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中国でスタバを追い詰める!?ラッキンコーヒー(LK)が米国市場に上場へ!!

2019/5/16
投資情報部 榮 聡

〇IPOの注目点
(1)テイクアウトとモバイル戦略で急成長する中国のコーヒーショップチェーン。
(2)中国でスターバックスの潜在的ライバルとして注目を集める。
(3)中国のコーヒー市場は年平均26%の高成長が見込まれる。

図表1:IPOの概要

企業名(コード)

ラッキンコーヒー(LK)

上場市場

NASDAQ

公表日

4/22(月)

上場日(予定)

5/17(金)

公募価格(ドル)

15.00〜17.00

募集・売出し株数(百万株)

30

公募規模(百万ドル)

510

時価総額概算(億ドル)

39.5

  • 注:公募規模は、「募集・売り出し株数×公募価格のレンジ上限」で計算しています。時価総額概算は「IPO後の発行済株式数(オーバーアロットメントを含まない)×公募価格レンジ上限」で計算しています。米国市場に上場するADS(米国預託株式)は同社普通株の8株に相当します。
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
  • ※SBI証券では米国株式のIPOの申込み等の受付は行っておりません。当社では上場後に取扱銘柄へ追加を予定しております。

〇企業概要
福建省アモイ市を本拠とする中国のコーヒーショップチェーンです(図表2)。2017年6月に会社を設立、2017年10月より営業を開始、過去2年内で中国の28都市に2,370店の店舗網を構築、中国で第2位のコーヒーショップチェーンに成長しています(図表3、19年3月末時点)。売上構成比は、淹れたてコーヒーが77%、その他の飲料・食品が16%、デリバリー手数料が7%を占めます(18年12月期)。

〇事業内容
客席数が限定的でテイクアウト中心の「ピックアップ・ストア」を中心に展開していることが特徴です。淹れたてコーヒーの需要が大きい、オフィスビルなど周辺人口が多い場所に比較的簡単に出店できることが急拡大の原動力になっているようです。

19年3月末の合計店舗数2,370のうち、「ピックアップ・ストア」が2,163、「リラックス・ストア」が109、「デリバリー・キッチン」が98となっています。「ピックアップ・ストア」は20〜60平米(6〜18坪)、「リラックス・ストア」は120平米(36坪)というのが典型的な広さです。「デリバリー・キッチン」はデリバリー注文のみを受ける店舗で低コストで出店できるため、新たな地域に展開するときなどに使用されることが多いようです。

また、注文と決済はスマホでのみ受け付けることも特徴です。レジでの会計を省くことによる顧客の利便性向上、店舗オペレーションの効率化、顧客関係の緊密化に役立つことなどがメリットになるとしています。ラッキンの専用モバイルアプリを擁し、18年12月期の新規顧客の91.3%、全注文の95.6%は同アプリによります。

テイクアウト中心の店舗展開とモバイル戦略で中国のコーヒー市場のディスラプター(創造的破壊者)になるとしており、その拡大に市場の注目が集まっています。

主力商品のコーヒーは品質の高いものが提供されているようです。アラビカ種の高級コーヒー豆を著名なサプライヤーから調達し、「ワールド・バリスタ・チャンピオン」のチームがブレンドしているとしています。2018年のIIAC国際カフェテイスティング競技会でゴールドメダルを獲得したほか数々の受賞があるとしています。

〇中国のコーヒー市場
中国のコーヒー消費は、「都市化の進展」と「可処分所得の上昇」を背景に高成長が見込まれています。

目論見書にあるFrost&Sullivan社の調査によると、2018年から2023年にかけて年率平均成長率は26.0%に達すると見込まれています(図表4)。

2018年の国民一人当たりコーヒー消費量は中国が6.2杯に対して、台湾209.4杯、香港249.5杯、日本279.0杯、米国388.3杯、ドイツ867.4杯となっています。食生活が近いと考えられる台湾、香港が200杯を超えていることは、中国市場のポテンシャルの高さがうかがえるでしょう。

〇業績動向
図表5の通り、店舗の拡大に伴って売上は急拡大していますが、営業を開始してからの歴史が2年未満と浅く、急展開していることもあって営業赤字幅も拡大しています。いまのところ黒字化する時期の目処は立っていません。最近のIPOでは、赤字企業に対する市場の視線が厳しくなっていると言われ、この点については注意が必要かもしれません。

〇類似会社比較
コーヒーショップのチェーンと言えばスターバックス(SBUX)ですが、同社は1971年の開業で48年の歴史があるのに対して、ラッキンコーヒーはまだ2年目と比較には酷な状況です。しかし、中国での成長の勢いはスターバックスを上回ると市場で話題になっていますので、敢えて比較してみましょう。

まず、売上の規模ですが、ラッキンコーヒーの18年12月は8.4億人民元で1ドル=6.88人民元の換算で1.2億ドル、スターバックスの中国・アジア太平洋地域の売上は18年9月期に41.0億ドルですので、まだ全く違うレベルと言えるでしょう。

時価総額はスターバックスの5/15(水)が942億ドル、ラッキンコーヒーは「IPO後の発行済株式数(オーバーアロットメントを含まない)×公募価格レンジ上限」で39.5億ドルです。

コスト構造も比較の意味がないほど違っています(図表6)。ラッキンコーヒーは営業を始めてから2年以下で、急拡大していることもあって、店舗段階の費用だけでも売上を超えている状況です。

また、今後の店舗展開への先行投資と考えられますが、マーケティングに費用をかけていることも目立っています。数年後に営業黒字化できるのかも、これだけではちょっと見えないと言えるでしょう。

ただ、同社はスマホで注文を受けているため、店舗ごとに新規顧客の獲得数、顧客の定着率、購入動向など顧客に関するデータは豊富で、客観的なデータを基礎にした経営判断を行いやすいと期待できるでしょう。

図表2:「ピックアップ・ストア」の様子

  • ※会社資料より

図表3:店舗数の推移(四半期)

  • ※会社資料をもとにSBI証券が作成

図表4:中国のコーヒー市場の予想

  • ※会社資料(Frost&Sullivan社の調査レポート)をもとにSBI証券が作成

図表5:業績推移

18年

19年

17年
12月期

18年
12月期

1-3月期

4-6月期

7-9月期

10-12月期

1-3月期

売上(百万人民元)

13

122

241

465

479

215

840

営業利益(百万人民元)

-125

-343

-486

-644

-527

-56

-1,598

純利益(百万人民元)

-132

-333

-485

-669

-552

-56

-1,619

  • ※会社資料をもとにSBI証券が作成

図表6:主要費用項目の売上に対する比率

ラッキンコーヒー(19年1-3月期)

スターバックス(18年9月期)

売上原価

57.6

売上原価および店舗賃借料

40.4

店舗賃借料その他

59.0

店舗運営費用

29.0

減価償却費

17.6

その他運営費用

2.2

販売・マーケティング費

35.1

減価償却費

4.5

一般管理費

36.1

一般管理費

6.5

店舗再開その他費用

4.7

リストラ費用および減損

0.7

営業費用合計

210.1

営業費用合計

83.3

  • ※会社資料をもとにSBI証券が作成
  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

免責事項・注意事項

  • 本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
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