2015年の米国株式市場で大幅に上昇して注目を集め、最近は「FANG(ファング)」とまとめて呼ばれることも多い、フェイスブック(F)、アマゾン ドットコム(A)、ネットフリックス(N)、アルファベット(旧グーグル)(G)ですが、四半期決算を終えて業績、株価ともに大きな動きが出ていますので、再度ご報告いたします。
業績が前四半期から加速、市場予想も上回ったフェイスブックとアルファベットは引き続き活躍が期待されます。一方、アマゾンとネットフリックスは、昨年の株価上昇が大きかったこともあり、当面は足踏みとなりそうです。しかし、事業展開は順調と考えられますので、引き続き注目していく価値があるでしょう。また、中国のネット流通市場でトップシェアをもつアリババも併せてご紹介しています。
図表1:言及銘柄リスト
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
|
16年も引き続き注目できるFANG銘柄
|
2015年の米株式市場は市場平均のS&P500指数が前年比横ばい(-0.7%)となる中、最近は「FANG」(ファング)としてまとめて呼ばれることも多い、フェイスブック(F)、アマゾン ドットコム(A)、ネットフリックス(N)、アルファベット(旧グーグル)(G)の株価上昇が目立ちました。
1/6掲載の特集レポート「FANGを点検!フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、アルファベットの2016年はどうなる?」で、各社の16年見通しについてご報告しましたが、15年10-12月期決算の発表を終えて、業績動向、株価ともに大きな変化が見られました。
そこで、1ヵ月足らずではありますが、株式市場で注目度の高いFANG銘柄について、足元の状況を再度アップデートして、今後の見通しについて考えてみたいと思います。
まず、各社の株価動向ですが、図表2の通りです。年初来の株価騰落率は2/2時点で、フェイスブックが9.5%、アルファベットが0.8%の上昇、一方、昨年の上昇率が大きかったアマゾンは18.3%、ネットフリックスは20.0%の大幅下落となっています。
S&P500指数が年初来6.9%下落していますので、フェイスブック、アルファベットはすでに大きくアウトパフォームを始めたことになります。
年末から年明けにかけて世界経済は下方修正気味であり、企業業績も市場予想は上回っているものの、前年同期比ではマイナスと引き続き停滞しています。
このような投資環境下では、15年同様に個別要因で高成長を遂げる企業への注目は高まり易いとみられます。FANG銘柄は、16年も引き続き注目できるでしょう。
図表2:16年に入って明暗が分かれたFANG銘柄の株価
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
|
FANG銘柄の四半期決算と今後の見通し
|
各社の15年10-12月期の決算概要、各社に対する見方、決算後のアナリストの投資判断の動向をまとめています。
業績が前四半期から加速、市場予想も上回ったフェイスブックとアルファベットは引き続き活躍が期待されます。
一方、アマゾンとネットフリックスは、昨年の株価上昇が大きかったこともあり、当面は足踏みとなりそうです。しかし、事業展開は順調に進んでいると考えられますので、引き続き注目していく価値があるでしょう。
尚、各社の基本的な注目点、昨年の株価上昇要因、EPSの動きなどについては、1/6掲載の特集レポート「FANGを点検!フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、アルファベットの2016年はどうなる?」をご参照ください。
また、今回は中国のネット流通市場でトップシェアをもつアリババも併せてご紹介しています。
銘柄コード |
|
業種 |
インターネット SNS |
|
|
|
|
|
売上(億ドル) |
58.4 |
52% |
9% |
41% |
EPS(ドル) |
0.79 |
46% |
17% |
33% |
株価(2/2) : 114.61ドル |
予想PER(16.12期): 36.7倍 |
|
- 15年10-12月期は売上・利益とも増加率が7-9月期から大幅に加速し、市場予想も大幅に上回り、非常に好調な決算でした。月間アクティブユーザー数は、15.9億人で前年比14%増(7-9月期も14%増)と順調、ユーザー当たり平均収入は3.73ドルで33%増(7-9月期は24%増)と加速しました(図表3)。
- 主力の広告収入が57%伸びたうち、広告視聴数が29%増、広告当たり価格が21%増と、価格上昇の効果も大きくなっています。広告メディアとしての価値が上がっているということでしょう。
- 7-9月期までは研究開発費が嵩むなどで営業利益の伸びが抑制されていましたが、10-12月期は前年同期比2.3倍、営業利益率も44%(7-9月期は32%)に回復しています。16年の営業費用の伸びは30-40%と、56%増となった15年から鈍化するとのガイダンスで、売上の伸びに沿った利益の伸びが期待できます。
- SNSビジネスの魅力は、プラットフォームを提供して軌道に乗れば、後は同社の場合で10億人を超える加入者が日夜コンテンツを「タダで」作成してメディアとしての魅力を高めてくれることです。そのような好循環に入ってきていると見られます。引き続き良好なパフォーマンスが期待できるでしょう。
- 決算後に出たアナリストの投資判断は、圧倒的に「買い」が多く、目標株価は130〜140ドルに引き上げられています。
|
図表3:ユーザー当たり収入の推移
|
銘柄コード |
|
業種 |
インターネット ネット検索 |
|
|
|
|
|
売上(億ドル) |
173 |
19% |
2% |
15% |
EPS(ドル) |
8.67 |
26% |
7% |
16% |
株価(2/2) : 764.65ドル |
予想PER(16.12期): 22.3倍 |
|
- 売上が市場予想を上回ったのは数量が要因で、モバイル検索、YouTube、プログラム広告が好調でした。広告のクリック数が前年同期比31%増と、市場予想の同22%増を上回りました。一方、クリック当たり単価は同13%減で、市場予想の6%減を上回っています。
- 今回初めて、自動運転自動車、ロボット、家庭のIoTなどのベンチャー事業が「その他の賭け」(other bets)としてグーグル事業(検索広告、ディスプレイ広告、マップ、YouTube、アンドロイドなど)から分別開示されました。15年の「その他の賭け」の売上は4.5億ドル、営業損失は31億ドルでした。
- 「その他の賭け」で売上に貢献しているのは、Nest(サーモスタット)、グーグルファイバー(ブロードバンドサービス)、ライフサイエンスのVerily社などです。同事業の赤字水準、その増加ペースとも許容できる範囲との受け止めが多いようで、株主からは一安心と言えそうです。
- 2/2には時価総額でアップルを抜いて最大企業となっています。バリュエーションはPER22倍と成長の割りには低く、評価できる余地が大きいと考えられます。
- 決算後に出たアナリストの投資判断は、「買い」が圧倒的で、目標株価を5〜10%程度引き上げるものが多くなっています。目標株価の平均は928ドルで、2/2の終値(764.65ドル)から2割強高い水準です。
|
図表4:グーグル事業とその他の賭け事業の営業利益(赤、右軸)
|
銘柄コード |
|
業種 |
インターネット ネット通販 |
|
|
|
|
|
売上(億ドル) |
357 |
22% |
0% |
23% |
EPS(ドル) |
1.00 |
122% |
-36% |
黒字転換 |
株価(2/2) : 552.10ドル |
予想PER(16.12期): 117.2倍 |
|
- 売上高の伸び率、営業利益率改善のモメンタムとも、7-9月期を下回りました。為替の影響を除いた売上の伸び率は26%で、7-9月期の30%を下回りました。北米の伸び率が28%から24%に低下していることが主因です。
- 営業利益率は3.1%でした。前年同期の2.0%からの改善幅は1.1%ポイントで、7-9月期の改善幅4.2%ポイント(-2.6%→1.6%)を下回りました。部門別の営業利益は、引き続き北米およびAWSが牽引して利益が増加しています。AWSの増収率は69%増(7-9月期は78%増)の高水準を維持しました。
- EPSは、市場予想の1.55ドルを大幅に下回る1.00ドルでした。利益が予想を下回った要因は、同社の販売管理費の44%(15年10-12月期)を占める配送コスト(fulfillment cost)の伸び率が7-9月期の22%増から33%増となったことと見られ、「アマゾン プライム」会員に対する無料配送やスピードアップのための負担が重くなっていると考えられます(図表5)。
- 「アマゾン プライム」会員に対するサービスは顧客囲い込みのための投資と捉えれば、利益が予想を下回ったことも全面的にネガティブということではないでしょう。ただ、株価は昨年大幅上昇した後だけに、足踏みとなるのは仕方ないと見られます。
- 決算後に出たアナリストの投資判断は、「買い」を維持するものの、目標株価は維持か引き下げが多く、目標株価の平均は748ドルに従来より若干下がりました。
|
図表5:主要な営業費用項目の推移
|
銘柄コード |
|
業種 |
インターネット オンデマンド動画 |
|
|
|
|
|
売上(億ドル) |
18 |
23% |
0% |
23% |
EPS(ドル) |
0.07 |
-32% |
233% |
-49% |
株価(2/2) : 91.49ドル |
予想PER(16.12期): 373.4倍 |
|
- 10-12月期の加入者が559万人増と、会社予想の515万人増、前年同期の433万人増を上回ったことがポジティブです。増加を牽引したのは地域拡大中の海外で404万人増でした。米国は165万人増で、前年同期の190万人増を下回っていますが、4-6月期の90万人増、7-9月期の88万人増を上回っています。15年末の加入者数は7,476万人です。16年1-3月期には、610万人の加入者増(うち米国は175万人、海外は435万人)を見込んでいます。
- 売上と売上原価(コンテンツ調達費)がともに前年同期比23%増で、粗利は同1億ドル増えていますが、その他の営業費用(マーケティング、テクノロジー、管理費など)で相殺して、営業利益は同8%減でした。営業利益率は3.3%です。部門利益(売上から売上原価とマーケティング費用を差し引いたもの)は、米国が前年同期比48%増、海外は地域を拡大中のため赤字が拡大しています。
- オリジナルの番組制作は15年の450時間から16年は600時間への増加を計画しています。オンデマンド配信の世界チャンピオンの地位を確保するため、地域展開とコンテンツの充実を優先しているようで、当面利益を大きく出さない模様です。アマゾンに似た戦略と言えるでしょう。17年12月期の予想EPS1.17ドルでは、PERは78.2倍です。
- 決算後に出たアナリストの投資判断は、従来からの分布通り「中立」と「買い」が拮抗しています。目標株価の平均は125ドルです。
|
図表6:国内外別の加入者増加数
|
銘柄コード |
|
業種 |
インターネット 中国のネット通販 |
|
|
|
|
|
売上(億RMB) |
345 |
32% |
4% |
32% |
EPS(人民元) |
6.43 |
27% |
11% |
30% |
株価(2/2) : 65.09ドル |
予想PER(16.12期): 24.7倍 |
|
- 10-12月期決算は、市場予想を上回り好調を持続しています。中国のeコマース総取扱高(GMV)は7-9月期の28%増から23%増に伸びが低下しましたが、マネタイゼーション(同社売上/総取引高の比率)が2.70%から2.98%に改善して、売上の伸びが維持されました。
- 総取扱高に占めるモバイルの比率は、前年同期の42%から68%へ大幅に高まり、モバイルへの移行も順調に進んでいます。また、注力しているクラウド事業の売上は、8.2億人民元(1.3億ドル)で売上の2%を占め、前年同期比2.3倍に増えています。
- 中国経済減速の影響が懸念されていますが、同社副会長は「中国の国内総生産(GDP)に占める消費は拡大しており、業績にプラスとなっているほか、インターネットで買い物を済ませる人も劇的に増えている。中国経済全般の動向がアリババの業績に及ぼす影響はそれほど大きくならない。」との見方を示しています。
- 各社アナリストの投資判断は、買いの格付けを維持して、目標株価を若干引き下げるものが多くなっています。目標株価の平均は従来から若干低下して93ドルになっています。
|
図表7:四半期の売上と営業利益の推移
|
注:アリババのPERは、人民元建てのEPSを6.5798人民元/ドル(2/2)で換算しています。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。