年初に起こった米国・イラン間の軍事的緊張は、両国の自制によって一旦は収束しました。しかし、イランはウランの濃縮を無制限に進めると宣言するなど根本的な解決には程遠い状況にあります。両国の緊張関係が引き続き防衛関連銘柄の株価を刺激する可能性がありそうです。そこで米国の主要防衛関連銘柄を中心にご紹介いたします。
図表1:注目銘柄リスト
銘柄 | 株価(1/14) | 52週高値 | 52週安値 |
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ロッキード マーチン(LMT) | 416.14ドル | 420.96ドル | 270.63ドル |
レイセオン(RTN) | 227.40ドル | 232.47ドル | 157.57ドル |
ノースロップ グラマン(NOC) | 374.67ドル | 383.89ドル | 254.56ドル |
ユナイテッド テクノロジーズ(UTX) | 151.54ドル | 154.65ドル | 108.80ドル |
L3ハリス テクノロジー(LHX) | 212.78ドル | 217.31ドル | 135.78ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
1/6(月)に米国の経済専門チャンネルCNBCのWEBサイトに「中東での紛争後6ヵ月間で防衛銘柄はS&P500指数の倍のリターンと歴史が示す(Defense stocks double the S&P 500′s return six months after Middle East turmoil, history shows)」との記事が掲載されました。
過去30年間にわたる19回の中東地域での紛争後6ヵ月間で、S&P500指数は平均で3.3%上昇したのに対して、「航空宇宙・防衛」指数は6.7%と倍以上のパフォーマンスが出ているとのことです。ちなみに、原油価格は平均で1.5%の上昇にとどまったとのことで、中東地域の紛争を受けて原油に投資するのは意外にも効率が良いとは言えないようです。
今次の紛争では、1/2(木)に米軍がイランのソレイマニ司令官を爆撃によって殺害、1/8(水)にイランがイラクの軍事施設を爆撃したことで、米国とイランの軍事衝突の懸念が高まりました。その後イランによる爆撃は米軍に人的被害がでないように配慮されたものであったことから、懸念は一旦収束しました。
しかし、米国とイランの対立は、1979年に米国が支持するパーレビ国王が倒され、イランの米大使館で人質事件が起きて以来と根深いものです。さらに、2018年5月に米国が「イラン核合意」(米英独仏中ロとイランの合意)を離脱してから緊張が高まるトレンドにあるうえ、1/6(月)には核合意の制限を破り「保有するウランを無制限に濃縮する」と宣言、根本的な解決には程遠い状況です。
再び軍事的緊張が高まる可能性も想定されます。このような地政学的リスクの高まりが防衛関連銘柄の株価を刺激する可能性がありそうです。
また対イランに限らず一般的にも、トランプ大統領と米国政府が展開する外交政策は、中国との覇権争いを演じたり、欧州各国には防衛費の引き上げを要求するなど、世界の軍事的緊張を高めたり、軍事支出を拡大する方向に作用しているとみられます。
S&P500指数に含まれる「航空宇宙・防衛関連指数」(構成銘柄は11銘柄)は、トランプ氏が大統領に就任した17年1月以降、すう勢的にS&P500指数を上回る推移となっています(図表2)。
一方19年2月以降はS&P500指数をやや下回る動きとなっていますが、これは時価総額でセクター指数の4分の1を占めるボーイングが「737MAX」の問題で市場平均を大きく下回っていることが効いているとみられます。ボーイングを除く主力銘柄は、市場平均並みかこれを上回るものが多くなっており、防衛関連銘柄は注目に値するのではないでしょうか。
図表2:航空宇宙・防衛指数は米トランプ大統領の就任から市場を上回る動き
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
ファンダメンタルズ面でも、米国の防衛関連銘柄には良好な事業環境が続いているとみられます。
まず、業績に最も影響が大きい米国の国防費は、増加見通しとなっています(図表3)。
オバマ政権下で年々減らされた国防費はトランプ大統領のもとで増加に転じ、2020財政年度(2019年10月〜20年9月)の予算書によると、2024年まで拡大基調が見込まれています。
また、米国の防衛関連銘柄は海外売上も多いため、世界的な軍事費の動向にも影響を受けますが、こちらも増加する傾向にあるようです。
SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)のデータで、米国および、米国企業の防衛製品の購入が少ないと考えられる中国、ロシアを除く軍事費が多い上位10ヵ国、サウジアラビア、インド、フランス、英国、ドイツ、日本、韓国、イタリア、ブラジル、オーストラリアの推移を検証してみました。
これら10ヵ国の軍事費合計は、2016年に4,263億ドルで底入れして2017年に4,552億ドル(前年比6%増)、2018年に4,693億ドル(前年比3%増)と増加しています。2017年は10ヵ国中8ヵ国が、2018年は7ヵ国が前年比でプラスと、増加のすう勢は安定しているとみられます。
防衛関連企業にとっては、地政学リスクなど株価材料だけでなく、ファンダメンタルズ面でも好環境にあると確認できます。
投資先を検討するには、世界の防衛関連企業の売上ランキング(中国企業を除く)を眺めてみるのが良いでしょう。図表4の通り米国企業が上位を占め、民間旅客機が主力のボーイングを除いて防衛関連の売上比率も高くなっています。
これらの企業を含む「航空宇宙・防衛」指数の構成銘柄を過去3ヵ月のEPS修正率でスクリーニングして、上方修正となっている銘柄から次節でご紹介いたします(図表5)。
図表3:米国の国防費は増加基調
- 注:17年まではSIPRI(ストックホルム国際平和研究所)による実績データ、19年以降は米国の2020財政年度予算書によります。
- ※SIPRIデータ、米国予算書をもとにSBI証券が作成
図表4:防衛関連企業の売上ランキング(2018年)
順位 | 企業名(国籍) | 防衛関連 売上高 (億ドル) |
防衛関連 売上比率 |
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1 | ロッキード・マーチン(米国) | 449 | 88% |
2 | ボーイング(米国) | 269 | 29% |
3 | レイセオン(米国) | 238 | 94% |
4 | BAEシステムズ(英国) | 229 | 98% |
5 | ノースロップ・グラマン(米国) | 223 | 87% |
6 | ゼネラル・ダイナミクス(米国) | 194 | 63% |
7 | エアバス(欧州連合) | 112 | 15% |
8 | タレス(フランス) | 90 | 51% |
9 | レオナルド(イタリア) | 88 | 68% |
10 | アルマズ・アンティ(ロシア) | 85 | 94% |
11 | ユナイテッド・テクノロジーズ(米国) | 77 | 13% |
12 | L3テクノロジーズ(米国) | 77 | 12% |
13 | ハンチントン・インガルス(米国) | 68 | 74% |
14 | ユナイテッド・エアクラフト(ロシア) | 64 | 83% |
15 | ユナイテッド・シップビルディング(ロシア) | 49 | 89% |
- 注:中国企業を除くランキングです。銘柄名は一般的な表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
- ※SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)の公表データをともにSBI証券が作成
図表5:防衛関連銘柄のスクリーニング
コード | 銘柄 | 株価 (1/13) (ドル) |
予想 PER (倍) |
今期予想 EPS増加率 (%) |
来期予想 EPS増加率 (%) |
EPS 修正率 (3ヵ月) (%) |
時価総額 (1/13) (億ドル) |
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LHX | L3ハリス・テクノロジーズ | 212.6 | 21.6 | - | 17.8 | 2.9 | 470 |
ARNC | アーコニック | 29.45 | 13.9 | 55.4 | 13.9 | 3.1 | 128 |
NOC | ノースロップ・グラマン | 376.83 | 18.5 | -4.6 | 12.9 | 3.6 | 635 |
LMT | ロッキード・マーチン | 419.02 | 19.4 | 22.8 | 12.8 | 1.8 | 1,182 |
RTN | レイセオン | 227.15 | 19.1 | 17.1 | 9.3 | 1.3 | 633 |
GD | ゼネラル・ダイナミクス | 181.13 | 15.2 | 6.5 | 8.3 | 0.3 | 524 |
UTX | ユナイテッド・テクノロジーズ | 152.05 | 18.7 | 7.1 | 7.2 | 1.4 | 1,313 |
(過去3ヵ月のEPSが下方修正の銘柄) | |||||||
HII | ハンティントン・インガルス・インダストリーズ | 274.82 | 19.8 | -27.4 | 39.0 | -0.8 | 112 |
TXT | テキストロン | 45.04 | 12.2 | 10.1 | 1.7 | -1.5 | 103 |
TDG | トランスダイム・グループ | 604.57 | 28.8 | 15.0 | 15.2 | -1.8 | 324 |
BA | ボーイング | 330.22 | - | 赤字転換 | 黒字転換 | - | 1,858 |
- 注:S&P500指数の「航空宇宙・防衛」指数の構成銘柄を対象としました。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。L3ハリス・テクノロジーズの今期予想EPS増加率は、決算期変更のため比較を表示していません。
- ※BloombergデータをともにSBI証券が作成
時価総額: 1,182億ドル | |||||
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決算期 | 売上高(億ドル) | (前年比) | 純利益(億ドル) | (前年比) | EPS(ドル) |
19.12予 | 592 | 10% | 61.3 | 18% | 21.61 |
20.12予 | 625 | 6% | 68.1 | 11% | 24.37 |
株価(1/13): 419.02ドル | 予想PER(20.12期): 17.2倍 | ||||
|
時価総額: 633億ドル | |||||
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決算期 | 売上高(億ドル) | (前年比) | 純利益(億ドル) | (前年比) | EPS(ドル) |
19.12予 | 293 | 8% | 33.3 | 6% | 11.88 |
20.12予 | 314 | 7% | 36.1 | 9% | 12.99 |
株価(1/13): 227.15ドル | 予想PER(20.12期): 17.5倍 | ||||
|
時価総額: 635億ドル | |||||
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決算期 | 売上高(億ドル) | (前年比) | 純利益(億ドル) | (前年比) | EPS(ドル) |
19.12予 | 340 | 13% | 34.6 | -7% | 20.35 |
20.12予 | 360 | 6% | 38.6 | 12% | 22.98 |
株価(1/13): 376.83ドル | 予想PER(20.12期): 16.4倍 | ||||
|
時価総額: 1,313億ドル | |||||
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決算期 | 売上高(億ドル) | (前年比) | 純利益(億ドル) | (前年比) | EPS(ドル) |
19.12予 | 768 | 15% | 68.3 | 13% | 8.15 |
20.12予 | 801 | 4% | 75.6 | 11% | 8.74 |
株価(1/13): 152.05ドル | 予想PER(20.12期): 17.4倍 | ||||
|
時価総額: 470億ドル | |||||
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決算期 | 売上高(億ドル) | (前年比) | 純利益(億ドル) | (前年比) | EPS(ドル) |
19.12予 | 67 | - | 9.7 | - | 8.15 |
20.12予 | 175 | - | 19.7 | - | 9.83 |
株価(1/13): 212.60ドル | 予想PER(20.12期): 21.6倍 | ||||
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- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
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