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新型コロナ禍でも大きな下振れがなさそうな好決算銘柄

2020/5/8
投資情報部 榮 聡

主要銘柄の1-3月期決算発表はピークを過ぎて終盤に差し掛かっています。新型コロナ禍の影響により、1-3月期は前年同期比10%を超える減益、影響が本格化する4-6月期は同30%を超える減益が予想されています。そこで今回はこのような環境下、1-3月期決算が堅調で、4-6月期にも大きな下振れがなさそうな銘柄をご紹介いたします。

図表1:注目銘柄

銘柄 株価(5/7) 52週高値 52週安値
マイクロソフト(MSFT) 183.60ドル 190.70ドル 119.01ドル
インテル(INTC) 59.17ドル 69.29ドル 42.86ドル
アマゾンドットコム(AMZN) 2,367.61 2,475.00 1,626.03
ネットフリックス(NFLX) 436.53ドル 449.52ドル 252.28ドル
プロクター&ギャンブル(PG) 112.17ドル 128.09ドル 94.34ドル
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

1新型コロナ禍で大きく落ち込む企業業績

S&P500指数採用企業の1-3月期決算は5/1(金)までに55%の会社が発表済みで、FactSet社の集計で発表済みの決算と未発表分の予想を混合したものは、売上が前年同期比0.7%増にとどまり、EPSは同13.7%減と大きな落ち込みとなる見通しです。

もちろん、これはCOVID-19の感染抑止に向け経済活動を止めたためですが、多くの米国企業に影響が出始めたのは3月からでした。このためCOVID-19による業績悪化の影響が本格化する4-6月期は売上が同9.5%減、EPSが同36.7%減に落ち込む見通しです。

一方、経済活動の再開が期待される7-9月期のEPSは同20.1%減、10-12月期は同9.4%減と減益率は縮小していくと予想されています。

年間では図表2の通り、20年12月期のEPSは年初に174.50ポイントと予想されていましたが、前年比22%減に相当する127.84ポイントまで下方修正されています(Bloombergの集計)。一方、21年12月期のEPSは、経済が正常化することが前提になっているとみられますが、19年実績に近い163.17ポイントまで回復すると予想されています。

株式市場は3/23(月)を底に回復基調で、S&P500指数の予想PERは20年予想EPSに対して22.5倍、21年予想EPSに対して17.6倍まで上昇しています。経済活動を止めたことによる「異常値」と言える20年予想EPSではなく、正常化を前提にした21年予想EPSが意識されて株価が動いていると考えられます。

米国市場の過去のPER推移を分析すると、15〜17倍が中庸な水準(割高でも割安でもない水準)と言えます。18倍、19倍になると割高感が強くなるため反落を警戒すべき、反対に14倍、13倍になると割安感が強くなるため、反発期待が高まると考えてよさそうです。

この見方を適用すると現在は17.6倍ですから、中庸な水準を超えてやや高めなPERであると言えるでしょう。このため指数ベースでは、当面の上値は限定的となる可能性が高いと言えそうです。

図表2:S&P500指数のEPS推移

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表3:S&P500指数の予想PER、20年予想PERと21年予想PER

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

2業種別にはっきりする明暗

次に、業種別に業績の動きを確認してみましょう。

図表4はS&P500指数の業種指数ごとに、1-3月期予想(既発表の決算と未発表分の予想の混合)、20年予想、21年予想、さらに19年実績に対する20年の利益水準の予想、21年の利益水準の予想を並べたものです。

「情報技術」「ヘルスケア」は20年の打撃が小さく、また、21年も比較的高い伸びとなることが予想されており、19年の実績に対する利益の伸びが最も高い業種となっています。

また、ネットメディアを含む「通信サービス」は20年の打撃はそれなりにあるものの、21年の伸びが高く、これも21年の利益水準は比較的高くなっています。

業種別の業績見通しからは、テクノロジー関連の銘柄が注目できると言えそうです。

テクノロジーの中でも投資家の人気が特に高いFANG銘柄については、フェイスブックとアルファベットは巣ごもり消費の拡大を受けて利用が増加しているものの、広告収入が収益の柱のため企業部門の収益悪化の影響が懸念されます。アマゾンドットコムとネットフリックスは広告収入への依存が小さく、巣ごもり消費の恩恵を受ける立場にあるといった違いがあるでしょう。

一方、原油価格が1バレル40ドル台から20ドル台まで急落した「エネルギー」、経済封鎖による不良債権の増加に備えて貸倒引当金を積み増した「金融」、航空業界への打撃が波及するボーイングを含む「資本財・サービス」、レストラン、航空、ホテル、レジャー関連などを含む「一般消費財・サービス」などの打撃が大きくなっています。

これらは経済の正常化に伴って21年は大幅な増益となることが見込まれていますが、19年実績比では増加にならないと予想されています。

COVID-19による経済への打撃の深さ、長さに不透明感があるうちは、比較的打撃が小さいと予想されている業種から銘柄を選ぶのが無難でしょう。

一方、強力な治療薬やワクチンが承認されるなど、COVID-19を克服する可能性が高まった場合には、打撃が大きい業種にも見直し買いが期待できるでしょう。

なお、ギリアドサイエンシズの「レムデシビル」はCOVID-19の治療薬として承認されましたが、プラセボに対して治癒の期間が3割早まるというレベルの効果では、まだ、安心できないでしょう。重症化する前に服用すれば、ほぼ完治するレベルの薬が出て、本当に安心できると考えられます。

図表4:業種別のEPS推移

1-3月期予想
(前年同期比、%)
20年予想
(前年比、%)
21年予想
(前年比、%)
20年予想
(19年比、%)
21年予想
(19年比、%)
情報技術 4.2 2.2 14.5 102 117
ヘルスケア 5.9 -0.5 14.4 100 114
通信サービス 3.1 -7.2 21.3 93 113
公益事業 4.0 2.4 6.4 102 109
不動産 2.3 -2.0 10.5 98 108
生活必需品 5.9 -0.5 7.2 100 107
素材 -23.2 -15.8 25.3 84 106
一般消費財・サービス -49.0 -37.4 59.2 63 100
資本財・サービス -32.3 -38.6 60.7 61 99
金融 -41.7 -35.0 32.9 65 86
エネルギー -16.2 -111.0 黒字転換 -11 黒字転換
S&P500指数 -13.7 -17.8 25.1 82 103
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

3大きな下振れのなさそうな注目銘柄

4-6月期の米国実質GDPは前期年率28%減と未曾有の落ち込みとなる見通しで、ここに取り上げた銘柄も無傷というわけにはいかないでしょう。しかし、多くの企業が減収減益に落ち込む中でも、さまざまな下支え要因によって業績の悪化は成長の減速にとどまり、想定外の下振れがなさそうな銘柄を選んでいます。

マイクロソフト(MSFT)
20年1-3月期の売上は前年同期比15%増と、前四半期の伸びを上回り、売上・EPSとも市場予想を上回って好調でした。4-6月期の売上ガイダンスは358.5〜368.0億ドルで、中央値の363.3億ドルは市場予想の365.2億ドルをやや下回ったものの、前年同期比6〜9%増とプラス維持の見通しです。

COVID-19の影響について、プロダクティビティ・アンド・ビジネスとインテリジェント・クラウドでは、テレワークがクラウドの利用増につながった一方、中小企業からのライセンス収入、リンクトイン事業、検索広告などでは売上が鈍化したとしています。また、モア・パーソナル・コンピューティングでは、パソコンのサプライチェーン制約は四半期の終わり近くに和らぎ、テレワークへのシフトによって需要が拡大したとしています。COVID-19は事業によりプラスマイナスがあるものの、全体として大きな下振れはなさそうです。

インテル(INTC)
1-3月期決算は、売上が前年同期比23%増、EPSが同63%増で、売上・EPSとも市場予想を大きく上回って好調でした。部門別には、データセントリック・グループが同34%増、PCセントリック・グループが同14%増といずれも伸びています。データセントリック・グループの中心であるデータセンター向けが前年同期比43%増と好調で、PCセントリック・グループはノートブックの数量が22%増えたのがけん引しました。

4-6月期のガイダンスは、売上が185億ドル(前年同期比12%増)、調整後EPSが1.10ドル(同4%増)と1-3月期からは鈍化となる見通しで、通期に関しては不透明感からガイダンスを取り下げています。しかし、テレワークの増加によるデータセンターの拡充需要、PC需要の両面から恩恵を受けるため、大きな落ち込みとなる可能性は小さいと考えられます。

ネットフリックス(NFLX)
20年1-3月期の新規加入者数は世界的な巣ごもりによる需要拡大を受けて1,577万人と、市場予想の850万人を大幅に上回りました。4-6月期の新規加入者数も750万人のガイダンスと、前年同期の270万人に比べて高水準が続く見通しです。20年のリリースについては、大部分が撮影済みとし、パイプラインに大きな問題はなさそうです。

会社は新規加入者の先食いをしているため、年後半の新規加入者数は前年比でマイナスになると予想しています。ただ、今回のような巣ごもりのきっかけがなければ加入しなかった人も多いと思われ、同社のビジネスにとってネットでプラスになることは間違いないでしょう。また、「ディズニー+」が海外展開を進める前に機先を制したことは、競争上も大きなプラスと考えられます。

アマゾン ドットコム(AMZN)
19年10-12月期から20年1-3月期にかけて外出自粛の影響で北米事業の売上が前年同期比22%増から同29%増へ、海外事業が同14%増から同18%増へ加速、全体の売上も同21%増から同26%増に加速しました。一方、北米事業の営業利益は同16%減から同43%減に減益率が拡大、全体も同2%増から同10%減へ減益に転じました。

4-6月期にはCOVID-19に対応するためのコストとして40億ドルが追加でかかるとし、営業利益のガイダンスは前年同期の30.8億ドルの黒字に対して15億ドルの赤字から15億ドルの黒字と大幅に悪化する見通しです。COVID-19の感染抑止をしながら操業を続けるために一時的な費用がかかっているとみられますが、ネット通販の浸透を促進することから中期ではポジティブと考えられます。また、利益の柱となっているクラウドサービスでは、テレワークによる需要増効果も期待されます。

プロクター & ギャンブル(PG)
20年1-3月期のオーガニック売上成長率は前年同期比6%増と市場予想の同4.8%増を上回って好調でした。部門別には、ファブリック&ホーム ケア、ヘルスケア、ベビーケア&ファミリーがそれぞれ10%、9%、8%のオーガニック売上成長でけん引しましたほか、新型コロナウイルスによる需要の高まりも反映されています。一方、20年6月期はドル高の影響を考慮して売上見通しを前年比4〜5%増から同3〜4%増に引き下げています。

ここ数年に事業の取捨選択を進めたことがオーガニック成長率回復の背景にあるとみられ、消費者が価値を認める製品に絞り込んだことで値上げも通りやすくなっているようです。さらに、昨年より製品イノベーション によって、幅広い分野で市場シェアが拡大していることも押し上げの要因となっているようです。

図表5:取り上げた銘柄の1-3月期決算概要

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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