昨年末から年初にかけて118円/ドル台をつけたドル円相場が、足もとでは111円/ドル前後で推移しています。今年に入って円高が進んだ要因は、トランプ相場の反動という面が大きかったと見られますが、かなり調整は進んだと言えるのではないでしょうか。そうだとすれば、足もとの「高い円」を使って外貨資産を取得するチャンスではないでしょうか?検討してみましょう。
足もとの円高は外貨資産を買うチャンス!? |
年初来の円高・ドル安は「いいところまで来ているのではないか」と考えられる理由として、以下が挙げられます。
【1】ドル円相場は「トランプ相場」による円安から半値押し、米10年国債利回りも半値押しを示現
【2】今年最大級のリスク要因とされた、フランス大統領選挙は「メインシナリオ」で進みつつある
【3】トランプ政権の経済政策具体化への期待
【1】はテクニカルなアプローチですが、トランプラリーのスタート102円/ドルから118円/ドルへの円安ドル高の半値押しは110円と計算されますが、現在ちょうどその辺りで推移しています(図表1)。
米10年国債利回りでも、同様に1.8%から2.6%までの上昇に対する半値押しの2.2%を先日示現して、若干反発したところです(図表2)。トランプ政権の経済政策による米景気の浮揚という相場のテーマが維持されるとすれば、円高・ドル安は反転に向かうと期待できるのではないでしょうか。
【2】のフランス大統領選挙は、4/23(日)の第1回目投票の結果、5/7(日)に中道のマクロン氏と極右のルペン氏による決選投票となります。世論調査ではマクロン氏のリードが大きく、「ユーロ崩壊」に対する懸念は後退すると見込まれます。
「次のリスク要因として、6/8(木)のイギリス総選挙があるのでは?」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、「ハードブレグジット」かどうかは世界のGDPの3.5%を占めるに過ぎないイギリスの問題でしかなく、世界を揺るがす案件ではありません。
昨年、EU離脱の国民投票が世界の注目を集めたのも、離脱に追随する国が出てユーロ圏の崩壊に繋がる可能性が懸念されたためです。これは、先日のオランダの総選挙、フランス大統領選挙の1回目投票で食い止めたと考えてよいでしょう。
残る問題は北朝鮮に絡む地政学リスクですが、万が一軍事衝突があってリスクオフになるとしても、一時的と考えられるでしょう。北朝鮮の15年のGDPは、韓国銀行の推定で34.5兆ウォン(約3.3兆円)に過ぎません。これを要因として持続的な円高となる可能性は小さいと言えるのではないでしょうか。
【3】については、トランプ大統領が打ち出した減税やインフラ投資などの経済政策がなかなか実現せず、市場の期待がしぼんできたことも、ここまでドル安円高となった大きな要因です。しかし、税制改革案についてはここにきて進展が見られます。その他政策についても、市場の期待を再度押し上げる効果が期待できるでしょう。
以上、ここから円高になるよりは、円安に向かう可能性のほうが高いと考えられ、外貨資産を購入するチャンスと見られます。そこで、(2)では国際分散投資の部品となるETFを、(3)ではグローバルで時価総額上位銘柄をご紹介いたします。
図表1:ドル円相場は半値押しから反発の兆し
- ※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。
図表2:米10年国債利回りも半値押しを示現
- ※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。
国際分散投資の部品になるETF! |
日本の公的年金のうち、「厚生年金」と「国民年金」の管理・運用を行う「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」は、基本ポートフォリオを公表していますが、外国資産への投資に4割が充てられています(図表4)。
資産運用のプロが知恵を結集して決めた運用の大枠ですので、日本の個人投資家にも参考となるでしょう。そこで、国際分散投資の部品となるようなETFをご紹介いたします。
※【 】内は、4/24(月)時点の純資産額です。
外国株式
◯グローバル株式
外国株のポジションを取るための、代表的なETFです。
・バンガード トータル ワールド ストックETF(VT)【66億ドル】・・・「FTSE グローバル・オールキャップ・インデックス」への連動を目指します。
・iシェアーズ MSCI ACWI ETF(ACWI)【64億ドル】・・・「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」への連動を目指します。
配当に着目したものもあります。
・ウィズダムツリーグローバルハイディビデンドファンド(DEW)【49億ドル】・・・ 高配当企業について、「配当額」でウェイト付けした グローバル指数への連動を目指します。
グローバルでなくとも、先進国の大企業中心でよいという場合には、これがお勧めです。
・iシェアーズ グローバル 100 ETF(IOO)【83億ドル】・・・グローバルで100の大型企業に投資するETFです。
既に日本株の投資信託を保有しているなどで重複が気になる場合には、これがお勧めです。
・iシェアーズ MSCI コクサイ ETF(TOK)【59億ドル】・・・日本を除く先進国の株に投資します。
◯米国株式
世界の時価総額の約4割を占め、魅力的な企業も多い米国株に投資するETFです。
・iシェアーズ S&P 500 ETF(IVV)【239億ドル】・・・S&P500指数への連動を目指します。
・SPDR S&P 500 ETF トラスト(SPY)【235億ドル】・・・ 〃
米国株式で配当に着目したものです。
・バンガード 米国増配株式ETF(VIG)【91億ドル】・・・10年以上連続増配の企業に投資します。
・SPDR S&P 米国高配当株式 ETF(SDY)【88億ドル】・・・S&P1500指数採用企業の配当利回りが高い60社に投資します。
・iシェアーズ 米国優先株式 ETF(PFF)【39億ドル】・・・普通株に比べて配当金を優先的に受け取る権利のある「優先株」に投資します。
◯新興国株式
新興国株式に投資するための代表的なETFです。
・SPDR S&P 新興国株式 ETF(GMM)【64億ドル】・・・新興国株式に時価総額ウェイトで幅広く投資します。
・iシェアーズ コア MSCI エマージング ETF(IEMG)【48億ドル】・・・ 〃
外国債券
◯グローバル債券
・iシェアーズ 世界国債(除く米国)ETF(IGOV)【93億ドル】・・・米国を除く先進国の国債に投資します。
◯米国債券
・バンガード 超長期米国債 ETF(EDV)【113億ドル】・・・ 米国の超長期国債に投資します。
・iシェアーズ コア 米国総合債券市場 ETF(AGG)【109億ドル】・・・ 米国の幅広い投資適格債券市場のパフォーマンスへの連動を目指します。
◯新興国債券
・iシェアーズ JPM USDエマージング債券 ETF(EMB)【114億ドル】・・・ ドル建ての新興国国債に投資します。
・iシェアーズ 現地通貨エマージング債券 ETF(LEMB)【46億ドル】・・・ 現地通貨建ての新興国国債に投資します。
図表3:年金基金の運用では、4割を外国資産に充てる
- 注:年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の「基本ポートフォリオの考え方」からです。
- ※GPIF資料をもとにSBI証券が作成
図表4:バンガード トータル ワールド ストックETFの価格推移(日足、1年)
- ※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表5:iシェアーズ 世界国債(除く米国)ETFの価格推移(日足、1年)
- ※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
時価総額上位銘柄から選ぶならコレ!? |
円高局面を利用して投資ポートフォリオのコアになるような外国株式を買うのも良いでしょう。
図表6は世界の時価総額上位30銘柄のリストです。ここから、足もとでパフォーマンス好調のテクノロジー企業を選んで(オレンジ色でハイライト)、投資のポイントをご紹介いたします。
・アップル(AAPL)・・・「iPhone8」の発売を業界観測で本年9月に控えています。ハードウェア企業のPERは一般に低く評価される傾向がありますが、「iTunes」などによりサービス企業として評価されることで、PERが上昇していくか注目されます。
・アルファベット(GOOG)・・・ネット検索のグローバルシェアが6 割を超えます。収益の牽引役となっている「YouTube」で、人を不快にする動画にも広告が掲載されることが問題となっています。解決のメドが立つか注目されます。
・マイクロソフト(MSFT)・・・パソコンのOS(基本ソフト)で8割以上のシェアを有します。ソフトウェアの「オフィス」、企業向けクラウドプラットフォーム「Azure」の好調持続に加え、パソコン販売台数の落ち込み緩和により「Windows」売上の伸び率の加速が期待されます。
・アマゾンドットコム(AMZN)・・・ドミナント戦略が進むネット通販に加えクラウドサービスが収益の柱に育ってきました。インターネットTVのグローバル展開や音声アシスタント「Alexa」が消費者周りの機器での採用が増えていることにも注目できます。
・フェイスブック(FB)・・・SNSなど世界のオンラインコミュニティ(中国を除く)で圧倒的なシェアを保有します。「フェイスブック」での動画視聴の増加に加え、写真共有サイト「インスタグラム」などの収益化進展が業績を牽引します。
・テンセントホールディングス(00700)・・・インスタントメッセンジャーの「QQ」、対話アプリの「ウィーチャット(微信)」などを擁する中国のオンラインコミュニティの覇者です。中国のネット市場はグローバル市場と切り離され、米国企業と競争せずに成長できています。
・アリババグループ(BABA)・・・中国のeコマース市場は米国以上に進んでおり、世界で最も社会に浸透していると見られますが、その市場でトップ企業として君臨します。ネット動画への投資も進めています。
・サムスン電子(005930)・・・半導体など電子デバイスの収益改善で業績好調です。成長が期待される有機ELディスプレイではスマホ向けをほぼ独占しており、スマホでライバルのアップルにも供給します。
・ビザ(V)・・・カードによる電子決済の市場は、先進国ではeコマースの浸透、新興国では現金取引からのシフトにより、構造的な成長要因を有します。その成長市場をマスターカードと二分しているため、安定的かつ高い成長の継続が期待されます。
図表6:世界の時価総額上位30銘柄
- 注:ブルームバーグワールドインデックスの構成銘柄(5073銘柄)にアリババグループを加えてランキングしています。銘柄名の「*」は当社の取り扱いがないことを示します。2017/4/25時点のデータです。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。