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≪共同富裕≫ 〜中国経済・株式市場への影響、恩恵を受ける業種・銘柄は?〜

2021/9/15
投資情報部 李 燕

中国の「共同富裕」が注目を集めています。習近平氏が様々な場面で「共同富裕」の達成を強調したことがきっかけです。中国経済や株式市場にも影響を及ぼし得ることから、「共同富裕」について議論がさかんになっています。そこで今回は、中国当局の意図を踏まえながら「共同富裕」が中国経済や株式市場に与える影響を分析したうえで、「共同富裕」の恩恵が期待できる業種や銘柄についてご紹介します。

図表1 主な言及銘柄

銘柄 株価(9/14) 52週高値 52週安値
ガンフォンリチウム(01772) 153.10香港ドル 185.00香港ドル 36.20香港ドル
比亜迪 (Byd)(01211) 263.00香港ドル 295.00香港ドル 85.25香港ドル
リ-オート ADR(LI) 29.81米ドル 47.70米ドル 15.02米ドル
ニオ ADR(NIO) 37.89米ドル 66.99米ドル 16.75米ドル
モウギュウ乳業(02319) 47.35香港ドル 53.85香港ドル 34.60香港ドル
安踏体育用品(02020) 159.00香港ドル 191.90香港ドル 75.10香港ドル
李寧 (02331) 98.95香港ドル 108.20香港ドル 32.75香港ドル
小米(01810) 23.25香港ドル 35.90香港ドル 19.40香港ドル
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

1「共同富裕」をどう理解すればいいのか

足元で中国の「共同富裕」が注目を集めています。きっかけは習近平氏が「共同富裕」を目指すと明言し、それに対する言及が急激に増えたからです。「共同富裕」はどのような政策意図を反映しているのか、政治・経済面だけでなく金融面でも分析がさかんに行われています。

全般的に、「共同富裕」は格差是正に向けた動きとして捉えられています。一方、中国当局が市場経済への関与を強めようとしている、と懸念する声も上がっています。そのような海外の反応を受け、中国政府系テレビ局のCCTV・海外ネットは9月1日に、「共同富裕は市場経済を弱体化させようとするものではない」と題した論説を発表しました。

論説では、一部の海外メディアは「共同富裕」を誤解していると指摘しました。1978年から2020年まで、中国のGDPが3,678億元から100兆元を突破し、1人当たりGDPが1万ドル超となっていく過程で、市場経済は重要な役割を果たしたと説明しました。同時に「共同富裕」の達成において分配の元となるパイを拡大するためには、市場経済の役割と優位性を生かさなければならないと論じました。

他方、市場経済の所得分配機能がうまく働かない時は、政府がその役割を果たすべきだと指摘しました。具体的には独占禁止や反腐敗キャンペーンなどを通じて公平な競争環境と機会を作るとともに、2次分配(徴税など)や3次分配(寄付など)を通じて貧富の格差を是正しなければならないと論じました。

上記は海外の反応を受けた中国政府系メディアの説明ですが、中国国内向けの報道も確認してみたいと思います。「共同富裕」をどう理解すればいいのか、中国国営新華通信は下記の4つの側面で説明しました。

図表2:「共同富裕」の4つの側面

項目 詳細
範囲 一部の人あるいは一部の地域だけが豊かになるのではなく、全国民が豊かになり、全国民が改革発展の成果を享受できるようにする。
意味 単に物質的な豊かさを指すのではなく、物質と精神の両方の豊かさを含めており、人々の総合的な発展の実現を指す。
実現への経路 効率性を犠牲にする「平均主義」ではなく、勤勉・労働・イノベーションを奨励し、すべての人が発展のために公平な機会が得られるようにしなければならない。
達成の時間軸 一夜で達成するものではなく、徐々に達成することを目指す。地に足をつけ、時間をかけて努力し、現代化の実現の過程でこの問題を解決しなければならない。
  • ※中国国営新華通信よりSBI証券が作成

株式市場の観点からすると、重要なのは「実現への経路」だと思います。株式市場で一番懸念されているのは、「共同富裕」=「平均主義」であり、結果的に中国経済や企業のイノベーション力が削がれる可能性があることです。それに対し中国当局は否定し、「共同富裕」を実現していく過程で効率性を犠牲にすることはなく、イノベーションも奨励すると説明しました。

振り返ってみると、中国はケ小平氏が提唱した「先富論」の時代から30-40年間発展し、既に「先富」は実現しています。これからは「先富」を優先してきた過程のなかで生じた歪み、たとえば格差問題の解決が政治の課題になっています。実際、「先富」の先は「共同富裕」であり、「先富」はいわば「共同富裕」という最終目標を達成するための一つの過程です。

ここ1年で「共同富裕」がより重視されるようになった背景には、米中対立が挙げられます。米国が中国の台頭を抑え込もうとしているなか、中国は「米国超え」を目指して政策運営を実施しています。ただし、中国当局が目指す米国超えは単に経済規模にとどまらず、最終的には米国より強く豊かで優れた国になることです。

中国当局にしてみれば、貧富の格差が激しい米国は決して理想的な国とは言えず、中国がこれまでと同じように「先富」を突き進んだ場合、「米国化」しかねません。米国資本主義の否定、ネット大手への規制強化、「共同富裕」の強調は、いずれも米中対立のなかで起きたことです。これらを合わせて考えると、中国は、情報技術面だけでなく先進製造業でも強い国、「富める者が富める」国よりも「共同富裕」の国を目指そうとしています。

その目標達成に向けて、習近平氏は時には強硬ともいえる施策を打ち出しています。裏を返せば、習近平氏の政治基盤が固まってきたことを示すと思います。振り返ってみると、習近平氏の就任当初からの数年間は反腐敗キャンペーンが目立ちましたが、ここ数年は中長期的な国作りに向けた施策が増えています。

習近平氏が「共同富裕」について言及することが急増してから、地方政府から上場企業まで「共同富裕」に足並みをそろえるよう努めると表明しています。政府主導ではあるものの、民間や企業の連携・協働で中国は「製造強国」、「共同富裕」に向けて進むこととなるでしょう。

2「共同富裕」が中国経済・株式市場に与える影響

【中長期的に経済・株式市場にとってポジティブ、「行き過ぎ」の場合はネガティブ】

「共同富裕」は、いわば貧困層の底上げと中間層のさらなる拡大が目標です。実現されれば中国経済や株式市場にとってポジティブと言えます。一方、実現の過程で市場の原理を否定し、結果的に効率性やイノベーションが削がれるようになってしまうならネガティブです。ただ(1)で確認したように、中国当局は市場経済を全否定しているのではなく、効率性やイノベーションも奨励する意向を示しました。

また、海外の反応に対し、中国政府系メディアはいち早く「誤解釈明」に動いたことも、注目に値すると思います。当局の動きは7月下旬の「教訓」が生かされていることを示しています。7月下旬、中国当局が立て続けの規制強化を実施した際、中国株はリスク回避の売りで暴落しました。中国当局はすぐ投資家懸念の払しょくに動き、今後は市場への影響を考慮すると表明しました。その後、規制強化がさらに新しい分野へ広がっていないことを考えると、強化対象は大方出揃った可能性があります。「共同富裕」の実施も規制強化と同様に、「行き過ぎ」にならないよう市場への影響を確認しながら進めていくことになるでしょう。

【企業にとってコスト増になるが、規制リスクの軽減につながる可能性も】

直近の決算発表シーズンで、上場企業が決算報告書で「共同富裕」について言及するケースが増えています。ブルームバーグの集計によると、決算発表のピーク時(8月31日までの2週間)に少なくとも73社が株主向けの資料で「共同富裕」に触れています。

たとえば、保険大手の中国平安保険(02318)やフードデリバリー最大手の美団(03690)、4大銀行の一角である中国銀行(03988)などです。また、アリババ(09988)やテンセント(00700)のネット大手は相次いで「共同富裕」向けに資金を拠出すると表明しました。

図表3:「共同富裕」に関する大手企業の動き

日付 企業 銘柄コード 「共同富裕」関連の動き
8月18日 テンセント 00700 「共同富裕プロジェクト」に500億元を拠出すると発表。主に低所得者向けの支援や農村地域の公共サービス改善に投じる。
8月24日 ピン多多 PDD 100億元を農村開発プロジェクトに寄付すると表明。
8月30日 吉利汽車 00175 1万人を超える従業員に1.67億の自社株を付与すると発表。同社が7月に発表した「共同富裕」要綱に沿った措置である。
9月2日 アリババ BABA、09988 「共同富裕」の実現に向けて、2025年までに1,000億元を拠出すると発表。拠出金の5分の1は、アリババが本社を置く浙江省の発展を支える。中国当局は今年5月に浙江省を「共同富裕」のモデル地区に指定した。
  • ※各種報道をもとにSBI証券が作成

「共同富裕」に向けた資金拠出は、企業にとって必然的にコスト増につながり、短期的には収益を圧迫する可能性があります。一方、中国IT大手の拠出金は、いわば米国IT大手のロビー活動費に当たるものとしてみることができます。つまり、企業が積極的に「共同富裕」へ協力することで、規制リスクの軽減につながる可能性があります。アリババやテンセントなどネット大手が巨額な資金拠出に動いたのは、そのような思惑もあるとみられます。

2「共同富裕」の恩恵が期待できる業種・銘柄は?

中国当局は「共同富裕」を実現するために、貧富の格差をもたらしている不動産(※)やオンライン教育分野に対しては、抑制措置を維持すると思います。一方、新しい成長エンジンとして、世界のメガトレンドでもある電気自動車(EV)など新エネルギー車(NEV)やクリーンエネルギー分野に対しては、支援を続けることが予想されます。米中対立のなか、中国はこれらの分野で世界をリードすることを目指しています。

(※)中国当局による不動産市場への締め付けを背景に、不動産デベロッパー大手の中国恒大(03333)がデフォルトリスクに直面しています。中国恒大は不動産市場が鈍化しているにもかかわらず、過去数年間で高利での資金調達を続けてきたうえ、電気自動車(EV)など新しい産業へ次々と参入してきました。しかし新しい産業は収益化の目途が立たず、その結果、同社は巨額な債務を負うことになりました。今年に入ってから中国当局が不動産デベロッパーに対し、一段と厳しい措置を実施したこともあり、同社は債務返済が厳しくなっています。負債額が大きいことからデフォルトになれば市場全体に悪影響を及ぼしかねません。中国恒大の問題を受け、中国当局が不動産抑制措置を緩める可能性は低いかもしれないが、システマティックリスクの回避のために何らかの動きを取る可能性は高いと思います。9月14日のブルームバーグ報道によると、中国政府は中国恒大をめぐり独自のアドバイザーを起用しました。同社再編の前触れの可能性がある、とブルームバーグは指摘しました。

また、ネット大手への規制強化も、「共同富裕」の一環ともいえます。中国当局は9月10日、出前や配車サービスを提供する大手IT企業10社に対し、配達員やドライバーの待遇改善を求めました。それと同時に、「製造強国」を目指す姿勢を改めて表明しました。中国当局は9月13日に、第14次5カ年計画(2021-2025年)の間に、「製造強国」入りを達成することを再確認しました。したがって先進製造業は引き続き、当局が資金・人材など資源の集約を促す分野となるでしょう。

他方、「共同富裕」は規制強化と同様に、短期的には経済成長を下押しする可能性があります。経済の底割れを回避するためにも、中国当局は消費拡大への取り組みを強化するとみられます。消費関連分野は、「共同富裕」、つまり中間層のさらなる拡大による恩恵も期待できます。

なお、「共同富裕」とネット大手に対する規制強化は、中国当局がそれぞれのピラミッド構造を平たくしようとする意図で共通しています。つまり、いずれの施策もピラミッドの上部にある超富裕層や巨大企業よりも、中間層の拡大や中堅企業の強化を狙っています。したがって株式市場では中型株が恩恵を受けることになると思います。

総合的にみると、「共同富裕」の恩恵が期待できるのはNEVやクリーンエネルギー、先進製造業、消費関連、および中小型株となるでしょう。関連銘柄のリストと株価水準・業績見通しは下記の通りです。なお、一部銘柄は業績見通しに比べて株価水準がやや割高になっており、短期的には警戒が必要かもしれません。他方、中長期的な成長期待からすると、調整時は押し目買いのチャンスとなるでしょう。なお、先進製造業や中型株は中国本土A株に上場している企業が圧倒的に多いのが現状です。香港や米国上場の銘柄以外では、A株に連動するETFへの投資を活用することが有効といえましょう。

図表4:「共同富裕」と「製造強国」関連銘柄の株価水準と業績見通し(注)

関連
分野
銘柄名
銘柄コード
予想
PER
過去5年
平均PER
PBR 今期予想
増収率
今期予想
増益率
来期予想
増収率
来期予想
増益率
NEV向け素材メーカー ガンフォンリチウム(01772) 62 92 10 79% 161% 44% 42%
洛陽モリブデン(03993) 21 28 3 34% 119% 1% 5%
中国アルミ(02600) 14 82 2 16% 1375% 0% 15%
コウセイコパー(00358) 8 21 1 37% 114% 1% 5%
ツージンマイニン(02899) 18 21 4 19% 118% 11% 41%
NEVメーカー 比亜迪 (Byd)(01211) 136 59 8 41% 9% 28% 59%
リ-オート ADR(LI) - - 5 149% 赤字縮小 64% 黒字転換
シャオペン ADR(XPEV) - - 11 212% 赤字縮小 74% 赤字縮小
ニオ ADR(NIO) - - 13 124% 赤字縮小 67% 赤字縮小
クリーンエネルギー関連 龍源電力(00916) 17 10 2 17% 35% 9% 13%
信義光能(00968) 29 17 5 32% 9% 27% 10%
金風科技(02208) 15 13 2 -12% 36% 5% 6%
先進製造業関連 舜宇光学(02382) 35 30 11 12% 20% 21% 24%
ZTE (00763) 15 20 2 15% 135% 13% 14%
テクトロニック(00669) 36 23 9 34% 37% 16% 21%
消費関連 モウギュウ乳業(02319) 29 33 4 17% 50% 14% 21%
安踏体育用品(02020) 44 31 13 37% 64% 24% 31%
李寧(02331) 56 37 20 45% 113% 23% 27%
波司登国際(03998) 27 15 5 21% 26% 18% 25%
小米(01810) 23 - 3 38% 54% 23% 21%
中小型株ETF ヴァンエック ベクトル 中国AMC中小企業ETF(CNXT) ETF概要:中国中小企業・創業板100指数の価格・利回り実績(報酬および経費控除前)との連動を可能な限り追求する。
  • 注:業績予想はBloomgergがまとめたコンセンサスで、増益率はEPSベース(調整後)です。
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  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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