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株式投資家必見!?PERを語り尽くす!

2018/02/07
投資情報部 榮 聡

今回は株式に投資する際の株価指標として重要な「PER(株価収益率)」についてです。配当利回り、PBR(株価純資産倍率)などさまざまな株価指標がありますが、PERはその中でも特に重要で、中心的なものです。現在の市場で注目を集める「金利とPERの関係」などPERの意味、業種によるPERの違いとその背景、米国市場で特徴的なPERの銘柄についてお話いたします。

図表1:米国市場でPERに特徴がある銘柄

銘柄 株価(1/30) 52週高値 52週安値
ネットフリックス(NFLX) 265.72ドル 286.81ドル 138.26ドル
マイクロン テクノロジー(MU) 43.88ドル 49.89ドル 22.64ドル
ビザ A(V) 119.97ドル 126.88ドル 84.88ドル
ゼネラル モーターズ(GM) 41.86ドル 46.76ドル 31.92ドル
アップル(AAPL) 163.03ドル 180.10ドル 128.90ドル
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
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PERの意味を掘り下げる

PER(株価収益率)は「株価÷EPS(1株当たり利益)」で計算される株価指標です。

基本的には、「株価がEPSの何倍まで買われているかにより株価の割安・割安を探る株価指標」で、「成長性が高い企業のPERは高くなる」という理解で良いでしょう。ただ、PERは奥が深く、今回はもう少し掘り下げて考えてみましょう。

◯PERは意味のある「実質的な株価」
株式投資を考える上で、株価の絶対水準にはさほど深い意味はありません。というのは、発行済株式数が倍であれば、株価は半値になるからです。一方、利益に対して何倍まで買っているかという「PER」は、意味のある「実質的な株価」ということもできるでしょう。

実際、プロのアナリストやファンドマネージャーは絶対的な株価でなく、PERで話をすることがよくあります。ある銘柄の投資戦略として「現在15倍だが、16倍までで買いポジションを作り、20倍を目標に持続しよう。」などと言っているのです。

◯株価の動きはEPSとPERに分解できる
「株価=EPS×PER」と、株価はEPSとPERに分解することができます。株価が大きく変動したときに、そのうちいくらがEPSで変動し、いくらがPERで変動したのか、という分析は有用なことが多いです。

というのは、EPSは経済指標で言うと「ハードデータ」に近く、PERは市場参加者の判断に影響を受けるため、「ソフトデータ」に近いのです。つまり、EPSで動いた部分の信頼性は高く、PERで動いた部分は、場の判断が変わると簡単に変化する可能性があると言えます。

ですから、株価上昇の多くの部分がEPSの上昇で説明できる銘柄のほうが、株価上昇の多くの部分がPERの上昇で説明される銘柄よりも、株価の安定性が高いと判断することができます。

◯PERを動かす要因
PERが変動する要因は何なのでしょうか?これを考えるために図表2が役立つと思われます。

B式は、株価は将来の配当を現在価値に割り引いたものになるという「配当割引モデル」を単純化して、長期的には配当はEPSに等しいと考えて、「配当」を「EPS」に置き換えたものです。特殊な前提を加えた場合にのみ成り立つもので、大雑把にこんな関係があるという程度でご理解ください。

ここでAB両式を比べると、PERは1/(割引率 − EPS成長率)に相当するものと言えそうです。例えば、割引率が10%でEPS成長率が4%の場合、1÷(10%-4%)で、PERは16.6倍と計算できるという具合です。

この式の「割引率」が、金利水準に関係しています。金利が上昇すると「割引率」は上昇し、分母にある数字ですから、PERは低下することになります。

また、「EPS成長率」も分母にありますが、マイナスの符号がついているため、成長率が高いと分母が小さくなり、PERは高くなるという関係があります。

つまり、成長率の高まりはPERを高め、金利の高まりはPERを下げる、というふうにPERの変動要因になります。

現在の米国市場では、2/2(金)、2/5(月)と急落したきっかけとして長期金利の上昇が取りざたされています。これはPERの水準が金利に影響を受ける実例と言えるでしょう。そこで図表3は、S&P500指数と米10年国債利回りの関係を過去15年間にわたって見たものです。

長期金利が上昇する局面ではPERは低下し、長期金利が低下する局面ではPERが上昇するというのが基本的な関係です。ただ、リーマンショックの08年から、その後遺症が残った13年にかけては、この関係は崩れていました。

しかし、経済の状態が安定していた04年〜07年、また、14年以降では概ねこの関係性が成立していることが確認できます。このため、現在の株式市場は、長期金利の動向に非常に神経質になっているのです。

10年国債利回りが上昇を続け、3%を超えるような動きとなると、米国株の調整は続く可能性があります。一方、2/2(金)に付けた2.84%で上昇一服となるのであれば、急落した株価も次第に落ち着いてくると想定されます。

図表2:PERの意味は?

  • ※各種資料をもとにSBI証券が作成

図表3:米国株のPERと米10年国債利回りの関係

  • 注:月足で、18年2月は2/5(月)のデータによります。
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
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PERが高い業種と低い業種とその背景

株式投資の経験のある方は、業種により、銘柄により、PERの水準は大きく異なっていることにお気づきでしょう。業種や個別銘柄のPERがどのように決まるのか、探ってみましょう。

PERの水準を決める大原則は、以下の2つと考えられます。
(1)利益の成長性が高いほどPERは高くなる
(2)利益の安定性が高いほどPERは高くなる

(1)は直感的にもわかりやすいでしょう。例えば、以下のようにEPSが年率5%ずつ増えると予想されている会社と同10%ずつ増えると予想されている会社があるとします。

A社:EPSが年率5%ずつ増加  100円→105円→110円→116円→122円→128円
B社:EPSが年率10%ずつ増加 100円→110円→121円→133円→146円→161円

5年目以降の成長率は両社とも同じ水準に落ち着くとして、仮に5年後の予想PERを15倍とすると、A社の株価は128円×15倍の1,920円で、1年目の予想EPSに対して予想PERは19.2倍となります。一方、B社の株価は161円×15倍の2,415円で、1年目の予想EPSに対しては、22.0倍となります。

5%と10%の成長率の差が、19.2倍と22.0倍の予想PERの差になることがお分かりいただけるでしょう。

(2)は、直感的には理解しにくい面があるかもしれません。

図表4の通り、1年後のEPSが100円になる確率が80%、90円または110円になる確率が10%のC社と、同じく100円になる確率が40%、70円または130円になる確率が30%のD社があるとします。

両社のEPSの「期待値」は100円で同じですが、どちらに魅力を感じるでしょうか?130円になる可能性があるならということでD社を好む方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、株式市場では平均的には、利益の安定性が高いC社のほうを高く評価し、つまり、D社よりもC社のPERのほうが高くなる傾向があるのです。これは、株式市場が「変動性の高さを嫌い、変動性が高いものに対してはペナルティを課すから」という説明になります。

以上を踏まえて、実際の業種別のPERについて見てみましょう。

図表5はS&P500指数の24業種の業種指数について、2/2(金)時点の予想PERと過去15年の年平均EPS成長率を並べ、両指標の傾向によって筆者の主観で分類したものになります。市場平均であるS&P500指数のPERは17.8倍、EPSの年平均成長率は6.8%です。

「成長性が高くPERも高め」は(1)の原則の通りで、当たり前ですね。代表的な業種は「ソフトウエア・サービス」で、アルファベット、フェイスブック、マイクロソフトなとが含まれます。尚、この分類で「小売」が高いのは時価総額が大きいアマゾンの影響が大きく、それ以外の銘柄とは乖離があると見られます。

「成長性はさほど高くないがPERは高め」には、大原則の(2)が影響しています。成長性はさほど高くなくとも、安定性が高いためにPERが高く評価される傾向のある業種です。代表的なものは、「家庭・パーソナル用品」です。

シャンプーの銘柄は決めているという方は多いでしょう。消費者が繰り返し買うもので、よく浸透したブランドをもつ企業は、先々まで安定した利益を織り込むことができるため、今年度の予想EPSで評価したPERは高めに評価されると考えられます。安定性が高い利益は高く評価されるのです。

「成長性は高いがPERは低め」にも、大原則の(2)が影響しています。成長性が高いのですから、PERは通常高く評価されるケースが多いはずですが、ここにあげた業種は、市場平均よりも低くなる傾向があります。

代表的な業種は「テクノロジー・ハード・機器」です。この業種では、技術革新が頻繁に起こり、成長していると思ったら、いつのまにか競合にやられていた、ということがよくあったという市場の過去の経験が影響していると見られます。利益に対する市場の信頼性が低い業種ということになります。

「成長性は低くPERも低め」は当たり前ですね。代表的なものは、「銀行」になりますが、この成長率の低さには、リーマンショック後の規制強化が影響していると考えられます。一方、2/3(土)に就任したパウエルFRB議長は、金融規制に緩和の余地があるとしています。このため、今後は成長率が回復して、それに伴ってPERも上昇する可能性が考えられるでしょう。

証券アナリストが銘柄レポートで事業内容を詳細に検討するのは、成長性もさることながら、利益の安定性がどの程度なのかを説明するのが主な目的です。このような視点から、なぜこの銘柄にこのPERがついているのか、また、このPERはおかしいのではないかと検討することで、一段レベルの高い株式投資ができるのではないでしょうか。

図表4:予想EPSの「ばらつき」の違いをどう評価するか

  • ※各種資料をもとにSBI証券が作成

図表5:業種別の予想PERと過去15年間のEPS成長率

  • 注:S&P500指数の24業種の業種指数によります。2/2(金)時点のデータです。「半導体・同製造装置」は、02年12月期が赤字のため、成長率は計算できませんが、黒字化した03年12月期を基準とする年平均成長率は26.3%に達するため、成長性が高いに分類しています。
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PERに特徴のある銘柄

米国の主要銘柄について、PERに特徴があり、この面から注目できる銘柄についてコメントいたします。(1)、(2)でお話したことから、これら銘柄に対する理解が深まれば、幸いです。

〇PERが高い・・・ネットフリックス(NFLX)株価(2/5):254.26ドル  PER:95.3倍
米国で最も高い成長が期待されている企業の一つだと思われます。インターネットTVは、これまで基本的に国ごとに分断されていたテレビ放送市場の一部がグローバルに統合されることを意味し、巨大な市場が形成されると考えられます。その市場でトップを走っていることが高い成長期待につながり、結果的に高PERとなっています。

また、加入者純増が会社の想定を上回って増加する傾向にあり、営業利益率も今年度は10%への改善が目標とされ、コンテンツへの巨額投資も結果を出しているなど、足もとの経営も順調です。

〇PERが低い・・・マイクロンテクノロジー(MU)株価(2/5):39.40ドル  PER:4.1倍
半導体市場の拡大は続いていますが、同社が属する「半導体メモリー」は、市況の変動性の高さで悪名が高いために、このように極端に低いPERとなっています。

ただ、ネットでの動画視聴、IoT、自動車の情報化などでデータの爆発的増加が起きていることから、半導体市場が「スーパーサイクル」入りするとの証拠が増えると、このように極端に低いPERは大きく修正されると見込まれます。

〇PERが安定して高い・・ビザ(V)株価(2/5):116.27ドル  PER:26.4倍
PERの水準は安定していて、時間の経過とともにEPSが拡大して、それに沿って株価が上昇を続けているケースとして、電子決済大手のビザを挙げることができます。

ビザはマスターカードとともに世界の電子決済市場を2分して、[1]世界の電子決済市場が年率8%前後で成長していること、[2]2社による寡占で、かつ、装置産業的であるため参入障壁が高いこと、から安定した高成長が期待されています。

クレジットカード業界が小売企業からの集団訴訟を抱えた2010年〜2011年には一時20倍を下回ることがありましたが、それ以外では20倍超で安定し、25倍前後まで買われるのが通常の状態となっています。

〇PERが安定して安い・・・ゼネラルモーターズ(GM)株価(2/5):39.54ドル  PER:6.2倍
(2)で見たように「自動車・自動車部品」のPERは10倍割れと極めて低水準にあり、同社もこれに沿った形となっています。[1]PERが低くなりやすいハードウェアである、[2]アセンブラー(組立企業)は低く評価されやすい、[3]自動車産業の成長が低いと考えられている、などの要因が考えられます。また、同社については、倒産を経験して再生してきた会社ということもあるでしょう。

ただ、自動車産業は「コネクテッドカー」「電気自動車」「自動運転」「ライドシェア」などで、現在最もドラスチックな変化が起きている産業と言ってよいでしょう。このような根本的な変化が起きるとPERの水準も変化すると考えられます。同社は新しい動きにも積極的に対応しており、注目できるでしょう。

〇PERの変化が期待されている・・・アップル(AAPL)株価(2/5):156.49ドル  PER:13.6倍
IT機器セクターのPERが低めとなることは(2)で見た通りで、同社のPERも市場平均を大きく下回っています。時価総額が世界最大であり、主力のスマホでシェアをこれ以上拡大することが難しいと考えられていることも、低めのPERの要因と見られます。

一方、同社の「iPhone」「Mac」などに対する消費者のブランド・ロイヤリティは高く、継続して購入する傾向が強いことから、単なるハードウェア企業ではないとの見方もあります。また、同社売上の13%がサービスによるものとなっており、この比率は年々高まる傾向にあります。サービス比率が高まるとハードウェアの企業からソフトウェア、サービスの企業としての評価が高まり、PERは上昇する可能性に注目できるでしょう。

  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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