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社会的受容が広がるビットコイン、新規上場のコインベース、日米の暗号資産関連銘柄

2021/4/22
投資情報部 榮 聡・長谷川綾乃

暗号資産取引所のコインベースが600億ドル超という堂々たる時価総額で上場したことから、ビットコインに株式市場の注目が集まっています。ビットコインに対する社会受容の広がり、新規上場したコインベースの企業概要と注目点、日米の暗号資産関連銘柄をご紹介いたします。

図表1:関連銘柄リスト(図表5および 図表6の銘柄群より一部抜粋)

銘柄 株価(4/19) 52週高値 52週安値
コインベース グローバル A(COIN) 333.00ドル 349.20ドル 310.00ドル
フェイスブック A(FB) 302.24ドル 315.88ドル 168.34ドル
ペイパル ホールディングス(PYPL) 267.91ドル 309.14ドル 107.41ドル
JPモルガン チェース(JPM) 152.65ドル 161.69ドル 82.40ドル
インターネットイニシアティブ(3774) 2643円 2864円 1738円
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

1社会的受容が広がる暗号資産のビットコイン

昨年末からの大幅な価格上昇に加えて、専門取引所のコインベースが600億ドル超という堂々たる時価総額で上場したことから、暗号資産のビットコインに株式市場の注目が集まっています。

暗号資産に関しては、「暗号データ」に過ぎず価値の源泉がはっきりしないとして、金融業界、産業界の著名人が警鐘を鳴らしています。しかし、以下のような社会的受容の広がりを見ると、社会での信用は高まりつつあると考えられます。

(1)ビットコインによる支払いを受け入れる企業が増加している。米国企業では、スターバックス、テスラ、コカ・コーラなど、日本でもビックカメラが対応。

(2)ペイパルホールディングスなど、電子決済の企業が暗号資産での決済を受け入れはじめている。また、電子決済最大手のビザは暗号資産(ステーブルコイン)による決済に向け準備中。

(3)個人だけでなく、機関投資家も取引を始めている。これは、コインベースの2020年10-12月期取引高890億ドルのうち、個人が36%、法人(institutions)が64%を占めていることから推察されます。もちろん、機関投資家にとっては資産のうちのごく小さい部分を「分散投資」しているに過ぎないでしょう。しかし、職業として投資を行っている人達が踏み出した意味は大きいと考えられます。

また、国を挙げてキャッシュレス化を推し進める中国がデジタル人民元の導入に向けて邁進しており、2021年内にも世界初の中央銀行によるデジタル通貨が発行される見通しです。こうした中国の動きは他国にも波及する可能性があり、今後の動向が注目されます。

昨年末にアリババグループのアントフィナンシャルの上場に当局から待ったがかかって、市場に衝撃が走りました。これも今後デジタル人民元を普及させるための都合との見方もあり、要注目です。

さて、4/5(月)に暗号資産の時価総額は2兆ドル(トップのビットコインが1兆ドル、2位のイーサリアムが2,440億ドルなど)を突破したとのニュースが報じられましたが、暗号資産はどこまで大きくなるのでしょうか?

これを考える上で参考になりそうなのが、「世界の富」に占める比率です。「世界の富」はクレディスイス社の推定で400兆ドルとされますが、暗号資産の時価総額が2兆ドルとすると、このところ大幅に上昇したとは言え、依然として0.5%を占めるに過ぎません。

暗号資産が決済の手段として一般的になるとすれば、中長期的に「世界の富」に対して2〜3%が暗号資産で保有されるようになる可能性は十分ありそうです。2%なら現在の時価総額から4倍、3%なら6倍となります。

多数の暗号資産が発行されていますし、構想段階ながら有力と考えられるフェイスブックの「ディアム」も出てくるとすると、必ずしもビットコインのこれまでのような値上がりが続くわけではないでしょう。ただ、暗号資産全体としては、まだまだ伸びる余地があり、ビットコインにも中長期には上値があると考えられるのではないでしょうか。

なお、ビットコインの価格は4/18(日)に一時前日比15%安の51,707ドルへ急落する場面がありました。米財務省が暗号資産経由のマネーロンダリングを取り締まる恐れがあるとの懸念がきっかけになったとされます。また、コインベースの上場に向けて高まっていた市場センチメントがやや冷えつつある可能性もあります。

ビットコインの価格も株式など他の金融資産同様、各国中央銀行による金融緩和と、それによって生じた過剰流動性によって価格が押し上げられている可能性があります。世界的な経済回復とともに金利が上昇し、量的緩和が縮小する局面では価格が不安定となる可能性も考えられます。この点には注意が必要でしょう。

【暗号資産のビットコインとは】

インターネット上でやりとりできるデジタル通貨で、国家が価値を保証する法定通貨に対し、中央銀行など単一の管理者がいないのが特徴です。「暗号データ」のためインターネット上の取引によく馴染み、決済や送金のコストが安いなどのメリットがあります。日本円や米ドルなどの法定通貨と専門の取引所で相互に交換することも可能です。

暗号資産の取引はブロックチェーンと呼ばれる公開分散型台帳に電子的に記録されます。暗号資産の信用が国家などの裏付けを持たないにもかかわらず維持されているのは、暗号理論に裏付けされた取引の安全性確保、偽造防止の仕組みなどによります。

ビットコインは2009年1月から使用が開始され、10分ごとに6.25BTCが発行され、2,100万BTCという発行の上限が規定されています。発行速度は4年ごとに半減するルールです。 暗号資産で最も流通しているのがビットコインで、ほかにもイーサリアムなど数十の暗号資産が存在します。

図表2:ビットコインの価格推移(週足)

  • 注:最後のデータは4/19(月)。
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

2暗号資産取引所を運営するコインベースが上場

暗号資産取引所を運営するコインベースが4/14(水)にナスダック市場に直接上場(株式の公募を伴わない上場)しました。暗号資産に事業を特化している企業としては世界で初めての上場と言えます。暗号資産の社会的受容が一段階上がったことを象徴するイベントとして市場の注目を集めていますのでご紹介いたします。

【会社概要】
2012年に創業したビットコインなど暗号資産の取引所を運営する企業です。2020年末時点で、個人43百万人、法人(institutions)7,000社、エコシステムパートナー(開発業者、事業者、暗号資産発行事業者など)11.5万社が参加し、90以上の暗号資産を取り扱うプラットフォームとなっています。同社が保管する暗号資産の時価総額に対するシェアは11.3%で業界最大手です。

2020年12月期の取引高は380億ドル(前年比81%増)で、暗号資産別にはビットコインが41%、イーサリアムが15%、その他が44%を占めます。売上の86%は取引収入で、その他は保管手数料などからなり、取引収入に占める暗号資産別の構成比は、ビットコイン44%、イーサリアム12%、その他44%です(2020年12月期)。

【注目点】
(1)株式市場の「初物」であり、業界最大手。
証券取引所の上場企業は多数ありますが、暗号資産取引所は初めてです。なお、暗号資産の「関連銘柄」は多数ありますが、暗号資産の事業に特化した企業としても上場は初めてです。

(2)直接上場を選ぶほど、既に黒字化していて収益性が高い。
直接上場を選ぶ企業は、拡大投資をキャッシュフローで賄うことのできる資金調達の必要がない企業が多いと言えますが、同社はその典型です。

(3)暗号資産の社会的受容が広がっている。
これについては、第1節に記載の通りです。

【業績動向】
暗号資産の時価総額は、2012年末の5億ドルから2020年末には7,820億ドルに増加、4/5(月)には2兆ドルを突破したとの報道があった通り急増しています。

これに伴って同社取引所での取引高も急拡大しています。業績は図表4の通り、2020年12月期には黒字化を達成し、2021年1-3月期の売上はビットコインの価格急騰により2020年12月期年間の売上を超え、売上純利益率は約4割に達しています。

4/6(火)に公表された2021年1-3月期の営業概況によると、売上は18億ドル(前年同期比9.4倍)、純利益7.3〜8.0億ドル(前年同期比23〜25倍)と急拡大しており、検証済みユーザーは56百万人、月間取引ユーザーが6.1百万人に増加しています。

図表3:コインベースでの暗号資産取引高

  • 注:21年1Q(1-3月期)は、4/6(火)に会社が公表した営業概況によります。
  • ※会社資料をもとにSBI証券が作成

図表4:コインベースの 業績推移

単位:百万ドル

 

2019年12月期

2020年12月期

2021年1-3月期
(営業概況)

売上高

482

1,141

約1,800

営業利益

-46

409

-

純利益

-30

322

730〜800

  • 注:21年1-3月期は、4/6(火)に会社が公表した営業概況によります。
  • ※会社資料からSBI証券が作成

3暗号資産の日米関連銘柄

暗号資産取引所のコインベースが新規上場したことをきっかけに、暗号資産に関連する事業を展開する銘柄群も市場の注目を集めることが想定されます。そこで、米国および日本の関連銘柄を以下にご紹介いたします。

図表5:米国の関連銘柄

暗号資産の発行関連

フェイスブック A(FB)

ステーブルコインの「ディエム(Diem)」(「リブラ」から改称)の発行を計画する。

イーベイ(EBAY)

ディエム協会メンバー。

リフト A(LYFT)

ディエム協会メンバー。

ショッピファイ A(SHOP)

ディエム協会メンバー。

スポティファイ テクノロジー SA(SPOT)

ディエム協会メンバー。

暗号資産を決済通貨として受け入れ

ペイパル ホールディングス(PYPL)

消費者が何百万というオンライン事業者のサイトで暗号資産で決済できる「Checkout with Crypto」を提供。

スクエア(SQ)

モバイル決済アプリ「Cash App」でビットコインが購入できる。

ビザ A(V)

ステーブルコインの「USDコイン(USDC)」による決済を認める方向で準備中。

マスターカード A(MA)

2021年後半、加盟店が顧客の暗号資産での決済を行える機能を提供する。

オーバーストック ドットコム(OSTK)

オンライン通販でビットコインを受け入れ。子会社のtZEROがブロックチェーンを活用した資産の取引所を提供。

ブロックチェーン技術の応用

JPモルガン チェース(JPM)

銀行間の送金にブロックチェーンを活用した「Confirm」を実験中。

IBM(IBM)

企業向けにブロックチェーンを活用したシステムを提供。

セールスフォース ドットコム(CRM)

企業向けにブロックチェーンを活用したシステムを提供。

イーストマン コダック(KODK)

暗号資産の発行(KodakCoin)とブロックチェーンを利用したプラットフォーム提供。

暗号資産の取引関係

CME グループ A(CME)

ビットコインの先物市場開設を計画。

ノーザン トラスト(NTRS)

機関投資家向けの暗号資産保管プラットフォーム「Zodia」を提供。

ゴールドマン サックス(GS)

富裕層に暗号資産投資サービスを提供する計画。

暗号資産のマイニング関連

エヌビディア(NVDA)

暗号資産のマイニングにGPU(グラフィックプロセッシングユニット)が使われる。

アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)

暗号資産のマイニングにGPU(グラフィックプロセッシングユニット)が使われる。

ライオット ブロックチェーン(RIOT)

暗号資産のマイニング企業。

マラソン デジタル ホールディングス(MARA)

暗号資産のマイニング企業Global Bit Venturesを買収。

  • ※各種報道よりSBI証券が作成

図表6:日本の関連銘柄

銘柄名(コード) 事業概要 暗号資産に関連する事業

セレス(3696)

国内最大級のスマホ向けポイントサイト「モッピー」を運営。

3月より子会社のマーキュリーが暗号資産交換業として「CoinTrade」を開業。昨年10月には、持分法適用関連会社であるビットバンクが、国内最大規模の暗号資産取引所「bitbank.cc」に加えて、暗号資産販売所サービスの提供を開始。

インターネットイニシアティブ(3774)

インターネットサービスプロバイダの先駆け的企業。法人向けが主要事業。

4月より傘下のディーカレットが、暗号資産現物取引の取引所サービスの提供を開始。なお、3月にはKDDIなど10社から総額67億円の資金調達を実施。デジタル通貨の開発やブロックチェーンを利用したプラットフォームの開発などを進める方針。

マネーパートナーズグループ(8732)

FX大手。

1月に子会社のコイネージが暗号資産交換業からの撤退を発表。
一方、新事業として連結子会社のマネーパートナーズにて暗号資産関連店頭デリバティブ取引にかかる事業の開始を発表。同社は今後、暗号資産関連事業の拡大を示唆。

リミックスポイント(3825)

ブロックチェーンを活用したサービス提供の他、エネルギー関連事業や自動車関連事業など多岐に渡るサービスを展開。

子会社に暗号資産取引所の運営などを行うビットポイントジャパンを持つ。3月より日本初の取扱い暗号資産「TRX」の新規取扱いを開始。

GMOフィナンシャルホールディングス(7177)

FX最大手。株式や暗号資産などのインターネット取引を国内外で提供。

連結子会社に暗号資産交換業者の「GMOコイン」を持つ。20年12月期の決算では、暗号資産価格の上昇により売買代金がおよそ3倍に増加。

  • ※各種報道よりSBI証券が作成
  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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