月15日(一時しのぎの措置に、期限後も政府運営の続行を認める項目が含まれるため、期限に柔軟性がある) です。何らかの合意には達するであろうと市場をはじめ、ほぼ皆が確信していたため、市場は政府機関の閉鎖を乗り切るばかりでなく、小幅な上昇さえも遂げました。一時しのぎの措置が講じられた後は、決算発表が注目される中、リリーフラリー(安堵の相場上昇)となりました。第3四半期の決算は8割近くが発表され(小売はこれからがピーク)、第1・第2四半期同様、収益と売り上げの成長は緩やかながらも収益は過去最高に達しています。第3四半期の収益と売り上げは第2四半期に比べてそれぞれ1.6%と1.5%の上昇にとどまったものの、予想通り過去最高に達する見込みです。政府機関の閉鎖に伴い予想される損失(S&Pの推定では240億米ドルのコストと第4四半期の国内総生産(GDP)の0.6%の減少)を考えると、米連邦準備制度理事会(FRB)が景気刺激策の縮小をそれほど急ぐことはないだろうとの見方が支配的でした。米雇用統計が軟調だったこともその見方を裏付けました。
FRBの政策変更は2014年3月18−19日の会合で行われるというのが現在の見通しです。政府機関閉鎖や事実上のデフォルトの危機をしのいだことや、ファンダメンタルズが引き続き改善したことから、10月は市場心理が改善しました。決算シーズンが好調である上、金利は依然として低く、短期的には引き続き低水準で推移すると予想されています。また、多くの投資家が様子見姿勢である一方、投資家が引き続き市場に戻ってきている模様です。最近の高値更新が新たに投資家を引きつけ、新たな資金が市場に流入し、市場の上方圧力となる見込みです。11月は小売りの決算発表に加え、年末商戦が始まるため、小売りセクターの銘柄に注目が集まるでしょう。消費者は依然として神経質になっているものの、政府が原因の危機には慣れてきている模様です。市場の年初来パフォーマンスにおいては、際立っている点が2つあります。1つは上昇銘柄と下落銘柄の比率です。今年は上昇している銘柄数が下落している銘柄数を大きく上回っています。S&P500の構成銘柄のうち、448銘柄が年初来で上昇しています(50銘柄が下落)。これは1980年以来の年間記録に迫っています。かなりの数の人々が多大な利益を得ている一方、かなりの数の人々は市場に参加せずにいるため、利益を得ていないことも明らかです。これまで様子見だった投資家がリターンを追求して市場に戻ってくることが今後期待されています。もう1つは年初来の23.16%の上昇です(トータルリターンは25.30%)。この上昇はファンドにとってあまりにも魅力的なのではないか(現時点で株を売り払い、利益を確定してしまおうという策を取るのではないか)という懸念も一部聞かれました。ところが歴史的に見れば、1月〜10月の期間の上昇が10%以上だった(今年を除く)33年間のうち、11月〜12月の期間が下落となったのはわずか5年で、そのマイナス幅は0.13%から2.10%に及びました。その5年の平均は0.72%の下落だった一方、残り28年の平均は5.69%の上昇でした。目前にある上昇は確かに魅力的であるものの、将来の利益を見逃す恐怖のほうが大きいと言えるのではないでしょうか。
出所:出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス 2013年10月末現在。表は図示する目的のためだけのものです。過去の運用実績は将来の運用成果を保証するものではありません。この表は、仮説に基づく過去の実績を反映している可能性があります。
出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス 2013年10月末現在。
市場は9月の2.97%の上昇に続き、10月は(政府機関の閉鎖にもかかわらず)4.46%上昇しました(今年は10カ月中8カ月上昇)。S&P500は397銘柄と幅広く上昇し、102銘柄が下落しました。この結果は、財政問題をめぐる混乱を乗り切る必要があったことを考慮すればなおさら素晴らしい実績です。決算発表が概ね好調であったことが投資家の心理を下支えしました。決算発表の影響で個別銘柄にも目立った影響が見られました。S&P500構成銘柄のうち67銘柄が10%以上上昇し(平均で14.07%上昇)、7銘柄が10%以上下落しました(平均で15.29%下落)。商いは活発で、指数は堅調でした。10セクター全てが着実な上昇を遂げました(やや下落した日本などを除き、世界の主な市場は概ね堅調)。9月に唯一下落(0.63%)した電気通信サービスも、10月は7.35%上昇しました。年初来パフォーマンスは依然として最下位であるものの、9.74%上昇しています。同セクターの下支えとなったのが、7.0%上昇したAT&T (T)と8.3%上昇したVerizon (VZ)です。同じく反発した銘柄は、素材のCliffs Natural Resources (CLF) でした。同銘柄は全銘柄中最大の上昇(25.3%)を遂げましたが、年初来では33.4%下落しています。太陽光発電モジュール製造のFirst Solar (FSLR)は業績が予想を上回ったことが支援材料となり25.0%上昇し、年初来で62.8%上昇しています。ところが、2007年10月の高値からは63.4%下落しています。情報技術で目立ったのは、決算発表の内容がいまひとつだったものの9.6%上昇したApple (AAPL)でした。一方、同セクターで軟調だった銘柄は、13.5%下落したインターネットコンテンツの高速配信のAkamai Technologies (AKAM)(年初来で9.4%上昇)、12.7%下落した光学製品のJDS Uniphase (JDSU)(年初来で6.9%上昇)、9.6%下落した特殊半導体メーカーのAltera (ALTR)(年初来で2.4%下落)でした。JC Penney (JCP)は10月も引き続き軟調で15.0%下落し、年初来で62%下落しています。11月は小売りの決算発表やホリデーシーズンの販売予想に注目が集中するでしょう。市場は引き続き不安定な展開となる見込みですが、これまで同様大きな変動はないとの見方が支配的です。
出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス 2013年10月末現在。
出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス 2013年10月末現在。
投資家が押さえておくべきポイント
- 10月の年初来ベースの上昇(23.16%)は、10月の年初来ベースとしては1997年(23.47%上昇)以来最も大きい増加でした。
- 2013年のS&P500は年初来で33回終値ベースの高値を更新してきました。その前の高値は2007年(高値を9回更新)に記録し、そのさらに前の高値は2000年(高値を4回更新)に記録しました。
- S&P500の年初来の上昇銘柄の比率は年間記録に迫る89.6%(448銘柄が上昇、50銘柄が下落)となっています。
- 米雇用統計は軟調でした。
- JPモルガン・チェースは金融当局との和解で巨額の罰金を支払うことになります。
- 第3四半期の1株当たり利益(EPS)と売り上げの伸びは緩やかなものの、EPSは(3四半期連続で)過去最高を記録する見込みです。
- ドイツのメルケル首相盗聴疑惑をめぐる騒ぎについて、クラッパー国家情報長官は映画「カサブランカ」でルノー 警察署長が「ここで賭博をやっていたなんて、実に驚いた、驚いたよ!」と言ってみせる場面を彷彿させると発言しました。
- 10月はオンラインの保険加入システムの利用が開始されました。