今回はインターネット市場の大手企業について、当社の保有者数上位の5銘柄、アリババ、アマゾン、グーグル、フェイスブック、ツイッターに関して【事業内容】【四半期決算の動向】【投資のポイント】をまとめています。
引き続き高成長のインターネット市場ですが、広告など成長率が鈍化してきた分野もあり、ここ半年に限っても各社の株価の動きはまちまちでした。個々の企業のファンダメンタルズを確認して投資することの重要性が高まっていると見られます。
|
|
|
|
|
15年1-3月期決算が市場予想を上回り、業績への懸念が後退しました。30%台半ばの高い売上成長が見込まれる中、PERには割安感があると考えられます。 |
|
|
売上は順調な拡大となっていますが利益は低水準で、PERは非常な高水準です。AWSに関するポジティブ材料を織り込んだところであり、さらなる上値は期待しにくいと考えられます。 |
|
|
PERは割安ですが、ネット広告市場の鈍化で当面は株価上昇のカタリストを欠きそうです。一方、新規事業の収益化などが見えてくる場合には、株価の上昇余地は大きいと見られます。 |
|
|
当社がもつユーザーに関する情報が広告ターゲットの絞り込みに有用で、ネット広告市場でシェア拡大が続いています。業績モメンタムが強く、株価の上昇余地があると考えられます。 |
|
|
業績の伸びが市場の期待を下回り、足もとのPERには割高感があります。ユーザー獲得加速、商品強化に向けて対策を打っていますが、効果が現われるには時間がかかりそうです。 |
|
アリババ
|
銘柄コード |
|
国籍 |
中国 |
|
|
|
|
14.3 |
52,504 |
(+51%) |
23,105 |
( +171%) |
10.01 |
15.3 |
76,204 |
(+45%) |
25,006 |
( +8%) |
10.04 |
16.3予 |
102,641 |
(+35%) |
44,276 |
( +77%) |
16.83 |
17.3予 |
135,707 |
(+32%) |
59,498 |
( +34%) |
22.37 |
・株価(6/19): 85.74ドル |
・時価総額(6/19):2,140億ドル |
・予想PER(16.3):31.6倍 |
・予想PER(17.3): 23.5倍 |
- 注:予想PER算出のEPSは、1ドル=6.21人民元で換算。
|
|
【事業内容】
※主力事業は売上高の75%を占める中国の消費者向けeコマースで、同取引総額は15年3月期には2.4兆人民元(約49兆円)に達しました。楽天の国内eコマース流通総額が2兆円ですので、その巨大さが覗えます。
※取引総額のうち、個人間取引のタオバオ(日本のヤフーオークションに相当)が65%、電子商店街のTモール(日本の楽天市場に相当)が35%を占めます。当社売上高に計上されているのは、取引総額の2.4%に当たる取引に係る手数料などで、このため、売上高に対する営業利益率は30%と高くなっています。
※同事業の14年4月〜15年3月の購入者数は3.5億人に達し、また、取引総額に占めるモバイル比率は40%とモバイルへの対応も順調です。
|
図表1: アリババの売上構成比(14年12月期)
【四半期決算の動向】
※15年1-3月期の売上高は前年同期比45%増と好調でした。取引総額は図表2のとおり前年同期比伸び率が40%に低下しましたが、10-12月期との平均を取ると45%増で、14年1-9月期と同水準のモメンタムが維持されています。ヘッドラインの営業利益は、前年同期比52%減となりましたが、株式報酬費用の計上などが要因で、事業の基調は順調と評価できます。
※15年4-6月期は、売上高が前年同期比34%増、純利益が同22%減が見込まれています。
【投資のポイント】
※当社の株価が昨年末より下落したのは、中国経済減速に対する懸念の高まりに加え、1月29日発表の14年10-12月期の売上高が前年同期比40%増となり、市場予想の同47%増を下回ったためと見られます。
※しかし、5月7日発表の15年1-3月期決算では、売上の伸びは市場予想を4%近く上回り、前年同期比45%増に回復しました。これにより当社の個別要因に対する市場の懸念は後退したとみられます。さらに、中国経済の減速に関しても、市場での織り込みは進んだと考えられ、新たに株価のネガティブ要因となる可能性は小さくなっていると考えられます。
※このような状況下、減速するとは言え、当社の今期・来期の売上は30%台半ばの伸びが見込まれています。予想PERの今期予想ベースで31.6倍、来期予想ベースで23.5倍には割安感が強いと考えられます。
※当社のリスクとしては、「アリババはサイトでの偽物の販売を黙認している」との報道がたびたび出ることです。会社は偽物の販売を減らすべく監視をしていますが、これだけ取引が多いと完全になくすことは難しいと考えられます。ただ、これが会社の業績に大きなインパクトを与える可能性は小さいと見られます。
図表2: アリババの中国消費者向けeコマースの取扱総額
|
アマゾン
|
銘柄コード |
|
国籍 |
米国 |
|
|
|
|
13.12 |
74,452 |
(+22%) |
285 |
( +65%) |
0.61 |
14.12 |
88,988 |
(+20%) |
-131 |
( - %) |
-0.28 |
15.12予 |
103,147 |
(+16%) |
1,399 |
( - %) |
3.57 |
16.12予 |
121,882 |
(+18%) |
2,891 |
( +107%) |
6.21 |
・株価(6/19):434.92ドル |
・時価総額(6/19): 2,025億ドル |
・予想PER(15.12):121.8倍 |
・予想PER(15.12): 70.0倍 |
|
|
【事業内容】
※当社の売上は、自社で仕入れて販売する製品売上が79%、他社が当社サイトで販売したものに対する手数料や配送手数料、デジタルコンテンツの購入料やアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の売上等からなるサービス売上が21%を占めます。
※15年1-3月期よりクラウドコンピューティングサービスのAWSが分別開示され、年率売上が50億ドル超に達しており、サービス売上の5〜6%ポイントがこの事業によることが判明しました。
※グローバル展開のイメージがありますが、地域別には上位5カ国の売上が94%を占めます。小売という事業の性質上、進出した各地域ごとに強固なポジションを確保することが重要であるため、正しい戦略と考えられます。
|
図表3: アマゾンの売上構成比(14年12月期)
【四半期決算の動向】
※15年1-3月期の増収率は、年同期比+15%と前四半期と変わりませんでしたが、為替の影響を除いたベースでは、前四半期の同+18%から同+22%へ加速しました。
※15年4-6月期は、売上高が前年同期比16%増、純利益は黒字転換(14年4-6月期の1.26億ドルの赤字から3.74億ドルの黒字)が見込まれています。
【投資のポイント】
※最近の株価上昇は、決算で初めて分別開示されたアマゾン・ウェブ・サービスの売上が年率50億ドル規模に達しているにもかかわらず、前年同期比49%も増えていたことがポジティブサプライズになったと見られます。しかし、大きなポジティブ材料を織り込んだところでPERは非常に高水準となっているため、さらなる株価の上値は期待しにくいと考えられます。
※下のグラフは、アマゾンの売上高、営業利益、純利益の推移を示しています。利益率が低い小売業態とはいえ、通常の企業であれば、これだけ売上が伸びれば利益が増えて利益率も上昇するのが普通ですが、利益があまり出てこない(または、あまり出してこなかった)のが、この会社の特異な点です。
※これまで利益が出なくても株価が長期に下落するということはありませんでした。進出している各国で強固なポジションを確保しているため、いずれ利益が出てくるとの期待が維持されていると見られます。しかし、すでにPERは高水準となっているため、株式市場はある程度利益が出てくるのを確認するまで待つと考えられます。
図表4: アマゾンの売上高、営業利益、純利益
|
グーグル
|
銘柄コード |
|
国籍 |
米国 |
|
|
|
|
13.12 |
47,580 |
(+18%) |
13,373 |
( +23%) |
19.74 |
14.12 |
52,510 |
(+10%) |
13,891 |
( +4%) |
20.22 |
15.12予 |
59,718 |
(+14%) |
19,675 |
( +42%) |
28.39 |
16.12予 |
70,202 |
(+18%) |
22,884 |
( +16%) |
32.59 |
・株価(6/19): 557.52ドル |
・時価総額(6/19):3,662億ドル |
・予想PER(15.12): 19.6倍 |
・予想PER(16.12): 17.1倍 |
- 注:売上高は、トラフィック獲得費用を除いたベースです。
|
|
【事業内容】
※検索連動型広告のグローバルトップ企業です。検索件数のシェアは、米国で60%以上、中国語圏、韓国、ロシアを除いた各国でシェアトップを保持、グローバルでも6割以上のシェアを確保していると見られます。検索連動型広告は、ネットでの検索キーワードに関連した広告を掲載するもので、クリックされると当社の収入になります。
※売上高の9割を広告収入が占め、残り1割のその他収入には、コンテンツ配信の「グーグル・プレイ」やグーグルブランドのスマホ、タブレット、スマート・ウォッチ、Nestブランドの機器等の売上が含まれています。
※また、当社はグーグルXと呼ばれる研究施設を持ち、グーグルグラス、自動運転自動車、ドローンによる配達、血糖値が測れるコンタクトレンズなど、次世代技術の開発を進めています。
【四半期決算の動向】
※15年1-3月期の売上高は、為替の影響を除くベースで前年同期比17%増で、前四半期の同19%増から若干減速しました。新規事業への投資で研究開発費等が膨らみ、利益の伸びが増収率を下回る状況が続いています。純利益の増加率は前四半期の4%増とほぼ変わらずでした。
【投資のポイント】
※当社株価のバリュエーションは、売上が2桁以上で伸びているのに対して予想PERは今期予想ベースで19.6倍、来期予想ベースで17.1倍と割安感があります。ただ、当面はネット広告市場の成長鈍化から、株価上昇のカタリストを欠いた状態が続く可能性がありそうです。
※グーグルの売上高の伸びは図表5の通り、ドル高の影響を受けて14年4Q、15年1Qに鈍化となりましたが、為替の影響を除いても鈍化しています。この背景には、インターネットの成熟があると見られ、この傾向は続く可能性が高いと考えられます。当社はネット広告市場でシェア3割を占めるため、市場全体の鈍化の影響を受けやすいポジションにあります。
※一方、中期的には、開拓余地が残るネットのローカル広告市場への展開、グーグル・プレイの展開、積極的に投資している新規事業の収益化がどのようなタイミングで顕著となってくるかが注目されます。このような材料が具体化してきた場合には、株価の上昇余地は大きいと考えられます。
|
図表5: グーグルの売上高と前年同期比伸び率推移
|
フェイスブック
|
銘柄コード |
|
国籍 |
米国 |
|
|
|
|
13.12 |
7,872 |
(+55%) |
1,491 |
( 46倍) |
0.60 |
14.12 |
12,466 |
(+58%) |
2,925 |
( +96%) |
1.10 |
15.12予 |
17,025 |
(+37%) |
5,724 |
( +96%) |
1.99 |
16.12予 |
22,728 |
(+34%) |
7,605 |
( +33%) |
2.62 |
・株価(6/19): 82.51ドル |
・時価総額(6/19): 2,313億ドル |
・予想PER(15.12): 41.5倍 |
・予想PER(16.12): 31.5倍 |
|
|
【事業内容】
※世界最大のSNS(ソーシャル・ネットワークキング・サービス)サイト「フェイスブック」を運営しています。文章だけではなく、写真や動画の掲載も可能です。
※売上高のうち、94%を広告収入が占めます。地域別には、米国・カナダが49%、欧洲26%、アジア15%、その他10%とグローバルに展開しています。
【四半期決算の動向】
※15年1-3月期の売上高は前年同期比42%増、調整後営業利益(無形資産の償却、株式報酬や関連の税金を除く)は同30%増と好調でした。
※月次アクティブユーザーは14.4億人で前年同期比+13%、うちモバイルユーザーは12.5億人で同+24%と順調な拡大となりました。
※15年4-6月期は、売上高が前年同期比37%増、純利益が70%増が見込まれています。
【投資のポイント】
※ツイッターやリンクトインなどの不振の一因は、広告主の出稿がグーグルやフェイスブックなど大手に集中する傾向があると言われており、中でもフェイスブックは好調なようです。
※フェイスブック上で行われる友人との会話やニュースのシェア、ゲームなどから、広告ターゲットを絞るための貴重な情報を得ており、これが競争上の優位性に繋がっているようです。
※このため、ネット広告市場でのシェア拡大は今後も続く可能性が高く、業績は順調な拡大が見込まれます。バリュエーションは安くはありませんが、ネット広告銘柄に対する投資資金は当社に集中する可能性があり、株価にも上昇の余地があると考えられます。
|
図表6: フェイスブックの売上高、営業利益、営業利益率
|
ツイッター
|
銘柄コード |
|
国籍 |
米国 |
|
|
|
|
13.12 |
665 |
(+110%) |
-645 |
( +110%) |
-3.41 |
14.12 |
1,403 |
(+111%) |
-578 |
( +111%) |
-0.96 |
15.12予 |
2,219 |
(+58%) |
235 |
( +58%) |
0.34 |
16.12予 |
3,300 |
(+49%) |
492 |
( +49%) |
0.67 |
・株価(6/19): 35.86ドル |
・時価総額(6/19): 241億ドル |
・予想PER(15.12):105.5倍 |
・予想PER(16.12): 53.5倍 |
|
|
【事業内容】
※インターネット上で、「ツイート」と呼ばれる140文字以内の短文投稿を共有できる情報サービスを提供しています。15年1-3月期の月間アクティブユーザー数は、世界で3億200万人(うち米国が6,500万人、米国外が2億3600万人)です。
※広告が主な収入源です。当社の主力広告商品は、ユーザーの画面にツイートとして現れ、広告主のブランド、商品、サービスの認知推進、フォロワーの獲得、広告主サイトへの誘導などの目的で使用されます。
【四半期決算の動向】
※15年1-3月期の売上高は436百万ドルで前年同期比74%増でしたが、新しい広告商品の売上が想定以下となり、会社ガイダンスの440〜450百万ドルを下回りました。これを受けて、15年12月期のガイダンスは、売上が23.0-23.5億ドルから21.7-22.7億ドルへ、調整後EBITDAは5.50-5.70億ドルから5.10-5.35億ドルへ引き下げられました。
※15年4-6月期は、売上高が前年同期比55%増、純利益は黒字転換(前年同期の145百万ドルの赤字から31百万ドルの黒字)が見込まれています。
【投資のポイント】
※事業の収益化が進んで業績は伸びていますが、市場の期待はもっと高いところにあったと見られ、結果として足もとのPERに割高感があります。
※会社は四半期決算に合わせて広告商品の強化に向けた取り組みを発表、6月11日にはCEOの交代、6月19日にはユーザーが関心事を見つけやすくするための新たな試みを発表していますが、効果が現われるには時間がかかりそうです。
※当社の株価は、14年10-12月期の決算が予想以上となり上昇、一方、15年1-3月期は予想を下回り株価は元の位置まで戻ってきました。足もとでは14年末の水準を一時割り込んでチャートの形が悪くなっており、下値不安があると見られます。
|
図表7: ツイッターの月間アクティブユーザー数と売上高推移
*株価日足チャートは、2015/6/19時点のものです。
特集レポート一覧へ戻る