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中国の高級EVメーカー「蔚来汽車(NIO)」が米国市場に新規上場!!(9/12(水)予定)

2018/9/6
投資情報部 榮 聡

中国のEV(電気自動車)メーカー蔚来汽車(NIO)が9/12(水)ニューヨーク市場に上場予定です。EVの専業企業でテスラのライバルと目されていること、EV市場で世界最大の中国を母国市場とすること、バックにテンセントがついていることなどから、市場の注目が高まっているようですので、ご紹介いたします。尚、社名の「蔚来」(読み方はウェイライ)は「青い空が来る」という意味です。

図表1:言及した主な銘柄

銘柄 株価(9/5) 52週高値 52週安値
蔚来汽車(NIO) - - -
テスラ(TSLA) 280.74ドル 389.61ドル 244.59ドル
比亜迪 (Byd)(01211) 45.85香港ドル 83.70香港ドル 39.90香港ドル
テンセント(騰訊)(00700) 324.80香港ドル 476.60香港ドル 319.00香港ドル
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
1

テスラのライバル!?中国のEVメーカーが米国市場に上場

中国のEV(電気自動車)メーカーの蔚来汽車(NIO)が米国市場に上場予定です。テスラのライバル企業として世界の投資家から注目を集め、ソフトバンクも投資を検討したようです。同社の上場に注目できる理由として、以下があげられます。

(1)希少性のあるEV専業企業の上場
中国の電気自動車関連企業と言えばBYD(01211)がありますが、同社は売上の約4割を携帯端末部品が占め、電気自動車の専業企業ではありません。世界を見渡してもEV専業で上場しているのはテスラ(TSLA)のみで、株式市場で希少性があるため世界の投資家が投資を検討する対象になると考えられます。

(2)世界最大のEV市場を母国市場とする
中国は世界のEV市場の54%を占める最大市場で、政府も普及拡大に注力していることから、今後も世界で最も重要な市場であり続けると考えられます。その中国を母国市場とする企業です。中国には電気自動車に参入している企業が何十社もありますが、その中で唯一高級車市場をターゲットとしていることが差別化要因となっています。

(3)バックには中国のインターネット大手のテンセント(00700)
テンセントはインスタントメッセンジャーを核にゲームなどに展開したインターネット企業で、時価総額は3.1兆香港ドル(約45兆円)に達する世界的巨大企業です。同社は保有する豊富な金融資産を数多くの有望ベンチャーに投資しており、蔚来汽車もその一つです。

テンセントの保有比率は上場前が15.2%、上場後は12.9%に低下の予定ですが、クラスB株の取得により議決権は21.5%を確保し、同社に対するコミットメントは継続されます。自動車の分野は情報化や自動運転など技術革新の大きな波が来ていると考えられますが、自身もネット企業であり、様々な技術を保有するベンチャー企業に出資しているテンセントを後ろ盾にしていることは競争上優位に働く点として注目できるでしょう。

蔚来汽車は顧客への販売が始まったばかりのベンチャー企業で、大幅な赤字決算が続いているため投資には比較的大きいリスクが伴うと考えられますが、順当に中国のEV市場の成長を捉えることができれば、リターンは大きくなると期待できるでしょう。

同社がライバルと公言する米国のテスラは、「モデル3」の生産の遅れ、追加の資金調達への懸念、マスクCEOの言動が問題視されるなど、最近でこそ芳しくないニュースが多くなっています。しかし、2010年6月に17ドルで上場して以来8年余りで株価は16倍以上となり、時価総額は480億ドル(約5.3兆円)にまでなっています(図表2)。

図表2:株価が公募価格から16倍超となったテスラ(月足)

  • ※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
2

中国のEV市場は世界最大、かつ、高成長が見込まれる

世界のEV(電気自動車)販売は2017年に87.5万台で、うち47.6万台を中国が占め、中国は世界最大のEV市場となっています。調査会社Frost&Sullivanの予想によれば、2022年には世界販売は407万台、うち中国は65%に相当する263万台へ増加すると予想しています。世界および中国で新エネルギー車の市場が拡大すると考えられる要因として、以下があげられます。

〇世界でEVが伸びる背景
(1)環境意識の高まりと排ガス規制の強化
世界で進む排ガス規制の強化で内燃機関車の開発コストは上昇が見込まれること、消費者は自身の消費行動の環境へのインパクトに関心を高めていることから、EVへの需要は拡大すると考えられます。

(2)バッテリーコストの低下
EVの主要部品であるバッテリーのコストは、13年のkWh当たり485ドルから、17年に270ドルとなり、22年には155ドルまで低下すると見込まれています(Frost&Sullivanの予想)。

(3)EV所有コストの低下
自動車の購入費とランニング費を合計した総保有コストは、内燃機関車が42万人民元であるのに対して、EVは37.4万人民元と、これを下回っています。EVでは燃料コストが内燃機関車に比べて約75%低く、修理・維持費用も低いことが要因です。

〇中国でEVが伸びる背景
(4)当局の強力なプッシュ
中国政府は、補助金、税制の優遇、充電設備の建設などの政策手段を用いて、新エネルギー車の普及を促進しており、2020年までに新エネルギー車の年間販売を2百万台、普及台数を5百万台とする構想です。また、EVの普及に欠かせない充電施設は、国家エネルギー局が17年の44.6万ヵ所から22年までに480万ヵ所へ増やす計画です。

(5)政府が戦略的に重要な産業と認定
中国の自動車市場は世界最大であるにもかかわらず、内燃機関車はエンジンや駆動システムが複雑なため、外国企業との合弁に頼って中国企業は実質的に大きな役割を果たすことができていません。しかし、機構が単純なEVではより大きな役割を果たすことが期待され、国家戦略として重要な産業と位置づけられ政府のサポートが期待されます。

(6)主要都市でのナンバープレート取得の難しさ
激しい交通渋滞と大気汚染の問題を受けて北京、上海、広州など中国の6大都市では、自動車のナンバープレート取得が制限されており、取得できる確率は平均で0.92%とされます。さらに、取得制限を実施する都市数は今後も増えていく見通しで、ナンバープレートを取得できる確率が格段に高いEVへの需要は強い状況が続くと考えられます。

図表3:世界の電気自動車の市場

  • 注:予想は調査会社のFrost&Sullivanによります。
  • ※会社資料をもとにSBI証券が作成

図表4:中国の新エネルギー車の販売台数

  • 注:予想は調査会社のFrost&Sullivanによります。
  • ※会社資料をもとにSBI証券が作成
2

会社概要と上場スキーム

〇会社概要
蔚来汽車(NIO)は2014年11月に創業したEVメーカーです。中国にはEV(電気自動車)市場に参入している国内メーカーが何十社もありますが、ほとんどがエントリー市場をターゲットとしており、プレミアム市場をターゲットとしている唯一の国内メーカーであることが差別化のポイントです。

量産車の販売を始めたばかりのベンチャーですが、上海の本社のほか、自動車デザインはドイツのミュンヘン、自動運転技術の開発は米国のサンノゼ、フォーミュラE(電気自動車のレース)の本部はイギリスのオックスフォードと、世界トップレベルの自動車メーカーを目指す態勢となっています。また、人工知能・自動運転の技術をもつバイドゥ、画像処理半導体のモービルアイ(インテル傘下)、世界最大の電気自動車用電池メーカーのCATLなど業界の先端企業とも提携関係にあります。

生産に関しては、モーターを含む駆動システムとバッテリーパックは南京の自社設備で生産し、自動車の組み立ては安徽江淮汽車集団(上海市場の上場企業、コードは600418)に委託しています。自社の自動車生産工場は上海に建設中で、2020年の完成を見込んでいます。

〇事業内容
2016年にスーパーカーの「ES9」を開発、2017年5月にニュルブルクリンクで電気自動車の最高速度を記録しています。魅力的なデザインや高い運転性能とともに、加速性能の高さや一流のパワートレインを備えていることを証明し、プレミアムブランドのポジションを確立するために貢献したと見られます。

17年12月に初の量産車となる「ES8」を発表、2018/6/28(木)より顧客への納車を開始しています。「ES8」は7人乗り、総アルミ合金ボディのプレミアムSUVです(図表6)。2018/8/28(火)時点で1,381台を販売し、15,761台の予約を保有しています。「ES8」と主な競合車種の価格と性能は図表7の通りで、高い性能の割りに価格はテスラ車の4割程度と、製品の競争力は高いと考えられます。

19年前半に投入予定の次期モデル「ES6」は、5人乗りのSUVで、「ES8」よりも8〜10万人民元(約110〜140万円)安くして、プレミアム市場の中でより広い層に訴求することを計画しています。

顧客への販売が始まったのが今年の6月下旬であるため、業績は大幅な赤字です(図表7)。営業利益のマイナスに対して純利益のマイナスが大きいのは、償還可能型転換優先株の償還価値の増価による評価損が計上されているためです。

〇上場要綱
9/12(水)にニューヨーク市場に上場予定です。上場に際して184万株(オーバーアロットメントを含む)のADS(米国預託株式)を発行し、仮条件レンジ6.25〜8.25ドルの中央値で13.34億ドルを調達見込みです。

上場後の発行済み株式数は1,026百万株となる見込みで、レンジ中央値の7.25ドルで評価した時価総額は7,438億ドル(約8,200億円)となります。尚、1ADSは普通株1株に対応します。

図表5:蔚来汽車の主力モデル「ES8」

  • ©Jengtingchen

図表6:蔚来汽車の主力モデル「ES8」と競合車の価格・性能

NIO
ES8

テスラ
モデルX 75D

SAIC
Roewe Marvel X

BYD
Song EV300

メーカー希望小売価格(万人民元)

44.8

96.4

38.2

26.6

消費者の平均購入価格(万人民元)

37.4

104.8

30.0

22.5

エンジン出力(馬力)

650

525

185

218

0-100km/h加速(秒)

4.4

5.2

7.9

8.9

最高速度(km/h)

200

210

170

140

一充電走行距離(km)

355

406

403

300

充電時間(時間)

10

8

8

6

  • 注:「SAIC」は上海汽車集団の略称です。一充電走行距離は、欧州のテスト基準によります。
  • ※会社資料をもとにSBI証券が作成

図表7:業績推移

16年12月期

17年12月期

17年1-6月期

18年1-6月期

売上高(百万人民元)

0

0

0

46

営業利益(百万人民元)

-2,602

-4,953

-1,995

-3,338

純利益(百万人民元)

-3,517

-7,561

-3,130

-10,054

EPS(人民元)

-210

-346

-155

-350

  • ※会社資料をもとにSBI証券が作成
  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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