今回は、米国のグローバル企業の押し目買いについて検討してみました。昨年夏からの大幅なドル高と新興国の成長鈍化で、グローバルに展開する米企業の業績には下押し圧力がかかってきました。しかし、そのようなマクロ面の向かい風は年後半から来年に向けて緩和する見通しです。そうした局面で見直される可能性がある銘柄として、以下の5銘柄をピックアップしました。特にスリーエム、ジョンソン&ジョンソンに注目できると見ています。
銘柄 |
株価(7/2) |
52週高値 |
52週安値 |
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155.38ドル |
170.50ドル |
130.60ドル |
|
98.44ドル |
109.49ドル |
95.10ドル |
|
39.49ドル |
45.00ドル |
39.06ドル |
|
79.93ドル |
93.89ドル |
77.10ドル |
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84.38ドル |
111.46ドル |
78.19ドル |
- 「銘柄選定の根拠(基準や前提)」
- 海外売上比率が5割超のNYダウ採用銘柄で、15年上半期に株価が下落した銘柄群から、株価が下落した要因などを勘案して5銘柄を選んでいます。
グローバル企業の株価の推移 |
海外売上高比率の高いグローバル企業について、株価がどう動いてきたのかを確認してみましょう。図表1は、NYダウ構成銘柄を海外売上5割以上のグループと同5割以下のグループに分けて年初来の株価騰落率を調べたものです。
グループ平均を比べると、5割以上が1.5%下落、5割以下が0.7%下落と、さほど大きな差は見られませんでした(NYダウ全体では1.1%下落でした)。海外事業の構成比がパフォーマンスを決める決定的要因ではなかったようです。海外売上5割以上でも、iPhoneが好調のアップル、シューズ販売が好調のナイキなど、個別に好材料があるものは2桁の上昇率となりました。
しかし、赤でハイライトした、5割以上のグループで株価が下落したものの中には、個別で特に悪い話が出たわけではなく、主にドル高と新興国の減速というマクロ面の要因で株価が下がったものが含まれると考えられます。こうした銘柄について、押し目買いが適当かどうか検討してみます。
(2)では、マクロ要因の今後の影響について、(3)では、株価下落が個別要因でなかったかどうかを検討します。
図表1: ダウ銘柄の上半期騰落率(14/12/31〜15/6/30)
- ※ブルームバーグのデータをもとにSBI証券が作成
マクロ環境の最悪期は脱出へ |
まず、グローバル企業の業績を下押ししたドル高と新興国の成長鈍化について、今後の見通しを検討してみます。
図表2は、ドル指数の前年同期比上昇率の推移を示しています。上昇率が高いほど、米国外の売上・利益を目減りさせます。15年の1-3月期、4-6月期の上昇率が高く、業績に対するマイナスのインパクトが大きいことがわかります。
今後について、「6月末の水準95.49」と「3/13の高値100.33」でそれぞれ推移した場合、前年同期比の上昇率がどのようになるかを試算しています。6月末の水準ですと、上昇率はピークアウトして、3Q、4Qの業績へのインパクトは低下していくと試算できます。100.33の高値水準で推移するとした場合は、3Qが上昇率のピークになりますが、その後はインパクトが低下します。総じて、ドル高の影響は小さくなっていくと言えそうです。
一方、新興国については、図表3の通りです。これは、OECD(経済協力開発機構)が2015/6/3に発表した主要新興国の成長率見通しをグラフ化したものです。
ブラジル、ロシアは13年から14年、15年と減速が続きましたが、16年には改善が見込まれています。インドは成長率の水準が高くかつ堅調です。中国の成長率は低下が続く見通しですが、低下が加速するというわけではありません。全体として新興国経済の影響は、来年に向けて改善すると見込まれます。
以上のことから、米国のグローバル企業の業績を下押してきた2つのマクロ要因は、15年中にネガティブインパクトのピークをつけて、15年の後半から16年に向けては改善の方向と見込まれます。
図表2: ドル指数の前年同期比上昇率
- ※ブルームバーグのデータをもとにSBI証券が作成
図表3: 主要新興国のGDP成長率見通し(OECD)
- ※OECD(経済協力開発機構)のデータをもとにSBI証券が作成
株価下落の要因と投資指標を検討 |
今回はマクロ要因の改善で株価が戻る銘柄を探っていますので、(1)で取り上げた銘柄群のうち、株価下落の主因が個別材料と見られるインテルとE.I デュポンは選択から外します。
インテルの株価下落は、パソコンの売れ行きが年初の想定を下回ったことの影響が大きいと思われます。マクロ環境よりもウィンドウズの製品サイクルが強く影響していると思われます。
また、E.I デュポンは、とうもろこしの作付減少や南米での農薬需要減少、最近では高機能化学部門の切り離しを材料に株価が動いているようです。
残りの5銘柄については、株価の下落はドル高と新興国市場の減速の影響が主因である可能性が高いと見られます。
次に、図表4で投資指標について確認してみます。今回注目したいのは、PERの変化率です。足もとの業況が悪化したことを反映して、PERの水準が調整していることが理想的です。今後マクロ環境が改善してくる場合には、PERの水準が回復して、それが株価の上昇に繋がると考えられるからです。
尚、選択した5銘柄のうちキャタピラーを除く4銘柄は、S&P500配当貴族指数の構成銘柄です。同指数はS&P500指数の構成銘柄のうち、25年以上増配を続けてきた52銘柄からなります。さらに、NYダウに採用されていますので、米国を代表する優良企業群と言えるでしょう。
図表4: 検討銘柄の投資指標
コード |
銘柄名 |
現在値 |
PER |
PER |
売上高成長率 |
長期成長率 |
ROE |
---|---|---|---|---|---|---|---|
MMM |
155.4 |
19.7 |
-5.3 |
-2.1 |
9.2 |
32.4 |
|
JNJ |
98.4 |
16.7 |
-5.8 |
-5.2 |
5.0 |
22.7 |
|
KO |
39.5 |
20.2 |
-6.4 |
-2.5 |
4.8 |
22.4 |
|
CAT |
84.4 |
18.1 |
-8.3 |
-10.6 |
15.0 |
19.7 |
|
DD |
60.0 |
16.5 |
-12.5 |
-6.7 |
11.2 |
24.8 |
|
PG |
79.9 |
21.6 |
1.4 |
-8.1 |
6.7 |
16.8 |
|
INTC |
30.6 |
14.0 |
-16.8 |
-1.1 |
8.3 |
20.5 |
- 注:長期成長率は1株当り利益の成長率です。
- 当社「米国株スクリーナー」のデータから作成
注目銘柄のポイント |
銘柄名 | 業種 | 資本財 | |
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ポイント |
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銘柄名 | 業種 | 医薬品 | |
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ポイント |
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銘柄名 | 業種 | 飲料 | |
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ポイント |
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銘柄名 | 業種 | 家庭用品・パーソナル用品 | |
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ポイント |
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銘柄名 | 業種 | 資本財 | |
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ポイント |
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※株価日足チャートは、2015/7/2時点のものです。