6/5(火)に世界半導体市場統計(WSTS)の市場予測 が発表されました。世界の半導体売上は、2017年実績の4,122億ドルから、2018年4,634億ドル(前年比12.4%増)、2019年4,837億ドル(前年比4.4%増)へ拡大が続く見通しです。
同統計は6/6(水)の日本経済新聞12面でも取り上げられていますが、「半導体市場 陰る勢い 19年の規模、3年ぶり1桁成長」との見出しはネガティブなニュアンスで、株式市場の視点からはややズレているように感じました。
半導体市場の安定的な拡大を示す、業界にポジティブなリリースと思われますので、株式市場の視点からご紹介いたします。
〇ポイント1: 18年の半導体売上見通しは再び上方修正
WSTSは年2回市場予測を発表していますが、18年の半導体売上は、17年11月発表の前回予測4,373億ドルから4,634億ドルへ6%も上方修正されています。
17年11月と言うと半導体市場の回復が始まって1年以上が経過しており、業界の楽観度はかなり高まっていたと考えられますが、その後も業界関係者のコンセンサスを上回る推移になったのだと確認できます。
〇ポイント2: 半導体市場の拡大を牽引するのは「メモリー」
半導体と言えばPCやサーバーに入っているCPU(中央演算装置)の「ロジック」が最大を占めるのが当たり前でしたが、2017年には「メモリー」が最大カテゴリーに浮上し、2018年には、「ロジック」の1.4倍に拡大するとの見通しに改めて驚かされます(図表1)。
17年春分からの市場予測の推移を見ても、他のカテゴリーと比べてメモリーの上方修正が突出していることがわかります(図表2)。価格の上昇が主な要因ですが、その背景にあるのはデータセンターでのDRAM需要の拡大と言われています。
DRAMはコンピュータのCPU(中央演算装置)が計算処理をするときの「作業スペース」を提供するものですが、人工知能のトレーニングやビッグデータの計算処理の需要が増えることで、この「作業スペース」に対する需要が拡大しています。
例えて言うと、2個の書類を机の上に広げて作業していたところ、100個の書類を同時に広げなければならなくなり、作業スペースが足りなくなって机を買い足している状況です。
半導体メモリー市場の拡大から注目される専業メーカーは、米国のマイクロン テクノロジー(MU)と韓国のSKハイニクス (000660)です。両社ともNANDフラッシュも手掛けますが、主力はDRAMです。
〇ポイント3: 2019年も市場拡大が見込まれている
半導体市場はシクリカル性が強く、拡大の後には縮小がつきものというのが過去の経験則です。このため、2017年春の予測では、2019年の市場規模は2018年に対して0.2%減が見込まれていました。しかし、今回の予測では、2019年も4.4%としっかりした増加が見込まれています。
確かに伸び率は鈍化となりますが、株式市場の視点としては大幅な拡大の後にもマイナス成長が想定されていないことが、重要と考えられます。
カテゴリー別でも、すべてにおいて3〜5%の増加が見込まれています。用途の広がりによって安定的な市場拡大が想定できるということでしょう。
図表1:主な半導体カテゴリーの売上推移
- ※WSTS資料をもとにSBI証券が作成
図表2:主な半導体カテゴリーの18年予測推移
- ※WSTS資料をもとにSBI証券が作成
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。