トランプ氏の大統領就任式が1/20(金)に迫っています。「就任演説」では、同氏がこれまで主張してきたインフラ投資、法人税減税、規制緩和などの政策が再度強調され、「トランプ・ラリー」の第2幕に繋がる可能性が高いと見られます。そこで今回は、これに乗るための関連銘柄を考えてみました。
図表1:注目銘柄のリスト
銘柄 | 株価(1/17) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
バンクオブアメリカ(BAC) | 22.05ドル | 23.41ドル | 10.99ドル |
ユナイテッドレンタルズURI) | 107.23ドル | 111.81ドル | 41.90ドル |
iシェアーズ ラッセル 2000 ETF(IWM) | 134.41ドル | 138.82ドル | 93.64ドル |
デボン エナジー(DVN) | 46.48ドル | 50.69ドル | 18.07ドル |
シンタス(CTAS) | 113.67ドル | 122.21ドル | 80.00ドル |
WWグレインジャー(GWW) | 240.68ドル | 240.74ドル | 176.85ドル |
ローパーテクノロジーズ(ROP) | 186.02ドル | 190.01ドル | 155.79ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
トランプ相場は第2幕へ! |
トランプ氏の大統領就任式が1/20(金)に迫っています。
トランプ氏の発言は周辺の国々でさまざまな波紋を呼び、金融市場はかたずをのんで見守っていますが、「米国第一主義」が徹底しているため、最も安心して見ていられるのは「米ドル」と「米国株」だと言えそうです。
1/16(月)に発表されたIMFの最新経済見通しでも、世界の成長率は17年が3.4%、18年が3.6%と昨年10月時点の予想から据え置かれましたが、米国については減税やインフラ投資策が景気を押し上げるとして17年は2.2%→2.3%へ、18年は2.1%から2.5%へ上方修正されています。
また、1/13(金)から本格化した10-12月期決算は、S&P500指数採用企業のEPSは前年同期比6%増が見込まれています。先陣を切った大手銀行は純利益が大幅に増加し、預金額、貸出額など事業基盤の拡大も順調で良好でした。
S&P500指数はトランプ氏の大統領選勝利を受けて11/8(火)から12月半ばにかけて約6%上昇して、その後はもみ合いを続けています(図表2)。25日移動平均線の上昇を待って上昇過熱感を冷まし、トランプ相場の第2幕に備えているように見えます。
そこで今回は「トランプ相場第2幕」に乗るための銘柄を検討しています。
図表2:上昇過熱感を冷まして一段高へ!? (S&P500指数の日足、6ヵ月)
- ※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
トランプ相場第2幕に乗るにはコレ!? |
【大手銀行株】
・トランプ氏が打ち出した法人税減税やインフラ投資が米景気を押し上げる見込みで、長期金利の上昇による利ざや拡大で収益改善が見込まれます。また、共和党がドッド=フランク法を批判して金融規制の緩和が期待されていることから、トランプ氏の政策で最も恩恵が大きいセクターと考えられます。足もとで発表が進む決算も好調で、現在のPER水準は低すぎるのでは、との見方も出ています。
・銘柄の考え方として、長期金利上昇の恩恵が大きいのは、商業銀行業務の比率が高いJPモルガンチェース(JPM)、バンクオブアメリカ(BAC)、ウェルズファーゴ(WFC)でしょう。一方、金融規制緩和の恩恵が大きいのは、ゴールドマンサックス(GS)、モルガンスタンレー(MS)などの投資銀行と考えられます。金融規制緩和には立法に時間がかかる可能性があると見られ、当面は商業銀行中心の銀行群が選好されやすいのではないでしょうか。
図表3:バンクオブアメリカ(日足、1年)
- ※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
【インフラ投資関連】
・トランプ氏は年100億ドル(10年間で1兆ドル)のインフラ投資を提唱し、「米国の崩壊しつつあるインフラを経済成長加速と生産性向上の絶好の機会に変えよう」と呼びかけています。
・インフラ投資の必要性はこれまでも言われて来ましたが、「規制改革と不必要なお役所仕事を排すことで、プロジェクトの進行を早めて低コストで行うことが重要だ」としています。インフラ分野として、交通、上水道、送配電網、通信、セキュリティなどが言及されています。また、インフラ投資には米国製の鉄鋼を使おう、としています。
・銘柄は、建機レンタルのユナイテッドレンタルズ(URI)、建設骨材のマーチンマリエッタ(MLM)、バルカンマテリアルズ(VMC)、鉄鋼のニューコア(NUE)などが関連銘柄の中心と見られます。バリュエーション面から、予想PERが12.9倍と低く買いやすいのはURIと言えそうです。
図表4:ユナイテッドレンタルズ(日足、1年)
- ※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
【中小型株のETF】
・トランプ氏は「法人税を35%から15%に下げる」方針を打ち出しています。ここまで思い切った税率が実現するとは考えにくいものの、20〜25%程度への引き下げの可能性はありそうです。
・幅広い企業に恩恵が期待されますが、米国事業の構成比が高い中小型株への恩恵が特に大きいと考えられます。一方で、マクロ要因を理由に海外の中小型株を個別に選ぶのはリスクを伴いますので、幅広く分散された中小型株のETFに投資するのが良いと考えられます。米国の代表的な中小型株指数「ラッセル2000」への連動を目指すETF、iシェアーズ ラッセル 2000 ETF(IWM)が適当ではないでしょうか。
図表5:iシェアーズ ラッセル 2000 ETF(IWM)(日足、1年)
- ※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
【エネルギー関連銘柄】
・トランプ氏は、「責任を果たせるエネルギー生産に対して障害になるものは取り除く。」「エネルギー生産を促す、パイプラインや石炭の輸出施設などの建設を進める。」「エネルギー生産の増加で、雇用を増やし、OPEC(石油輸出国機構)や米国に敵対的な国の石油からの独立を目指す。」として、シェール関連事業者に対する規制緩和を打ち出しています。
・環境規制の緩和が実現すると、シェールオイルが生産できる地域の拡大やシェールオイルの生産コスト削減に繋がるため、オイルサービスを含め、業界の幅広い企業に恩恵が期待できるでしょう。シェールオイルの独立系企業で、オクラホマ州のSTACK地域、デラウェア盆地、イーグルフォードなどで操業している、デボンエナジー(DVN)に注目できるでしょう。
図表6:デボンエナジー(日足、1年)
- ※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
製造業の米国回帰で恩恵を受けるのは? |
トランプ氏を大統領に導いたのは米中西部から北東部にかけての「ラストベルト」(さびついた工業地帯)と言われ、実際トランプ氏は強引な口先介入によって製造業の国内回帰を促しています。「製造業の米国回帰」も投資テーマとして重要と見られ、これらに製品・サービスを提供している企業への恩恵が期待されます。
米国の産業景気はドル高の影響が一巡したと見られ、企業の景況感を示すISM製造業景況指数は昨年夏場より改善しつつあります。ここでトランプ氏の政策による後押しがあれば、国内の産業景気は改善傾向が続くことが期待できるでしょう。そこでスクリーニングによって関連銘柄を探してみました。
まず、当社WEBサイトの「米国株スクリーナー」を使って、「産業&商業サービス」「工業品」「産業コングロマリット」の3業種に属する106銘柄について、(1)実績ROA(総資産利益率)5%以上、(2)予想売上高純利益率5%以上、(3)時価総額30億ドル以上を満たす49銘柄に絞りました。
さらに、主に製造業を対象に幅広く製品やサービスを提供していると見られる企業で米国売上高が60%以上の7社を図表7にリストアップしています。いずれの企業も過去3ヵ月で目標株価が引き上げられており、足もとの米国の景気改善、トランプ氏の政策による景気浮揚の恩恵が期待されているようです。特に事業の素質が良さそうな以下の3社を選んで注目点をご紹介いたします。
シンタス(CTAS)
・68年に家族による洗濯業で創業、90万社を顧客企業に持つユニフォーム業界の最大手になった企業です。ユニフォームのデザイン、製造・販売、クリーニングを主力に、玄関マット、洗面所の消耗品、セキュリティなど企業回りの様々なサービスを手掛けることで成長しています。
・16年9-11月期決算は、売上が前年同期比6.4%増で、うち5.7%ポイントをオーガニック成長(買収や為替の影響を除く成長)が占めます。営業利益は1.3%増にとどまりましたが、ITシステム投資による販売管理費の一時的増加が要因です。粗利率は43.3%から44.1%へ13四半期連続で拡大、CEOは我々の事業機会の大きさを示しているとコメントしています。
WWグレインジャー(GWW)
・商業、工業、工事請負業者向けに、メンテナンス、修理、作業用の資材用品(間接資材)を販売、世界で約200万社を顧客とします。日本のMonotaRO(3064)は同社の子会社で、2000年に同社と住友商事の出資で設立されました。また、同社は25年以上増配を続ける企業からなる「S&P500配当貴族指数」に選ばれています。
・1品単価が低いために効率化しにくい間接資材の購入・管理を同社で一括管理することにより、ユーザーは購入業務負担の軽減と経費削減が期待できます。そのようなメリットを背景に、安定的に成長しているサービスです。製造業の景況浮揚やインフラ投資の拡大を幅広く取り込むことができる企業と考えられます。
ローパーテクノロジーズ(ROP)
・工業機器の幅広い分野でのニッチ市場を狙ってリーダーのポジションを取る戦略により、03年から15年に営業利益の年平均成長率で21%を達成している成長企業です。顧客産業は、ヘルスケア、運輸、食品、エネルギー、水道などです。S&P500指数に採用されています。
・16年7-9月期の売上は前年同期比6.9%増で、オーガニック成長が1.9%ポイント、買収による成長が5.9%ポイント、為替の影響が-0.6%ポイントでした。EPSは3%増加しています。産業景気の低迷を受けてオーガニック成長が低下してきましたが、米国の産業景気が浮揚すれば恩恵が期待できるでしょう。
図表7:製造業の米国回帰で注目できる企業群
- 注:目標株価は、Bloombergが集計したアナリストによる目標株価の平均によります。
- ※当社WEBサイト、BloombergデータもとにSBI証券が作成
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。