投票日の11/3(火)まで2週間を切った米大統領選挙では、バイデン氏の優位が続いています。バイデン氏が大統領となった場合に恩恵を受けると期待されている分野の一つに環境関連があります。そこで今回はクリーンエネルギー関連のETFと個別銘柄をご紹介いたします。
図表1:注目銘柄
銘柄 | 株価(10/20) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
iシェアーズ Globalクリーンエナジー ETF(ICLN) | 21.15ドル | 21.74ドル | 8.08ドル |
エンフェーズ エナジー(ENPH) | 116.14ドル | 118.05ドル | 17.18ドル |
ブルーム エナジー コーポレーション A(BE) | 18.17ドル | 23.38ドル | 2.44ドル |
ネクステラ エナジー(NEE) | 300.99ドル | 308.06ドル | 174.80ドル |
アルベマール(ALB) | 93.56ドル | 101.00ドル | 48.89ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
大統領選挙の投票日11/3(火)まで2週間を切りましたが、世論調査の支持率平均では、バイデン氏が51.3%でトランプ氏の42.4%を8.9%リードし、「賭け」のオッズから計算した当選確率でもバイデン氏60.8%、トランプ氏39.5%と、ここ1週間は差が縮まったとは言え、引き続き大差をつけています。
投票前の重要イベントとして10/22(木)の第3回TV討論会を残しますが、トランプ氏にとってはこれが挽回の最後のチャンスと考えられます。このイベントを経てもバイデン氏の優位が変わらなければ、相場は一気にバイデン氏の当選を織り込みにいく可能性が高そうです。
バイデン氏が大統領となった場合に恩恵を受けると期待されている分野には、環境関連、インフラ投資関連、ヘルスケア(オバマケア関連)などが考えられます。中でも市場で注目を集めているのが、環境関連です。
そこで今回は関連のETFと個別銘柄をいくつかご紹介いたします。
まず、環境関連が注目されていることを、クリーンエネルギーを投資テーマとするETFの値動きで確認してみましょう(図表2)。年初来の上昇率はiシェアーズ Globalクリーンエナジー ETF(ICLN)が80%、インベ グローバルクリーンエネルギー ETF(PBD)が74%上昇して、S&P500指数の7%を大幅に上回っています。
第1回のTV討論会を経てバイデン氏の優位が強まった9月末から一段高となって、「バイデントレード」として市場の注目を集めていることがわかります。さらに、実はクリーンエネルギーを物色する動きは年初からありました。
新型コロナウイルスのパンデミックが強烈だったために覚えている方は少ないかもしれませんが、年初のダボス会議の主要な議題は環境でした。また、大手の資産運用会社がESG投資への注力を発表して、さらに環境関連銘柄への注目が高まりました。
このようにクリーンエネルギーはもともと注目された投資テーマでしたが、関連銘柄は景気変動の影響を受けやすい事業が多く、パンデミック後の相場暴落では市場平均を上回る大幅な下落となりました。しかし、その後の戻しは順調で、大統領選挙でのバイデン氏優位を受けて一段高となっています。
万が一、バイデン氏が当選できず失望売りとなった場合でも、環境重視は世界的な流れですので、いずれ上昇が期待できるのではないかという点も安心材料です。
一方、これだけ株価があがってしまうともう先がないのではないかという懸念もあるでしょう。しかし、2008年に組成されたiシェアーズ Globalクリーンエナジー ETF(ICLN)の設定来のパフォーマンスは、これだけあがっても46%のマイナスです。 いかにクリーンエネルギー関連の相場が枯れていたかがうかがえる数字ではないでしょうか。短期的には押しも想定されますが、中長期で注目できる投資テーマと言えそうです。
図表2:クリーンエネルギーETFの株価
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
クリーンエネルギーの関連銘柄を前節で取り上げた2つのETFの組入れ上位銘柄から、米国上場の米国企業に絞って図表3の「リスト(1)」としてリストアップしました。
両ETFともグローバルファンドで、太陽光発電関連では中国企業、風力発電関連では欧州企業も組入れられていますが、今回はこれらを除きました。クリーンエネルギーの事業に特化した企業が集められているため、企業の規模は小さめです。
これとは別に、メリルリンチ社が公表している「バイデンロング指数」から、「リスト(1)」に含まれない銘柄を「リスト(2)」としてピックアップしました。
同指数は「バイデン大統領」が実現した場合に恩恵が期待される30銘柄をメリルリンチ社が選んだもので、クリーンエネルギー関連が中核分野となっています。こちらの銘柄はクリーンエネルギーに特化した企業だけでなく、事業の一部がクリーンエネルギーに関連する銘柄も含まれています。
このリストから注目銘柄を選んで、次節でご紹介いたします。個別銘柄の選択の視点は以下の通りです。
売上が伸びていて、独自の技術をもち参入障壁を築ける企業が注目できるでしょう。一方、売上が一定程度大きくなっているもので利益率が低い企業については、利益の伸びしろがあまり大きくない可能性があると考えて避けました。
また、太陽光パネルについては、中国企業のシェアが大きいことから価格の値下がりによる収益性の悪化懸念があるため避けました。一方、パネルの設置は順調に拡大しているため、パネルの「補完財」として一緒に需要が増える製品を選びました。
図表3:クリーンエネルギー関連銘柄
銘柄名(コード) |
事業内容 |
売上 |
純利益 |
時価総額 |
---|---|---|---|---|
リスト(1) − クリーンエネルギーETFの組入れ上位銘柄から | ||||
エンフェーズ エナジー(ENPH) |
太陽光発電向けマイクロインバーター・システム |
624 |
161 |
145 |
ソーラーエッジ テクノロジー(SEDG) |
太陽光発電向けインバーター・ソリューション |
1,426 |
147 |
155 |
ブルーム エナジー コーポレーション A(BE) |
定置型の燃料電池 |
785 |
-304 |
26 |
プラグ パワー(PLUG) |
車両向けおよび定置型の燃料電池 |
230 |
-85 |
66 |
サンパワー(SPWR) |
太陽光発電と電源ストレージ |
1,864 |
22 |
30 |
サンラン(RUN) |
住宅用太陽光発電システム |
859 |
26 |
122 |
ファースト ソーラー(FSLR) |
太陽光発電 |
3,063 |
-115 |
88 |
TPIコンポジッツ(TPIC) |
風力発電ブレードの製造 |
1,437 |
-16 |
12 |
オーマットテクノロジーズ(ORA) |
地熱・回収エネルギー発電 |
746 |
88 |
37 |
リニューアブル エナジー グループ(REGI) |
バイオディーゼルの生産 |
2,641 |
380 |
22 |
アイトロン(ITRI) |
エネルギーと水を測定・管理・分析するソリューション |
2,502 |
49 |
28 |
アメレスコ A(AMRC) |
エネルギー効率、インフラストラクチャーのアップグレード |
867 |
44 |
20 |
リスト(2) − メリルリンチの「バイデンロング指数」から | ||||
ネクステラ エナジー(NEE) |
フロリダの電力企業、再生可能エネルギー比率高い |
19,204 |
3,769 |
1,467 |
エクセル エナジー(XEL) |
西部・中西部で電力・ガス供給、風力比率が2割 |
11,529 |
1,372 |
377 |
PSEG(PEG) |
ニュージャージー州の電力・ガス会社、原子力発電比率が高い |
10,076 |
1,693 |
301 |
テスラ(TSLA) |
電気自動車 |
24,578 |
-862 |
4,015 |
アルベマール(ALB) |
リチウムを生産する化学企業 |
3,589 |
533 |
98 |
エナーシス(ENS) |
産業用電池 |
3,088 |
137 |
31 |
- ※注:売上、純利益は直近年度、時価総額は10/19(月)時点です。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
ブラックロックが提供するクリーンエネルギー関連の銘柄をグローバルに組入れたETFです。米国企業のほか、中国の太陽光発電関連、欧州の風力発電関連などの銘柄が組入れられています。純資産額は15億ドルで、同種のETFでは最大です。
クリーンエネルギーに特化した企業は規模が小さいものが多く、関連する個別銘柄に投資する場合のリスクは高めと考えられます。そのため分散投資ができているETFを利用するのがオーソドックスな投資方法と言えるでしょう。
2006年にカリフォルニアで創業した家庭用の太陽光発電向けに直流を交流に変換する「マイクロ・インバータ」を主力製品とする企業です。マイクロ・インバータは、小型化することで個々の太陽光パネルの裏に取り付けることができるインバータで、従来の複数の太陽光パネルを束ねて一つのインバータで変換する方式に比べて発電パフォーマンスを効率化できるものです。
2008年の製品初出荷以来23百万個のマイクロ・インバータを出荷、太陽光パネルの設置増に伴って順調に売上を拡大しています。300個以上の特許を保有しており、技術力のある企業です。
定置型の燃料電池システムを提供します。NASA(米航空宇宙局)の火星探索プログラムに端を発する新燃料電池技術をもとに2001年に創業、18年7月に新規上場した企業です。主力製品の「Bloomエナジーサーバー」は都市ガスやバイオガスを燃料として発電し、プラチナ等の貴金属や酸などの腐食性材料ではなく低コストのセラミック材料で発電を行えることが特徴です。
バックアップ用の電源として従来のディーゼル発電機の代わりに使われ、銀行店舗、病院、データセンターなどでの設置が多く、フォーチュン100のうち25社を顧客としています。日本での事業はソフトバンクとの折半による合弁企業で、同社ウェブサイトに詳しい製品情報が掲載されています。
フロリダ地盤の電力会社です。子会社のネクステラ・エネジー・リソーシズ(NEER)が米国33州やカナダで風力や太陽光発電の再生エネルギー発電を行います。同分野では世界最大級で売上全体の約3割を占めます。売上の約6割を占めるフロリダ・パワー&ライト(FPL)は通常の電力会社ですが、フロリダ州の約半分にあたる約500万世帯を顧客として、よいポジションを築いています。
クリーンエネルギー関連の銘柄は時価総額が小さいものが多く比較的リスクが高いと考えられますが、その中で同社は1,000億ドル超と大きく、低リスクと考えることができるかもしれません。
特殊化学品の企業です。航空宇宙、エネルギー、電子分野向けにリチウム、触媒、臭素、などの製品を製造販売しています。19年売上の38%を占めるリチウムは、リチウムイオン電池に必須の材料であることから成長が期待されています。
リチウムは現在二次電池として広く使われているリチウムイオン電池の材料として欠かせないものです。一方、その生産は塩湖など特殊な地理的条件の場所でしか採算が取れないため、参入障壁が高いと考えられます。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。